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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 214


ライラはセイルに肩を貸して店を出た。
「しっかりしたまえ、セイル君」
「しぇんしぇ〜!だいじょうぶれふ!ぼくはひとりで家まれ帰れまふからぁ!」
「足元フラフラで呂律も回ってない酔っ払いが何言ってるんだい…。待っていたまえ。流しの馬車を掴まえてやる。君がこうなったのには私にも責任の一端があるからね、家まで送ってあげよう…」
「しぇんしぇ…グスン…しぇんしぇはやっぱし優しいれふ…」
「フフフ…気にするな」
「しぇんしぇ…ぼかぁねぇ…しぇんしぇがウルジュワンを告発して死刑に追いやったなんて未だに信じられないんれふよぉ…いやぁ、あれぁきっと何かの間違いらったんれふよねぇ…しぇんしぇがしょんな事しゅる訳ないれふもんねぇ」
「……何だと?」
その途端にライラの顔から笑みが消えた。
「…セイル君、ちょっとこっち来なさい…」
彼女はセイルを半ば抱えるようにして、表通りから人気の無い裏路地へと引っ張り込んだ。

「セイル君…その話 だ れ に 聞いた…?」
「うぐぅ…っ!?」
ライラはセイルの襟首を掴み上げ、壁に押し付けて問い詰める。
セイルは苦し紛れに答えた。
「そ…それは言えません…。ですが、その人達は先生やジェムに敵意を持つ者ではありません…。そ…それだけは信じてください…」
「……はぁ…分かった。君の言う事を信じよう。まぁ、いつまでも隠し通せる事でもないと思ってはいたがな…」
言いながらライラは手を緩めてセイルを下ろした。
「ふぅ〜…じゃあ、やっぱり先生が…?」
「…ああ、そうだ。ウルジュワンを告発したのは私だ」
「どうして…?そんなに彼との結婚が嫌だったんですか…?」
「ああ、嫌だった…。あの男と一緒になるくらいなら死んだ方がマシだと思っていた…。でもそれだけじゃあなかったんだよ。私にあの男をジェムに告発させた訳はね…」
「…?」
「…私にはかつて将来を誓い合った男性がいた。しかしウルジュワンは私を手に入れたいがために、地位に物を言わせて彼を無実の罪に陥れ、死に追いやった…」
「そ…そんな…っ!?」
驚くセイル、ライラは続ける。
「…とつぜん最愛の人を失った私に、ウルジュワンは素知らぬ顔で優しい言葉を掛けて近付いて来た…。そして私も心の隙間を埋めてくれるウルジュワンに救いを求めて……。だが数年後、私は偶然、最愛の人の死にウルジュワンが関与していた事を知ってしまった。それが切欠でウルジュワンとは別れた。…もっとも、その少し前辺りから、私はもう彼には辟易していたんだがね…。彼は浮気性のクセに独占欲が強く、人前では本性を出さないがプライベートでは感情の起伏が激しく暴力的だった…。例え彼が黒幕でなくとも愛情も冷めるというものだ…」
そこまで言うと、ライラは「ハァ…」と溜め息を吐いて、また続けた。
「…だがこの時点で私は彼に対して復讐をしようという気持ちは無かった。経緯はどうあれ一時は情を通じ合った仲だ…全ては悪夢だと思って忘れて、新しい人生を歩んで行こうと思っていた…。ところがだ。あの男は再び私の前に姿を現し、両親に働きかけて正式な結婚の約束を取り付けてしまった…どうやら彼は絶対に私を自分の手に入れなければ気が済まないらしい…執念のような物を感じた…だから…」
「告発したんですね・・・・・・」
重々しくセイルは言うとライラは震えながら告発した事を肯定する。
「ああそうだ。もしも、告発しなければ私は一生ウルジュワンに支配されるしかなかった。怖かった・・・私が・・・ウルジュワンの呪縛から逃れ人生をやり直すにはこれしかなかった・・・」
「そう…だったんですか…」
セイルはそれだけ言うのが精一杯だった。
まさかライラがそんな過去を抱えていたなんて…。
全く知らなかった。
「…なあセイル君、私は間違っていたと思うかね?…もっと他に違う解決方法だってあったかも知れない…正直、自分でも判らないんだ…」
「……事の善悪なんて僕にも判りません…でも僕は、先生の取った行動が最善の策だったと信じますよ!」
「…そうか……ありがとう、セイル君…」
そう言うとライラはセイルの両肩に手を置いた……と思った次の瞬間、彼女はセイルに唇を重ねていた。
「……っ!!?」
セイルは一瞬、訳が解らなかった。
唇を離し、ライラは少し微笑んで言う。
「フフ…済まない。驚かせてしまったかな…」
「先生…」
「…昔、幼年学校で君が私に告白してくれたろう…ちょうどあの頃だったんだよ…私が最愛の人を亡くしたのは…」
「あの頃…」
「フフフ…あの時君があと10歳大人だったらウルジュワンなんかに流れたりしなかったのに…残念だ…」
ライラは微笑みながら冗談とも本気ともつかない様子で言った。

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