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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 208

「では、ちょっと探して参ります」
そう言うとアルトリアは出て行った。
残ったミレルは呟く。
「あの人の行動も謎だわ…」


王宮の本殿の屋根の上に10匹前後の妖精達が集まっていた。
「私のご主人様、毎日朝晩二回、私に香料かけてくれるの」
「どうりで臭いと思った」
「何ですって〜!?」
「あんた羽根の透明度が落ちてるわよ。栄養バランス偏ってるんじゃないの?」
「えぇ〜!?そんな事ないよ〜」
「市販の妖精のエサって不味いわよね〜」
「そんなの食べさせられてんの?ウチなんてご主人様一家と同じ食事よ」
「ねえねえ、最近ウチのご主人奥さんに逃げられて私の事求めて来るようになったんだけどどうしたら良いと思う?」
「ご主人の友達の所のフェアリーとお見合いさせられそうなんだけど何か良い断り方無いかなぁ〜?」

「これは…飼いフェアリーの集会!?」
塔の影から隠れて観察していたアルトリアだが思わず声を上げてしまった。
「キャーッ!!?」
「人間だわ〜!!」
「私達の秘密の会合が人間に見つかっちゃったわ!!」
「ア…アルトリア!?どうしてアンタがここに居るのよ!?」
ナシートは言った。
「みんな安心して!こいつは厳密に言えば人間じゃないわ!どっちかって言うと私達に近い存在よ!」
「む…貴様、私が人間ではないと気付いていたのか…?」
「当前よ。フェアリーは何でも知ってるんだから」
ナシートの妖精仲間達は突然現れたアルトリアに驚いて蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げかけたが、彼女が人間ではないと知って再び戻って来た。
一匹の妖精がアルトリアを指差してナシートに尋ねる。
「ナシート、アンタがいつも言ってる暴力精霊ってひょっとしてこの女?」
「な…何だと貴様!?仲間内に私の事をそんな風に言っていたのか!?」
「う…うるさいわね!事実でしょ!?」
「おのれ…それに関しては屋敷に帰ってじっくり聞こう。しかしまさかこのように妖精同士でコミュニティーを築いていたとはな…」
「へへ〜ん!凄いでしょう」
「あのね、私達毎日ここで情報交換してるのよ」
「王都の事なら何だって知ってるの」
「ふ〜ん…さっきの話を聞く限り、どうせ大した情報ではないのだろう」
「何ですって〜!?フェアリー情報網を馬鹿にするな〜!」
「では例えばどんな情報を握っているというのだ?」
「ん〜とね…外務大臣の次男坊はお屋敷で働く洗濯女と毎晩ベッドを共にする関係…とか」
「でも彼には親が決めた許嫁が居るの。相手はヤヴズ家に連なる高位の貴族の娘なのよ」
「あと枢密院議長が第三夫人との間にもうけた娘は彼の子じゃないのよ。でもその事実を知ってるのは第三夫人と彼女の下男だけなの」
「…何だ、貴族のスキャンダルばかりじゃないか。くだらん…」
溜め息混じりに言うアルトリア。
フェアリーを飼えるのは裕福な家庭に限られるので、彼女達の持つ情報は自然と偏る。
「え〜、貴族のスキャンダル以外?ん〜と……あ!遷都するって話は?知らないでしょ」
「遷都だと…?」
アルトリアの目が光った。
遷都と聞いた途端に鋭く目を光らせるアルトリアに一人のフェアリーは怯える。
「こ…こわいよぉぉ!!助けてぇぇ〜ナ…ナシート!!」
「大丈夫だから安心して、こら!アルトリア、あたしの友達がびびるでしょう!謝んなさいよ!」
「す…すまん、意外な情報だったから驚いてしまった。許してくれ」
「びっくりしただけだから、大丈夫だよ…」
怖がらせた事をアルトリアが素直に謝るとびっくりしたフェアリーはあっさり許す。
そして、アルトリアは遷都の話を訊こうとする。
「それじゃあ遷都の話を詳しく教えてくれないか、その話は私の主にとってプラスになる情報かもしれないんだ」
「う…うん、詳しい事は解らないんだけど…僕のご主人様が話してたんだけどアズィーム湖の中心にあるジャズィーラ島って所に王都を移転するんだって?」
「・・・・・・・・・・」
遷都の話を聞き終えるとアルトリアは険しい顔で黙る。
「王都が移転してもあたしたちには関係ないわね」
「でも、ジャズィーラ島は緑豊かで温暖な気候だから。砂漠しかないこの街よりも良いんじゃない」
「うんうん、温暖な所なら、新鮮な果物に沢山ありつけそうだからね」
「わかる。わかる。砂漠だと新鮮な果物は貴重よね〜」
「それに〜あのヤヴズ・ジェムを怒らせたら怖いって、ご主人様たち言ってたから賛成するしかないのよ…」
「わたしたち、ご主人様がいるから何不自由なく暮らせるからね。ご主人様たちもジェムに逆らえば全て失うもんね〜」
深刻な表情のアルトリアと異なりフェアリーたちは今の王都が不便なのとジェムに逆らっても無意味なので賛成であった。
「セイルが新しい都にいくなら私も付いて行くわ。セイルを守るのは私の役目だもん」
むろん、ナシートもセイルがいくならば賛成であった。

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