PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 199
 201
の最後へ

剣の主 201

「…ライラ、君は私の物だ。あんな男の事など忘れるんだ。そもそもあの男はもうこの世には居ないんだぞ?」
「…そうだ…あなたが裏で手を回して、彼を死に追いやったのだからな…」
「……知っていたのか…」
ウルジュワンは思わず拘束の手を緩め、ライラは彼の手から抜け出した。
「…ああ、知ったのは彼の死から数年経ってからだがな…。ただずっと不審に感じてはいた。あまりにも突然の事だったからな…」
「…だとしてももう昔の話だ。忘れろ。君は今はもう私の物だ。君はあんな男よりも私と結ばれた方が絶対に幸せなんだ。何故それが解らない?」
「フフ…人の命を奪っておいて“昔の事だから忘れろ”か…本当にあなたはどこまでも傲慢な男だな」
「傲慢か…確かにそうかも知れん。だが私は近衛隊長の地位を手に入れた。それだけではない。私はもっと偉くなるぞ。そしていずれあのヤヴズ・ジェムを権力の座から引きずり落としてやる。私の手柄を横取りした復讐だ。それだけではないぞ。私は今の王家をも追放して自ら王として即位し新たな王朝を打ち立てる。その暁には君は王妃として私の隣に座る事となるのだ」
目をギラギラと輝かせて語るウルジュワンは、半ば自分の輝かしい未来予想図に酔っているように見受けられた。
「これは…とんだ妄想だな。あなたの頭の中は花畑か」
「私は本気だ」
「そんな夢物語に酔ってられるのも今の内だ。せいぜい楽しむと良い…」
ライラは呆れて踵(きびす)を返して立ち去った。
「フンッ…無力な女の身で何が出来る…いずれその心までをも屈服させ、必ず私の物にしてやるからな…」

ちなみに彼の話は全くの妄想とも言えない。
民衆は彼を“王都解放の真の功労者”と見ており、そこら辺を上手く利用すれば、民衆の後押しを得て国王即位も不可能な話ではないかも知れない(とはいえ上手くいく可能性は限りなく低いが…)。


地方を治める太守は概ね王都にも滞在用の屋敷を構えており、アル・ディーンもそうだった。
彼は王都に長く居たくは無かったが、ジェムが彼を引き留めた。
屋敷に使者が来て、数日後に夜会を催すので是非とも出席して欲しいと言われたのだ。
もちろん今のディーンに“断る”という選択肢は無かった。
もしも、断ればジェムの不興を買ってしまえば軍用金や人質の提供など際限無き要求を強要されるからである。
そんな命令を受け続ければディーン個人だけでなくアル家はジャバル州の家臣や領民たちの信頼を間違いなく失いアル家は御家断絶は確実であった。
そうならない為にもディーンは王都滞在中に何が何でもジェムの信用を勝ち取り今後の対抗策を作る為に必要な情報を得るしかないのである。


そして夜会の日…
「いや〜、ディーン君、よく来てくれたね〜」
「ジェム閣下、お招きいただき有り難く思います…ところで王都に来てからまだ一度も国王陛下にお会いしておりません。一目ご挨拶いたしたいのですが…」
「あぁ…陛下はご容体が優れないのだよ。ま、君の忠誠は僕が陛下に良〜くお伝えしておくから安心しなさい」
「…解りました。ありがとうございます…」
ディーンはどうも腑に落ちなかった。
夜会は贅を尽くした豪華絢爛な物であった。
最高級の酒と料理が並び、ほぼ半裸の艶めかしい美女達が音楽に合わせて舞い踊る…それはジェムの権勢をこれでもかというほど見せ付けられるものであった。
そのジェムはというと握り拳大の宝石と孔雀の羽根の飾りを付けたターバンを頭に巻き、ドルマンというのか、胸に肋骨状の紐飾りがあり内側にはテンの毛皮を張った裾の長い上着を羽織っている。
その堂々たる出で立ちは正に王者の如しであった。
彼は得意満面の笑みでディーンに言う。
「フフン…今夜は思う存分楽しんで行ってくれたまえ。気に入った女が居たら2〜3人ぐらいならお持ち帰りしても構わないぞ。何せ後宮には千人も居るんだ。女達も相手が僕一人だけでは退屈してしまうだろうからね〜」
その言葉に一人の女がクスッと笑った。
ちなみにこの宴の予算は王家の財産から支払われているし、美女達も後宮の女達…即ち国王に仕える女達である。
ディーンは思った。
(ジェムめ、まるで全て自分の所有物であるかのような物言いだな。だが無理も無い。どうやら王宮は既にこの男によって完全に掌握されているようだ…)
国王が居るべき玉座は空、王妃の席にはジェムの叔母である第十三王妃ジャミーラが王子ファードを膝に乗せて堂々と鎮座している。
他の王族達は会場の隅の方でジャミーラとファードを呪い殺す勢いで睨み付けているか、あるいは居心地悪そうに縮こまっている。
第一王妃と王太子は王都を逐われて行方知れずだというし、この国の中枢は完全にヤヴズ一族とその取り巻き連中によって押さえられたようだ。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す