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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 21


「…ねぇ、アルトリア。そのデザインって何か意味のある物なの…?三日月って確かイルシャ王国の国章だよね…?」
去って行くジェムの背を睨み付けるようにジッと見詰めているアルトリアにセイルは尋ねる。
アルトリアは言った。
「…セイル様、三日月はイルシャ・ルーナ様が王家の紋章として定められた物です。ルーナ様はそれに剣を加えた意匠を個人用の紋章として好んで用いておられました。そしてルーナ様以外にそれを使用する事を許された者は後にも先にもただ一人だけ…」
「そ…それって…」
「…聖剣の精霊たるこの私です。あの男、もしかすると気付いたのやも知れません…」
「そんな…!」
それを聞いたセイルは青くなる。
(バレた!?アルトリアが聖剣の精霊である事も…僕が聖剣の勇者である事も…!)


一方その頃、当のジェムはというと…
「いやぁジェム、さっきはほんっと助かったぜぇ〜。あとはオヤジに頼んで適当に揉み消してもらうからよ、これで一安心だぜ♪」
「あ…ありがとうございました、ジェムさん。本当に何とお礼を言ったら良いのか…」
ここは学校の中庭。
ジェムの後を追うようにそそくさと剣武場から退散したドルフとタルテバは、人目の無いこの場所でジェムに追い付いて礼を言っていた。
「フン…しかしイシュマエル家の御曹子である君ともあろう者が、つまらん真似をしたもんだな…まあ良い。ドルフ君、君はこれで僕に大きな借りが出来た事になる。解るね…?」
「おうよ!礼はするぜ。何が望みだ?」
「あ…あの…僕も、出来る限りの事をさせていただきたく…」
タルテバの言葉が終わらない内にジェムはドルフの肩に手を置いて言った。
「…ドルフ君、君とは今後とも末永く持ちつ持たれつの関係を保っていきたいと思っているんだ。お互いヤヴズ家とイシュマエル家という、この国を動かす名門の一員としてね。僕達は仲良くしておいてお互い損は無いと思うよ?」
「おう!それもそうだな!ガーッハッハッハッハッハッ!!」
「……」
タルテバは何やら言いたげな表情で、そんな二人のやり取りをジッと見つめていた。
そんなタルテバに対し、ジェムはあからさまに見下した口調で言う。
「…あ、そうそう。タルテバ君も居たんだよね。まあ君に関しては政治的にも経済的にも何にも期待してないから安心して良いよ。君はドルフ君の添え物で助けてあげたような物だからね。まあ色々と小賢しい事を考える頭だけはあるようだから、それなら使い道もあるかな…」
「ガハハハハハ!タルテバは俺の添え物で助かったんだってよ!良かったじゃねぇか!」
「は…はい、本当に有り難き幸せで…はい…」
タルテバはニヘラニヘラと笑いながら揉み手して言った。
だが彼の腹の中は煮えくり返っていた。
(チクショウ!チクショウ!何が添え物だ!?バカにしやがって!貴族のボンボン共め!いつか必ず見返してやるからな!?)
そんなタルテバの心中など知る由も無くドルフは言った。
「それにしてもセイルのヤロウ!もうちょっとでこっちが退学させられる所だったじゃねぇか!俺はもうアイツを絶対許さねえぞ!今度こそ再起不能にしてやらぁ!」
それをなだめるジェム。
「落ち着けよ。報復の機会なんてこれから先いくらでもある。これだけの事をやらかしたんだ…せめて在学中くらいは大人しくしていた方が身のためだよ。それに、僕としては個人的に彼に少し興味が湧いたんでね…今再起不能にさせられるとつまらないじゃないか」
「セイルに興味?あんなクズのどこが…」
吐き捨てるように言うタルテバ。
「彼がクズなら君はそのクズ以下…遥かに劣る存在だよ、タルテバ君。セイル君は僕が宝石を渡そうとした時、受け取らずに押し返した。一般的な士族の家庭の約半年分の年収に匹敵する価値の…学年主任の教官でさえ黙って受け取って懐に押しいただいてしまった宝石をね…」
「宝石…?お前いつの間にそんな物を…?」
「あ!もしかして手を握った時に…!?」
「あ!そんで学年主任のヤロー急に態度変えやがったのか!?」
学年主任が態度を変えた理由を知りドルフとタルテバは納得する。

セイルが宝石をつき返した事を思い出しながら、ジェムはクスッと笑い出す。
「しかし、宝石を返されたのは予想外だったな」
「あいつは小心者なんだよ。たっく小心者の癖にかっこつけやがって!」
セイルを小心者と馬鹿にしながら、忌々しそうにセイルを罵る。
「じゃあ、僕は調べ物があるから失礼するよ」
「おう!またな」
「ジェムさん、ありがとうございました」
ジェムは所用があると言い図書館へ向かいドルフとタルテバと別れた。

そして、セイルとアルトリアはというと。

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