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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 221

「その棚をそっちへ移せ。机はこっちだ」
ジェムは召使い達に命じて部屋の模様替えをしていた。
「あのぉ…ジェム閣下、お呼びでしょうか…?」
「お…来たか、クルアーン・セイル。ちょっと待ってろ。いま部屋の家具を配置換え中だ」
「はあ…」
セイルはなぜ自分が呼ばれたのか解らぬまま待たされ続けた。

やがて配置換えが終わり、ジェムは部屋を見渡して言った。
「…気に入らん!!何というセンスの無さだ!!」
「も…申し訳ございません、ジェム様」
急にキレだしたジェムに召使い達はひざまずいて謝罪する。
しかしジェムはますますヒートアップし、唾を飛ばして怒鳴り散らす。
「僕は室内をより美しく快適にするため、計算し尽くされた完璧な指示を与えたのに、この結果は一体どういう事だ!!お前達が無能なせいではないか!!」
「ははぁ〜」
「ジェム様の仰る通りでございます」
「この無能共!!ウスノロの豚共!!」
ジェムは怒鳴りながら召使い達を足蹴にし始める。
「い…痛!?痛い!ジェム様!申し訳ございません!ど…どうかお許しを…!」
「いいや許さんぞ!!貴様ら全員この場で首をハネてやる!!」
ジェムは剣を抜いた。
「「「ひいぃぃ〜っ!!?」」」
震え上がる召使い達。
見かねたセイルは止めに入った。
「か…閣下!どうか彼らに慈悲をお与えください!僕からもお願いします!」
「どけセイル!!このようなゴミ共に情けなど無用だ!!」
剣を突き付けられたセイルは震えながら応える。
「い…いいえ!どきません!もし彼らを斬るというのなら…まず僕を斬ってください!」
「小癪な…ならば一緒に死ねぇ!!!」
ジェムの一閃!
「…っ!!!!」
セイルは覚悟を決めて目を閉じた…。


「……?」
少しして、何も来ない事を不思議に思ったセイルは恐る恐る目を開ける…。
あと数センチという目の前に剣先があった。
「うわあぁっ!!?」
セイルは驚いて飛び退き、召使い達にぶつかった。
「わわわ…っ!!?」
「ク…クルアーン殿!?」
「あ痛たた…ご…ごめん、君たち…!」
「ハァーッハッハッハッハッハァッ!!!!」
それを見たジェムは腹を抱えて大笑いする。
こんなに感情の起伏の激しい人間だったろうか?とセイルは思いながらも、これでとりあえず召使い達が殺される事は無くなったと一安心した。
ジェムは言う。
「お前達!今日の所はセイルの顔に免じて許してやる!有り難く思うが良い!」
「「「ははぁ〜…!!」」」
召使い達は床に這いつくばり深々と頭を下げた。
それを見たジェムは満足げで、セイルに向き直る。
「セイル、今日お前を呼んだのは他でもない。お前に良い物を見せてやろうと思ってな…付いて来い!」
「良い物…ですか?」
「来れば解る。こっちだ!」
ジェムはセイルの手を取って部屋を後にした。
その様子はまるで幼い子供のようにはしゃいでいるようにセイルには見えた。

ジェムの執務室の隣の部屋に“それ”はあった。
「これは…!?」
それを目にしたセイルは絶句する。
それは部屋いっぱいの巨大な水上都市の模型だった。
「どうだ!驚いたろう?ジャディード・マディーナ(新しい都)…僕の都だ!」
「・・・僕の・・・都ですか・・・確かに凄い都になりますね・・・これならば、外敵も迂闊には攻められませんね」
新王都の模型をみせる王様気取りで自分にみせるジェムの不遜さにセイルは諫言するのを抑え。

「当然だよ。ジャズィーラ島はルーナ女王が旗揚げした聖地。そして、ゼノン帝国始祖大帝ディオンはジャズィーラを征した者は東大陸の王になれると称賛したからね」
「確か、ルーナ陛下はジャズィーラ島を拠点にして暴虐な旧王国を倒したと歴史の講義で聴いた事があります」
「しかし、ルーナはこの素晴らしい島を都にしなかった。全く愚かな女だ」
「確か・・・ジャズィーラ島は争乱の火種になるのをルーナ様は恐れたからと聞いた事があります」
ルーナを呼び捨てにする尊大なジェムの物言いにセイルは少しカチンと来るが、ルーナが都を置かなかった理由を説明する。


しかし、ジャズィーラ島を都にしなかったルーナの行動をジェムは愚行と嘲笑いディオンと比較する。
「だから、ルーナは駄目なんだ大局的に天下をみる目がかけている。だから大帝ディオンに劣るんだ。彼は小国の公子から身を興し、聖剣カシウスを得て類い稀なカリスマと武勇で邪悪な魔族たちを追い払い混迷の西大陸を一代で統一して皇帝の地位を得た。正しく帝王だ」

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