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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 228


その後、アル=アッディーン、デデン、そして衛士達はドルフの居城であるナハルシャット城へ向かった。

その晩、城では盛大な歓迎の宴が催された。
衛士達は宴への参加は許されないが、夕食はおこぼれに預かれて豪華な食事が出た。
「う〜ん…美味い!」
アブラハムも久しぶりに美食にありつけてご満悦である。
小隊長は言った。
「みんな、食事を済ませたら城下街にくり出して温泉宿でひとっ風呂浴びにいくか」
「おぉ〜」
「良いですねぇ」
衛士の一人が言った。
「しかし仲間達は今も王都で必死に頑張ってるだろうに、俺達だけこんな良い思いして何だか悪いなぁ〜」
「なぁ〜に、戻ったら倍頑張れば良いさ」
食卓は笑いに包まれた。
何ヶ月ぶりだろうか…こんなに人間らしいひとときは…。

その夜…
「うぅ〜ん…」
アブラハムは目覚めた。
「どうしよう…トイレに行きたい…」
彼は暗闇が苦手だった。
「ナーセル…おい、ナーセル…」
「……あんだよぉ?」
やむなく彼は隣のベッドで寝ていたナーセルを起こして付いて来てもらう事にした。

「うぅぅ…夜のお城って怖いなぁ〜…」
「ハァ…ほんっとビビリだよなぁ、お前…便所くらい一人で行けるようになれよ…」
二人はそんな事を言いながら、中庭に面した回廊を歩いていた。
その時である。
「…あ…あぁん…あなたの○○○、奥まで来てるわぁ…」
「あぁ…気持ち良い…」
中庭の木陰から何やら声が聞こえた。
「…なぁ、アブラハム…今の声って…」
「ああ、男女の声だ…」
「「……」」
二人は顔を見合わせてニヤリとした。
どうやら人目を忍んで中庭でサカっているカップルがいるらしい。
二人はそっと声の方に忍び寄った。
だが…
「「…っ!!?」」
二人の目に飛び込んで来たのは信じられない光景だった。
「はぁ…はぁ…奥様ぁ…」
「あぁ…デデン…良いわぁ…あのバカ殿下なんかよりずっと…」
何と愛し合っていたのはアル=アッディーンの愛人の女とデデンだったのである。
(おい、こりゃ一体どういう事だ?)
(解らん。初めは形式上だけの夫婦だったが、一緒に暮らす内に愛が芽生えたとか…?)
その時である。
「そ…そこに居るのは誰!?」
女が二人に気付いて叫んだ。
「バレちまったら仕方ないな…」
「失礼、盗み見るつもりは無かったんですがね…」
アブラハムとナーセルは二人の前に姿を現す。
「お…おお…お前ら、ま…まさかこの事を殿下に告げ口する気じゃないだろうなぁ!?」
顔中から嫌な汗を流しながら震え声で尋ねるデデン。
面白い事になった。
言うつもりは無かったが、二人はちょっと意地悪してやりたくなった。
「そうですねぇ〜、どうするナーセル?」
「う〜ん…黙ってたらバレた時に俺達も殿下に処罰されてしまうからなぁ…」
「た…頼む!この通りだ!お願いだから見逃してくれぇ!金か!?金が欲しいのか!?いくらだ!?望みの額を言え!」
「お願い!殿下にバレたら私達二人とも首が飛んじゃうわ!」
涙目で土下座して訴える二人。
アブラハムとナーセルは小声で話し合う。
(ちょっと可哀想になって来たなぁ…ここらで許してやるか)
(仕方ない、そうするか…)
ところが、そこへ新たな人物が登場する。
「お前達……」
「イ…イシュマエル閣下!!?」
回廊の柱の影から姿を現したのはドルフだった。
「か…閣下!どうかこの事は殿下には秘密にしてください!」
「お願いいたします!どうかお慈悲を!閣下ぁ〜!」
今度は泣いてドルフの足元にひざまずく二人に、ドルフは心苦しそうに言った。
「…いや、俺も出来れば黙っていてやりたかったんだがなぁ…」
そう言って柱の影を見た。
その柱の影から、その人は姿を現したのである。
「…ザフラ…デデン…お前達…」
「「ア…アル=アッディーン殿下ぁ!!?」」
よりによって一番見られたくない張本人だ。
(うわぁ…修羅場…)
(あの二人、可哀想に…)
アブラハムとナーセルは他人事である。
アル=アッディーンは未だ目の前の現実を受け入れる事が出来ぬといった様子で、呆けたようなポカーンとした顔をしている。
「お…終わった…俺の人生…何もかも…」
デデンはブツブツつぶやきながらガックリとその場にくずおれた。
一方、ザフラと呼ばれた愛人の女はまだ諦めていなかった。
「殿下あぁぁ〜〜っ!!!!」
彼女はわざとらしい程の泣き声を上げながらアル=アッディーンにすがりついて訴えた。
「これは陰謀なのですぅ!!私は騙されたのですぅ〜!!」
「だ…騙された!?そ…それは一体どういう事じゃ…!?」
「私は誘い出されたのです!!殿下が中庭で待っているから…と!!しかし中庭に来てみると居たのはデデン殿でございました!!そしてデデン殿は私を無理矢理…あぁ!!!これは全て仕組まれた罠なのでございますぅ〜!!」
デデンは驚いた。
このアマ俺を悪者にして自分だけ助かる気か!?
そうはいくか!
彼は言った。
「い…いいえ!!殿下!!誤解でございます!!私も騙されたのでございます!!私は私の妻が急用でナハルシャットに来て、今お城の中庭で待っていると言われて来たのでございます!!そうしたらザフラ様がおられて…誘って来たのはザフラ様の方からでございます!!」
「「「……」」」
アブラハムとナーセルとドルフは呆れて物も言えなかった。
この状況でそんなバカでも解るような嘘を吐くなんて…こいつらは正気か。
アル=アッディーンの心象を更に悪くするだけだ。

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