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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 229

まあ、一瞬でこれだけのストーリーを脳内で作り上げ、更にそれを淀みなく話せる、その面の皮の厚さだけは感心するが…。
ところがアル=アッディーンは頭を抱え込んでしまった。
「うぅ〜ぬ!解らぬ!余にはサッパリ解らぬぞぉ〜!そもそもお前達に嘘を言って誘い出したのは一体誰なのじゃ〜!?」
「そ…それは……この者達でございます!!」
なんとデデンはアブラハムとナーセルを指差して言ったのである。
「はあぁぁっ!!?」
「冗談じゃありませんよ!!俺達ただの通りすがりですよ!!」
「黙れ黙れ黙れえぇぇい!!!私はハッキリと覚えているぞ!!!私を中庭へ誘い出したのは太ってる方だ!!!」
「そうだわ!!!私を誘い出したのは太っていない方よ!!!いま思い出したわ!!!」
「そして情事に及んでしまったのは、お前達が我々の食事に媚薬を入れたからだ!!!」
まったく無茶苦茶な作り話だ。
言いがかりも良い所である。
アブラハムとナーセルだって言われっぱなしではない。
「ふざけないでください!!僕らがそんな事をして何の得があるんですか!!?」
「そうです!!言いがかりも大概にしてください!!」
デデンは一瞬だけ考え、そして言った。
「そ…それは…えぇと……解ったぞ!!!お前達は私達が姦通していた事をネタに揺すって金をせびる魂胆だったのだろう!!!」
「そうよ!!!そうに違いないわ!!!殿下!!!こいつらは人間の皮を被った悪魔でございます!!!私達は悪魔に惑わされてしまったのです!!!決して殿下を裏切りたかった訳ではございません!!!」
デデンとザフラはアル=アッディーンに泣きついて声を揃えて言った。
「「私達も被害者なのでございますぅ〜殿下ぁ〜!!!!」」
しかしてアル=アッディーンは言った。
「デデンとザフラの言う通りじゃあーっ!!!」
「「えええぇぇぇぇぇ〜〜〜っ!!!?」」
見かねたドルフが口を挟む。
「で…殿下、お気持ちは解りますが、どうか冷静におなりくださいませ…どう見てもデデン殿とザフラ殿が嘘……」
「もう良いのじゃイシュマエルよ!!余の最も信頼するデデンとザフラが余を裏切るはずが無い!!絶対に裏切るはず無いのじゃ!!」
(いかん…現実から目を背けている…彼自身、心の奥底では気付いているのだ…自分は裏切られたという事に…ただその事実を受け入れられないのだ…)
アル=アッディーンはアブラハムとナーセルを指差してドルフに言った。
「イシュマエルよ!!!王族として命ずる!!!この不届き者らを捕らえよ!!!」
「そ…そんな馬鹿な…っ!!?」
「どうしてそうなるんですかぁっ!!?」
アブラハムとナーセルは悲痛な叫び声を上げた。
ドルフはアル=アッディーンに抗議する。
「で…殿下!あなたは冷静な判断力を失っておられます!どうかお気を静めて…」
「口答えをするでなぁーいっ!!!王族の命令に逆らう気かぁっ!!?よもやイシュマエル家は王家に弓を引くつもりかぁっ!!?」
「!!……め、滅相もございません」
“家”という言葉を持ち出されてはドルフも引かざるを得ず、やむなく彼は兵士達を呼んで二人の身柄を拘束させた。
その間、アル=アッディーン、デデン、ザフラの三人は共に抱き合って涙を流しながら語り合っていた。
「殿下…私達は悪魔の奸計に踊らされ、あなた様を裏切ってしまいました…」
「罪深き私達に、どうか重い罰をお与えくださいませ…」
「良いのじゃ…良いのじゃ…悪の元凶は消えたのじゃ…お前達は悪くないぞ…これからも変わらず余に仕えてくれるな?」
「おぉ!!殿下ぁ〜!!」
「何と慈悲深きお言葉ぁ〜!!」
おいおい泣き出す三人。
その姿は距離を置いて見ると滑稽で、あまつさえ憐れみすら感じられた。
「何あれ!!?何て茶番だよ!!?」
「チクショウ!!俺達を悪者に仕立て上げてテメェらの中だけでハッピーエンドかよ!!?ふざけんなーっ!!」
アブラハムとナーセルは叫びながら連行されていった…。


「アブラハムとナーセルが捕まったですって!!?」
「うむ…俺もその場にいたが、殿下はデデンとザフラ以外の話には耳を貸そうともしなかった…けっきょく殿下に従って二人を逮捕するしか無かった…済まん」
翌朝、ドルフは小隊長と他の衛士達に昨夜の出来事を伝えた。
「閣下が謝る事はありません。それで二人は今は…?」
「城の地下牢だ。殿下は大層お怒りで、しつこく二人を処刑せよと言って来ている…恐らく最も信頼していた者達に裏切られた辛い気持ちを、二人を殺す事で晴らそうとしているのだろう、無意識の内にな…」
「そんな事、絶対にさせてなるものか…!!」
何とかアブラハムとナーセルの潔白を小隊長は証明させようとするが、ドルフは止めて諌める。
「落ち着け!あの馬鹿殿下に何を言っても無駄だ!お前も牢屋にぶちこまれるだけだぜ!」
「では、部下が殺されるのを我々は黙って指をくわえてみてろと言うんですか!ドルフ太守殿!」
「うんな事は言ってねえ。デデンの糞野郎から殿下の信頼を奪えば良いんだよ。お前ら耳を貸しな!」

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