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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 3

「ミレル!悪いけど僕の部屋にお茶を二杯持って来てくれ」
僕は家の倉庫から屋敷に戻ると、家で働いている幼馴染でメイドのミレルに、お茶を持ってくるよう頼んだ。
「ハイ!坊ちゃま!・・・・え?・・・ええええええええええ!!!!!」
振り返って僕たちを見たミレルは、アルトリアを指差しながら、驚愕で目を見開いている。
「た!大変です!大旦那様!!ぼ・・・坊ちゃまが女を連れてきました!!」
「何じゃと!!!!」
彼女の叫び声は屋敷中に響き渡り、その声を聴いた祖父は、屋敷の奥から何故か剣を持ったまま転がり出てくる。
「せ!セイル!貴様!修行中の身で有りながら、婦女子に現を抜かすなど!王家への不忠も甚だしい!!・・・ええい!其処へ直れ!叩き切ってくれる!!」
(な!何だ?)
驚愕している間にも、祖父の剣が僕を襲う。
一応峯打ちのようだが、刃が付いていないとはいえ、剣とは要は鉄の棒である。当たれば普通に骨折するし、打ち所が悪ければ、死ぬ。
既に老年で引退したとはいえ、嘗てはイルシャ王国最強の騎士と唄われた祖父の剣戟は、凄まじい程に早く鋭い。
僕は驚きも有って除ける事も、防ぐ事も出来ない。
だが・・・・

キン!

次の瞬間鋭い金属音が響いたと思うと、祖父の剣は宙に舞っていた。
「貴様!セイル様に何をするか!!如何にセイル様の祖父といえど!この方に刃を向ける事は、この私が許さん!!」
まるで獅子や狼が、敵から我が子を守ろうとしているかのように。聖剣ルーナを手に持ったアルトリアが、僕の前に立っていた。






「ハハハハハ!!!そうでしたか!アルトリア殿は、セイルの騎士学校のご学友でしたか!いや失礼しました!・・・セイルが女を連れ込んだと聞いた物ですから、てっきりこの真昼間から不浄の女を引き込んだのではと・・・」
アルトリアの剣にあっさりと自らの剣を宙に弾かれた事に、祖父も最初のうちは驚愕していたが、今ではすっかり彼女の事を気に入った様だ。
彼女の剣椀もあってか、あの後僕が必死に成って吐いたアルトリアが騎士学校の学友であるという嘘を、あっさりと信じ込んでいる。
(ごめんなさいお爺様・・・)
「ところでアルトリア殿。大変不躾な質問で恐縮ですが、家の孫の事を如何思われます?」
(え?)
どうやら彼女の事を僕の恋人か何かだと勘違いしたようだ。
まあ考えてみれば、わざわざ彼女のような絶世の美少女が、こんなド田舎の家までやって来たのだ。祖父の推測は当然だろう。
「ハイ!セイル様は素晴らしい殿方だとおもいます!さすが私の全てを捧げたお方です!」
「すっ!全てを捧げたですと!!」
アルトリアの答えに祖父は完全に誤解したようだ。
(イヤ!意味が違うから!!)
と言いたい所だが、祖父から放たれる怒気と殺気に当てられたのか、舌が上手く動かない。
「もっ申し訳無いアルトリア殿!・・・ええい!頭は悪いが、真面目で善良な孫だと思っていたのに!まさかセイルがこれ程のロクデナシとは・・・貴女のご両親に何と言ってお詫びすればよいか・・・明日にでも王都の息子に連絡を取り、不詳の孫と共に謝罪に行かせていただきます!!」
「あの・・・申し訳ございません私には姉妹は居ても両親は居ません・・・それに姉妹も今何所に居るのか解りませんし・・・」
「な!・・・も、申し訳無いアルトリア殿・・・」
彼女の言葉にまた祖父は何か誤解したようだ。すっかりアルトリアに同情したのか、目に涙さえ溜めている。
「アルトリア殿・・・宜しければ、これからは私たちを貴女の家族とお思い下さい・・・それと不詳の孫ではございますが、もしアルトリア殿さえ宜しければ、セイルの事をお願い出来ますでしょうか?」
「ハイ!もちろんです!」
祖父の言葉にアルトリアは心から嬉しそうに応える。彼女のその微笑みは、見惚れてしまう程美しい。
(何だろう・・・よく判らないけど、スゴイ事に成っているような・・・)
何せ僕は今日までただひたすら剣の稽古にだけ打ち込んで来たせいで、概ねこの手の会話に疎いのだが、そんな僕でも祖父とアルトリアの会話に、ズレのようなものを感じた。
「ありがとうございます・・・いやアルトリア殿のような素晴らしい女性を得た事は、セイルに取って良き支えと成るでしょう」
「ハイ!私も非力の限りを尽くして、セイル様をお支え致します!!」
「ありがとうございますアルトリア殿!セイルの事頼みましたよ!!」
「お任せください!!」
こうして僕は一言も口を挟めない内に、二人の間で何やら誤解に満ちた合意が結ばれたのだった。

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