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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 203



王都内のディーンの屋敷…
「何と…!?それでは国王陛下は既にお亡くなりになられたと…!?」
「それは僕も初耳だぞセイル!?」
「うん、実はそうだったんだ…」
場所を変えたディーン、アリー、そしてセイルの三人は酒を酌み交わしながら、それぞれジェムの配下となった経緯、そして現段階で自分の知っている情報を話し合っていた。
ちなみにファティマは部屋の外で怪しい者が居ないか睨みを利かせている。
「うぅむ…野望のためならば親類も主家も利用するとは…ヤヴズ・ジェムめ…やはり恐ろしい男だ」
「まったくです。アル閣下も…悪い事は言いませんから…今は形だけでもジェムに従っておいた方が良いですよ」
「ディーンで良い。俺はもとよりジェムと対立する気など無かったのだが、向こうから一方的に目を付けられてしまったのだ。まぁ、失禁太守の汚名と引き換えに何とか命拾いしたがな…」
「その類の噂は気にしない事です。だいたい宮廷には性根の腐った賤しい人間が多い。どいつもこいつも隙あらば他人を貶めて出世しようという輩ばかりなんですから…」
「でも解っている人間はちゃんと解っていますから安心してください。あなたは剣を向けられただけでビビって漏らすようなチキンじゃないってね!」
「そうです!」
「…あ、うん…ありがとね、二人とも…」
ディーンは杯をグイッとあおった。

翌日、ディーンは家来達と共に自分の領地のジャバル州へと帰って行った…。


数日後、王宮の玉座ある大広間に王家に仕える文武百官が集められた。
「急なお召しですな…」
「何かあったのでしょうか…?」
官吏達が話し合っていると…
「第十三王妃イルシャ・ジャミーラ殿下、第二十九王子イルシャ・ファード殿下、および大執政ヤヴズ・ジェム閣下のおなあぁーりいぃーっ!!!」
白衛兵が吠え猿のような声で三人の出座を告げ、百官は起立して深々と頭を下げる。
静寂に包まれた広間の中をファードを抱いたジャミーラ妃、その後にジェムが進んでいく。
白衛兵達を引き連れ、その堂々たる態度はまるで王者である。
いつものように玉座の前に立ったジェムは居並ぶ官吏達に向かって第一声、言い放った。
「…この中に一人、裏切り者がいる!」

…ザワザワ…ザワザワ…

官吏達がざわめく。
皆なんとなく兵部大臣の方を見た。
当の兵部大臣はというと真っ青な顔をして小刻みに震えている。
彼は覚悟を決めたのか、はたまたヤケクソか、恐る恐る剣の柄に手を伸ばす…。
ところが、次にジェムが口にした言葉に誰もが耳を疑った。
「その者の名は……ウルジュワン・サラーム!!」
「「「……?」」」
「はぁっ!!?」
もっとも驚いたのは当のウルジュワンである。
「そ…そんな馬鹿な!?何かの間違いでしょう!?」
ウルジュワンは訳も解らぬ間に白衛達に拘束され、剣を取り上げられてジェムの前に引き立てられた。
「か…閣下ぁ!!なぜ私がこのような仕打ちを受けねばならぬのですか!?」
「黙れ!貴様、先日の宴の際、この僕を権力の座から引きずり落として手柄を横取りされた復讐をしてやるとほざいたそうだな!?そのうえ王家に取って代わって新たな王朝を打ち立てるとも言ったと聞いたぞ!」
「あ……っ!!」
ウルジュワンはハッとしてライラの方を見た。
ライラはというと無表情で黙ってウルジュワンを見ている。
あの時の彼女の言葉が思い出された。
『…そんな夢物語に酔っていられるのも今の内だ。せいぜい楽しむと良い…』
チクられたのだ…彼は全てを悟った。
「…クク…ククククク…フフフ…フハハハハハハッ…アーッハッハッハッハァッ!!!!」
「何だ?コイツめ、気でも狂ったのか?」
壊れたように笑い出したウルジュワンをジェムは半ば呆れ顔で見ながら白衛兵達に目で合図をする。
すると彼らは布の掛けられた大きな“何か”を広間に運び込んで来た。
「ジェム、それは一体何なのですか?」
ジャミーラが尋ねる。
ジェムはウルジュワンを指差して言った。
「ハイヤーム博士が発明した処刑具でございます。本日はコレのお披露目も兼ねてこの反逆者を処刑しようと思います」
「発明はしていません!」
アリーが出て来て叫んだ。
「これは僕がヤヴズ・ジェム閣下の命令を受けて、かつて西大陸のある国で使われていた古代の処刑具をイスカンダリアの大図書館に残されていた資料を元に復元した物です!断じて僕が考案した物ではありませんので、皆様そこの所をよろしくお願いいたします!」
弁解がましいアリーにジェムはイラついて言う。
「御託は良いからサッサと王妃殿下にご説明して差し上げろ。さもないと君に犠牲者第一号になってもらうぞ?」
「し…失礼しました!」
アリーは慌てて掛けられていた布をサッと取った。
「「「おぉ…っ!!」」」
皆は思わず感嘆の声を漏らした。
そこにあったのはやや鈍い金色をした実物大の雄牛の像であった。
アリーは説明を始める。
「えぇ〜…この牛は真鍮で出来ておりまして、中は空洞になっております。背中に鍵付きの開閉式の入口がありますので、そこから処刑者を放り込んで閉じ込め、下から火で炙って焼き殺す…というか蒸し殺す…いや、蒸し焼き殺すという装置です」

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