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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 205

「叔母上、貴女はあの先王の事を嫌っておられたのですか?それとも愛しておられたのですか?僕にはどうもそこが判りませんよ」
「そんなの私にも判らないわ。はっきり答えを出せるような事でもないし…。確かに最初はお父様(セム)の命令で否も応も無く後宮入りさせられて憎しみもあったけれど、毎晩のように体を重ねていれば情だって湧くものよ」
「やれやれ、悲しいものですね。女という生き物は…」
「男だってそうじゃない…」
そう言うとジャミーラはジェムに身体をすり寄せ、彼の股間に手を這わせた。
「ウフフ…けっきょく人間という生き物を突き動かす原動力はコレなのよ。私達はどんな理想や綺麗事を掲げようとコレに支配されている…」
「…失礼、異論を唱える気は無いのですが、さすがに叔母上とは致しかねます。僕は身内であろうと見境無くサカる獣ではないつもりですので…」
「あらまあ、ご挨拶ね。解ったわ。あなたにも理性はあったって事ね」
「ご理解いただき嬉しく思います」
「あ〜あ、興醒めだわぁ…。帰ってファードの寝顔でも見て癒されるとしましょう。もう私の楽しみはあの子だけよ」
「それがよろしいかと…」
ジャミーラは帰り際、ふと振り返ってジェムに訊いた。
「ところで兵部大臣達、いつ始末するつもり?」
「あんなヤツラ、消そうと思えばいつでも消せます。なに、そもそも大した脅威じゃない。そのうち自分達から何かやらかして自滅しますよ…」
「油断は禁物よ。敵はどこから現れるか判らないんだからね…」
ジャミーラは去っていった。

一人になったジェムはつぶやく。
「やれやれ、叔母上も意外と心配性だなぁ…」
やがて彼は椅子に座ったままウトウトし始めた…。


ジェムは夢を見ていた。
『ここはどこだ?僕は確か王宮のテラスにいたはずだぞ…』
夢の中、彼は果てしなく広がる真っ暗な闇の中にいた。
『…ジェムぅ…ジェムぅ…』
『ん?…誰だ!?どこに居る?姿を現せ!』
『ここだよ…』
『…あっ!!き…貴様は…ウルジュワンか!?』
目の前に現れた男は全身の皮膚が焼けただれて見る影も無かったが、焼け残った顔の半分と声で辛うじてウルジュワンだと判った。
『そうだ…俺だ…よくもあんな残酷な殺し方をしてくれたなぁ…』
『黙れ亡霊め!消え失せろ!』
ジェムは叫んだ。
すると今度は背後から特徴的な笑い声がした。
『『ブッヒッヒッヒッヒッヒッ…』』
『その声は…!!』
ジェムが振り返ってみると、そこに居たのはバムとブムであった。
『ブヒヒ…久しぶりなんだなぁ…ジェム…』
『見ろよ…僕達のお腹…ズタズタなんだなぁ…』
バムとブムの大きな太鼓腹はまるで破裂したかのように皮膚が裂け、ぐちゃぐちゃに潰れた内臓類が飛び出し垂れ下がっていた。
『ヒィ…ッ!!?お…お前らが殺されたのは自業自得だろうがぁ!!』
『ならば私はどうだ…?』
新たな声にジェムがハッとして顔を向けると、双子の父ヤヴズ・ハムが切り落とされた自分の頭部を抱えて立っていた。
『お…叔父上ぇ!!?』
『…私はお前の奸計で無実の罪を着せられて処刑された…恨めしい…恨めしいぞぉ…ジェムぅ…』
『くぅ…っ!』
今度は先王アフメト4世が現れて言った。
『…余は貴様が憎い…余を他の者達から徹底的に遠ざけ、最期に家族と会う事すら許してくれなかった…憎い…憎いぞぉジェム…』
『う…うぅ…っ!』
うろたえるジェムに今度はシャリーヤの父イムラーンが現れて訴えた。
彼の胸には一本の矢が深々と突き立っており、口からは血を吐いていた。
『ジェム様…なぜ私を殺したのですか…幼い頃から親しく思っておりましたのに…しかも、よりにもよって私の娘の手で…どうして…』
さらに武器商人のカストールまで出現した。
『よくも利用するだけ利用して殺してくれたなぁ…』
『あ…あぁぁ…っ!!?』
ウルジュワン、バム、ブム、ハム、アフメト王、イムラーン、カストールに取り囲まれたジェムは、恐れおののきながら唯一誰もいない方へと逃げようとした。
だが、そこに最後の一人が姿を現す。
『ジェム……』
『あ…あなたは…っ!!?なぜぇ…っ!!?』
その男を目にしたジェムは驚愕に目を見開く。
まるでその男だけは本当に予想外だったとでもいうように。
『ジェム…よくもワシをあんな目に遭わせてくれたのう…あんなに可愛がって育ててやったのに…』
その男…ヤヴズ・セムは地獄の餓鬼のようにガリガリにやせ細り、衣服はボロボロ、しかも何故か両手の爪が全て剥がれて指先から血がダラダラと流れている…悲惨極まりない姿だった。
『ジェム…』
『…ジェム…』
『ジェム』
『ジェム…』
ジェムを取り巻いた亡霊達は徐々に包囲の輪を狭めていく。
『く…来るなぁ!!』
『ジェム…俺達は今とても暗くて寒い所に居るんだ…』
『ブヒヒヒ…お前も僕らと同じ所に引きずり込んでやるんだな…』
『来るのだ、ジェムよ…』
亡者達は一斉にジェムに手を伸ばした。
『い…嫌だあぁ…っ!!!』


「…ひぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?」
夜の王宮に絶叫が轟いた。
「ジェム様!?」
「いかがなさいましたか!?」
側に控えていたシャリーヤと数名の白衛兵が慌てて駆け寄った。
シャリーヤの顔を見た途端、ジェムの脳裏に夢の中で見たイムラーンの顔が思い起こされた。
「ひいぃっ!!?ゆ…許してくれぇ!!」
「はあ…?」
突然謝られたシャリーヤは訳が解らない。
「あ……い…いや、何でもない…ちょっと夢見が悪かっただけだ…」
「…お疲れのようですね。寝室へ戻ってお休みください」
「うん……あ、シャリーヤ…」
あんな夢の後で一人で床に就きたくないジェムは、シャリーヤに同衾を命じようとした…が、その時、彼はふと思った。

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