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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 204


…ザワザワ…ザワザワ…

官吏達が再びざわめく。
「聞きましたか?蒸し焼き殺すですと…」
「実にエグいですなぁ…」
「いかにもあの大執政殿が好みそうだ…」
「い…嫌だあぁぁっ!!!!」
とつぜんウルジュワンが絶叫した。
「嫌だぁ!!!嫌だ嫌だ嫌だあぁぁ!!!絶っっっ対嫌だあぁぁ!!!」
「こら!暴れるな!」
白衛兵達に押さえ付けられながらも、まるで駄々っ子のように暴れ叫び、力の限りの抵抗を試みるウルジュワン。
「うわあぁぁっ!!!!お…お願いですうぅ!!!絞首でも斬首でも他のどんな処刑方でも良いですからぁ!!それだけはどうかお許しをおぉ!!どうかぁ!!!どうかお慈悲をおぉぉ!!!どうかあぁ!!!!」
「くどい!おい、入れろ」
「「はっ!!」」
「うわあぁぁぁぁっ!!!?」
白衛兵達はウルジュワンを牛の中に放り込んでフタを閉めた。
…ガンッ…ガンッ…ガンッ…
『…ウワアァァァァッ…ダシテクレエェェ…ダシテクレエェェ…』
中から必死に内壁を叩く音と、くぐもった叫び声が聞こえる。
ジャミーラは疑問を口にした。
「あらまあ、声が漏れてるじゃないの。密閉が甘いんじゃなくって?」
「あれで良いのですよ、叔母上…おい、点火だ」
「解りました!」
牛の腹の下に火が着けられた。
『…ギャアアァァァァ…』
中から悲鳴が聞こえる。
しばらくすると、とつぜん牛が吼えた。
「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!!」
「「「…っ!!?」」」
まるで地獄の底から響いて来るかのようなその声に皆は耳を疑った。
アリーが言う。
「…どうやらウルジュワンのやつ、管の存在に気付いたようですね…」
「く…管?どういう事なの…?」
ジャミーラに問われ、アリーは説明した。
「…この牛の内部には細い真鍮の管が取り付けられています。一方の端は内側に突き出し、もう一方の端は牛の口…すなわち外へと繋がっています。内部の空気が熱せられると処刑者は呼吸が困難になり、冷たくて新鮮な空気を求めて管に口を当てて叫ぶのです。管は内部で複雑に曲がりくねっていて処刑者の叫び声を猛る牛の鳴き声のように変換する…という仕組みです」
「…という事はこの雄叫びは…?」
「そうです。中で炙られているウルジュワンの断末魔の叫び声なのですよ」
通常の火刑の場合、受刑者は煙を吸って早い段階で意識を失う。
だが、この装置ではそれが無い…つまり、本当に焼けて息絶えるまで苦しみ続けなければならないのである。
「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!!」
牛は吼え続けている。
内部の空気は熱く焼け付き、吸えば肺が焼ける。
窒息したくない受刑者は本能的に管に口を着けて外気を吸うのだ。
そして意識のある限り絶叫し続け、それは牛の雄叫びに変換される。
実に残虐でえげつない処刑具なのである…。
「「「……」」」
皆は言葉を発する事も忘れて立ち尽くしていた。
「だぁ〜♪うしたぁ〜ん」
何も解らないファードだけがキャッキャッと笑っている。
「おやおや、ファード王子殿下もお気に召されたようですなぁ…」
ジェムはニヤッと笑って官吏達の方を見た。
全員、完全に凍り付いていた。
「…ときに叔母上、例の件、公表するなら今が頃合いかと…」
皆が完全に萎縮している事を確認したジェムはジャミーラに提案する。
「そうね…」
ジャミーラは皆に向かって高らかに告げた。
「皆に訃報があります!先日、国王陛下が崩御あらせられました!」
「「「…っ!!!」」」
皆はハッとした。
「そんな…!?」
「何と…!!」
驚く者もいれば…
「やはりな…」
「何となく予想はしていたが…」
冷静に受け止める者もいた。
「しかしこのタイミングで公表するとは…」
中にはジェムとジャミーラのやり方に眉をひそめる者もいた。
あんな残虐な処刑を見せられた後では彼らに対して文句を言う者のいるはずがない。
すると今度はジェムが告げた。
「なお、国王陛下のご遺言に従い、次のイルシャ国王は第二十九王子ファード殿下とする!異存のある者は名乗り出よ!」
「「「……」」」
名乗り出る者の居る訳が無かった…。


その晩、ジェム打倒を目論む同志達が兵部大臣の屋敷に顔を揃えていた。
「フゥ…昼間は肝を冷やしたわい」
「ウルジュワンの処刑は我々反抗勢力に対する見せしめでしょう」
「しかし何故ジェムは直接我々に手を下さずウルジュワンを処刑して見せしめにするという回りくどい方法を取ったのだろうな?」
「案外、我々の勢力を“侮り難し”と見ているのやも知れませんよ。何せ我々の後ろ盾には“あのお方”が付いておられますからなぁ…」
「うむ、そうだな…我らが反旗を掲げる日も、そう遠くはないかも知れん…」


反ジェム派の者達がそんな相談をしている頃、ジェムはジャミーラと共に宮殿のテラスで月を見上げながら美酒に酔いしれていた。
「フフフ…これで僕達の天下はほぼ確立されたような物ですね、叔母上」
「そうね、可愛いファードを王位に就けるまであと一歩…先王の御代に後宮に入ってからの苦労がようやく報われるわ」

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