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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 202

「……」
一方、ジェムの表情からは笑顔が消え、いま自分を笑った女をジッと見ていた。
女の顔から見る間に血の気が引いていく。
彼女は真っ青になりガタガタと震えながらジェムに謝った。
「か…閣下ぁ、も…申し訳ございません!どうかお許しを…!」
「ハァ…シャリーヤ…」
ジェムは億劫そうに傍に居たシャリーヤに声を掛ける。
「…御意」
シャリーヤは一言そう言うと腰のサッシュに差していた短刀を抜いた。
「ヒイィィィッ!!?」
女は逃げようとするが、いつの間にか来た二人の白衛兵に左右から拘束される。
「か…閣下ぁ!どうかお許しを…!閣下ぁ!」
女は泣いて懇願するがジェムは無慈悲に「やれ!」と言った。
シャリーヤは女の胸当てに手を掛け、一気に引き千切ったかと思いきや、露わになった胸に躊躇い無く短刀を突き立てた。
「ギャア…ッ!!?」
女が短い悲鳴を上げて絶命する。
シャリーヤは突き立てた短刀で更に女の胸元を切り開き、その傷口に手を入れ、何かを引きずり出した。
ブチブチと血管が引き千切られ、当に死んだ女の身体が反応してビクンッビクンッと激しく痙攣する。
シャリーヤが引きずり出したのは心臓だった。
彼女はそれを盆のような浅い杯に乗せてジェムに差し出した。
「どうぞ、ジェム様…」
「うむ」
ジェムは杯に酒を注いでグイッと飲んだ。
「フゥ…美味い」
「……(こ…こいつらはキ●ガイか!?)」
ディーンはその狂的な光景に瞬きするのも忘れて見入っていた。
だが彼は何故か勃起していた。
「君も飲まないかね?ディーン君…」
ジェムは真っ赤な液体で満ちた杯をディーンに差し出す。
「……(飲めるか!!)」
心臓は酒の中でまだドクドクと脈動を続けていた。
「…どうしたんだい?まさか僕の酒が飲めないとでも…?」
「い…いただきます!」
ディーンは腹を括って杯を手に取り一気に飲み干した。
錆びた鉄のような味が口内に広がり、思わず吐き出したくなったが、何とか全て飲んだ。
「フフ…フハハハ…ハァーッハッハッハッハァ…ッ!!!!」
それを見たジェムは満足げに高笑いする。
周りは凍り付いていた。

「…ウゲエェェーッ!!!!」
あの後、ようやくジェムから解放されたディーンは人気の無い中庭で戻していた。
「ディーンさん、よく頑張りましたね。全部出しちゃいましょう」
その背中をファティマがさすってやっている。
「ハァ…ハァ…ヤ…ヤヴズ・ジェム…まさかこれほどまでの鬼畜とは…」
「まったく…あの男は完全にイカれてますね。あんな頭のおかしな人間をここまでのさばらせてしまうなんて…王都の人達は馬鹿です。芽の内に摘み取っておけば…」
そこへ…
「そう簡単にもいかないんですよ…」
背後から人の声がしたので二人が慌てて振り返ると、そこにアリーとセイルが立っていた。
「君は…確か騎士学校で同期だったクルアーン・セイル…と……ん!?ザッバーフ・アリー!?」
「あ…あなた懸賞金付きで全国指名手配されてるはずでしょう!?なんで王宮に居るんですか!?」
王宮で行われている夜会で“ヤヴズ兄弟の変”を起こした凶悪指名手配犯アリーが堂々といることにファティマは彼を睨み身構える。
臨戦態勢のファティマにアリーとセイルは話を聞いてくれと懇願する。
「まっまずは話を聞いてくれ」
「僕たちは敵じゃない。信じてくれ」
「信用できません!ディーンさんには指一本触れさせません!」
いきなり現れたセイルとアリーを疑うファティマは剣を抜く。
そこへ、嘔吐のお陰で少し楽になったディーンはゼイゼイしながら止めに入る。
「よせ、ファティマ…この夜会に反逆者ザッバーフ・アリーと大執政閣下側近であるクルアーン・セイルが一緒にいるという事は…ジェムについて…彼等は何か知ってる可能性が…あるかもしれない。剣を終うんだ…」
「ディーンさん…わかりました」
ディーンの命令で仕方なくファティマは剣を終う。
それでも、ファティマはセイルとアリーを警戒して睨んだままであった。
セイルはジェムの側近、アリーは先の事変の首謀者。
その二人がディーンに接触するなんてファティマはナーバスになるのは無理もなかった。
セイルとアリーも彼女の心情が痛いほど解るので強くいえなかった。

「詳しい事は私の屋敷で全て聞こう。ここではジェムの目が煩いからね…」
ディーンは立ち上がるとセイルとアリーにヤヴズ・ジェムがどうやって王国の中枢を支配した経緯を聞くために自分の屋敷へ招くことにした。
ファティマと異なりディーンはセイルとアリーを余り疑ってなかった。
疑ってないといえば嘘になるが、今は少しでも情報が欲しかったからである。

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