PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 205
 207
の最後へ

剣の主 207

「未来永劫か…この世に永遠など有り得ない。国の開祖か知らないが、500年も昔に死んだ人間を未だに神聖視しているのはどうかと思うがね…」
「何というお言葉…王家の傍系であるアナタにだってルーナ女王の尊い血が流れているではありませんか?アナタは王家から権力を奪っただけでは飽き足らず、王家の権威まで否定なさるつもりですか?」
「僕は別に王家を滅ぼしたい訳じゃない…ただ国を栄えさせたいだけだ…」
そう言ってジェムは窓の外を見渡すのだった。
セイルもただ黙って彼の視線の先に広がる王都の街並みを眺めていた。
その時の二人は、見ている景色は同じでも、その捉え方は恐らく全く異なっていただろう…。


数日後、ジェムはセイルの父オルハンを呼び付けて言った。
「金が足りん」
「はあ…?しかし先日、食糧の一部を売って出来た金がまだ国庫にたっぷりと…」
「いいや足りん!新たな都を作るためにはまだまだ金が足りないのだ!…という訳でオルハン、残っている食糧も全て売って金に変えよ!」
「(遷都を企んでいるとの噂は本当だったのか…)全て…でございますか?」
「そうだ!全てだ!…どうせ毎年秋になれば穫れる物だ。何も気にする事などあるまい。さらに各州の太守に備蓄の食糧を全て王家に供出するよう命じた。すぐにも大量の食糧が王都に運び込まれて来るぞ。その管理と売却交渉も全てお前に一任する。出来るな?」
「は…はい!もちろんでございます」
「うむ、この仕事を無事にやり遂げた暁にはお前に“パシャ(閣下)”の称号と封土(領地)を与えよう」
「…あっ!!そ…それは、つまり…!」
驚きに目を見開くオルハンにジェムは頷いて言う。
「フフ…そうだ。お前は“貴族”と呼ばれる身分になるのだ。元老院にも議席を得て国家の重臣の一人として名を連ねる事となる。士族から貴族になった例は我が国の歴史上でも数例しか無い極めて稀なケースだ。オルハン、励めよ」
オルハンは感極まり最大級の礼として床に這いつくばりながら命令を拝受した。
「ははあぁーっ!!このクルアーン・オルハン!この命に替えましても使命を全ういたします事をここにお誓い申し上げまするうぅ!!(貴族!!ついにこの俺が貴族になれるんだ!!うおぉぉ!!!やってやるうぅぅ!!!俺はやってやるぞおぉぉ!!!)」
この仕事が成功すれば悲願の貴族になれるとあってオルハンの凄まじい気迫で漲っていた。
貴族になれば愛人ウズマと彼女との間に生まれてくる子供をもっと楽させるだけでなく。
自分を見下す頑固親父のウマルを見返せる好機だからやる気で燃えるオルハンをジェムは期待してるぞと褒める。
「期待しているぞ」
「御意、お任せください。それでは、売却交渉などの対策を練っておきます」
「任せたぞ!」
「それでは失礼いたします!」
パタン!
オルハンは部屋を後にすると新王都に自分が支配する新時代にジェムは想いを馳せる。
(新しい都こそ、新しい時代の支配者である僕に相応しい。こんなカビの生えた古臭い都は砂漠の中に埋れて朽ち果てれば良いんだ)
同時に今の王都は朽ち果てれば良いと考えていた。
ジェムとオルハンのやり取りを一部始終聞いて見ていたシャリーヤは困惑していた。
政権が確立してないのに遷都すれば敵対勢力が反発するのは火を見るよりも明らかであったからである。
(未だ敵が多いのに遷都するとはジェム様は焦ってるんじゃないか………しかし、今のジェム様に何を言っても無駄だろう。しばらく様子をみるしかないな)
ここで主君ジェムを諌めるのが側近であるシャリーヤの役目であるが、
最近ジェムに遠ざけられてるのを本能的に感じたシャリーヤは不興を買うのを恐れ貝みたく閉じて黙ってるしかなかった。


フェアリーのナシートは近ごろ毎日どこかへ出掛けて、夕方になる頃には屋敷に帰って来ていた。
昼間、彼女が一体どこで何をしているのか屋敷の誰も知らない。
窓から勝手に飛んで出て行ってしまうので追跡も不可能だし、そもそも居なくなっている事に気付かれていなかったりする。

その日…
「ナシートちゃ〜ん!ナシートちゃ〜ん?」
昼下がり、ミレルは小皿に盛ったお菓子を片手にナシートを探していた。
「いかがなさいました?ミレル殿」
「あ、アルトリアさん、いらっしゃったんですか。クッキー焼いたんですけど食べません?ナシートちゃんにも分けてあげようと思って探してたんですけど…」
「ナシートですか…そういえば最近昼間見かけませんね。どこかへ行っているのでしょうか…これは調べてみる必要がありそうですね」
「あ…いや、別に無理に見つけ出さなくても良いんですけど…」
「いえいえ、フェアリーという生き物は三日で恩を忘れると言いますからね。ある日フラッと出て行ってそのまま…なんて事も有り得ます。ヤツラの行動はしっかり把握しておかねばなりませんよ」
「そんなペットじゃあるまいし…ていうかアルトリアさん、仕事は…?」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す