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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 199

「そうだよ。ディーンくん、人間素直が一番だよ!」
自分に従うディーンにジェムは愉快でしょうがなかった。

それから、二時間後。

ジェムに湯を貰い代えの服を貰い失禁で汚れた服は明日、屋敷に届けるように取り計らって貰いディーンは宮廷を跡にしようとするが、“剣を突きつけられ失禁したことが”王宮の廷臣、近衛兵、女官たちに知れ渡っていた。
「おい、失禁太守のお出ましだぜ」「剣を突きつけられた位で情けないわね〜」
「鈍牛ディーンじゃなくて、失禁ディーンて呼ぼうぜ!」「良いわねえ〜失禁ディーン!」
「しかし、閣下はお優しいよな〜失禁太守に風呂と代えの服を与えたんだから」
「流石はジェム閣下だよね〜失禁ディーンの卒業試験優勝は不正だったんだよ」
「失禁ディーンの隣の女騎士可愛いな〜失禁男にもったいないよ」
自分たちをあることないこと罵る宮廷の連中にディーンは黙したままで、側近のファティマも怒りに震えながら耐えていた。
「・・・・・・」「くっ・・・・・」
同時にディーンとファティマはジェムの寛容さは自分たちを晒す為の物であったと気づく。
それでも今は耐えるしか無かった。
せっかく拾った命だ。
ファティマは言った。
「ディーンさん!あんな連中の言う事は気にしちゃダメですよ!私はディーンさんが剣を突き付けられただけでビビって漏らすようなチキンじゃないって事よ〜く知ってますから!」
「……」
「…ディーンさん?何で黙るんですか?まさか本当に…」
「いや!それは無い!断じて無い!…ファティマ、俺は例え世界中の人間にビビって小便漏らした男だと思われても、お前一人が信じてくれさえすれば、俺はそれで満足だ」
「ディーンさん…!」
ファティマはポッと頬を染めた。
(それってつまり私がディーンさんにとって“特別な存在”って事!?…え!?もしかして遠回しなプロポーズ!?はわわ…どうしよう!?)
「どうした、ファティマ…?」
急に赤くなってモジモジし始めたファティマをディーンは不思議そうに見る。
二人は幼なじみの間柄なのだが、ディーンは普段あまりそういう言葉を口にしないのだ。
そして彼の今の言葉に深い意味は無かった。

そんな彼らを遠巻きに見ていた者達の中にセイルとアリーがいた。
セイルはつぶやく。
「アル・ディーンか…騎士学校時代から何を考えてるのか良く解らなくて謎な人だったな。愚鈍な臆病者か…はたまた全て計算の上での事か…」
「僕はあれはビビって漏らしたと思うがな…もっともその事と彼の人物評はまた別の問題だが」
そこへ…
「やあ、セイル君じゃないか。それと…?」
「あ!ライラ先生ぇ〜♪」
現れたのはセイルの騎士学校・幼年科(小学校に相当)時代の担任教師かつ初恋の相手で今は近衛騎士の一人、アルムルク・ライラであった。
(やば…っ!!)
アリーは慌てて後ろを向いた。
彼もセイル同様、ライラのクラスだった。
彼女に顔を見られたら正体がバレる。
「し…失礼!」
アリーはそのまま逃げるようにその場を後にした。
「せ…先生、その…彼は僕の友人でして…なんか急に用事思い出したみたいで…あの、別に先生と顔を合わせたらマズいから逃げたとかそういうんじゃなくてですねぇ…」
必死に取り繕うセイルを余所にライラは逃げるアリーの背を見てクスッと笑ってつぶやいた。
「フフ…アリー君も元気そうで何よりだな…」
セイルは驚いた。
「……気付いてたんですか…!?」
「ああ、王宮内で何度か見掛けた。向こうは気付いてなかったようだがね…それで判ったんだよ」
ライラは平然と言ってのけた。
アリーの姿は既に無い。
セイルはライラに頭を下げて頼んだ。
「先生、どうかお願いします。この事は誰にも…」
「…ああ、言わないさ。道を踏み外したとはいえ彼も私の可愛い教え子だからね。それに貴族が理不尽に支配する今のイルシャに憤りを覚えた彼の気持ち…私にも解るんだよ…」
「先生…?」
なぜか少し影の差したライラの表情に、セイルは一瞬とても深い闇を見たような気がした。
「フフフ…それにしてもセイル君、君は相変わらず嘘がつけない性分のようだな。昔からちっとも変わっていない…」
「ははは…それだけが僕の唯一の良い所なんですがね…」
半ば自虐的なセイルにライラは言った。
「そんな事はないよ。君は普段は大人しくて地味な子だったが、時々とつぜん周りをアッと驚かせるような行動に出たりする。しかもそれが決まって自分のためじゃなく他人のためなんだ。一番最初は、確かパサン君の疑いを晴らした事だったっけね…」
「そんな事もありましたね…」

…まだセイル達が騎士学校に入学して間もない頃、クラスの学級費が紛失する事件が発生した。
貴族や士族の生徒達の疑いの目は、問答無用で平民出身であるパサンに向けられた。
特に皆の中心となって周囲を煽り、パサンに対して執拗に嫌がらせをしていたのは、ある下級貴族出身の生徒だった。
よくあるイジメの構図である。
ところがある時、セイルが取った予想外の行動によって事態は一気に解決へと向かった。
なんとセイルはイジメの中心だったその生徒をぶん殴ったのである。

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