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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 188

アブ・キルは自分を取り囲んだ衛士達に向かって叫んだ。
「俺は…恐ろしくて、恐ろしくて…たまらなかったんだ!お前達に俺の気持ちが解るか!?俺がどんなに辛い想いを味わったか!どんなに苦しんだか!それがお前達に解るかぁ!!?」

「参ったなぁ…何か言ってますよアレ…」
「完全ボク可哀想モードになっているな」
「構ってちゃんの極致ですね」
「もう救いようが無いな」
中隊長は言った。
「銃を使ってアブ・キルを撃ち、少女を解放しよう」
「し…しかし、我々は銃の扱いには不慣れです。一発で仕留められないどころか、ヘタすると少女を撃ってしまいますよ」
「私にやらせてください!」
名乗り出たのはアブ・シルであった。
「アブ・シル君、出来るの?」
「はい!私がアブ・キルを仕留めます。…あいつとは騎士学校時代からの付き合いでした。私に殺らせてください!」
「…解った。極力殺すな。生かして保護したい。急所は外せ。出来るかい?」
「やってみますよ…」
「アブ・シル先輩…」
アブ・シルは慣れない手付きで銃弾を装填していきながら話した。
「…あいつも、最初からあんなモンスターだった訳じゃなかった…昔は、嘘つきで自己中で思い込みの激しい所はあったが、お調子者で気の良い男だった…」
「いやもうその時点でアウトじゃん…」
誰かが言う。
アブ・シルは構わず続けた。
「俺はね、名前が似てるってだけで、よくヤツと双子や親類と間違われた…それが縁だったか何か解らんが、よくヤツとつるむようになって、何だかんだでいつも一緒にいたもんさ…そのうち周囲から『お前友達は選べよ』って言われるようになって…いつしか距離を取るようになっていった…」
「「「……」」」
「あいつがモンスターに変貌したのは俺のせいだというのはさすがに自意識過剰だろう…でも思うんだ。俺が側に居てやったら、あいつはあそこまで道を踏み外す事にはならなかったんじゃないか…ってね…」
アブ・シルは装填の作業を終えた銃を構えて叫んだ。
「アブ・キル!!いま楽にしてやるぜぇ!!」
「…っ!!」
アブラハムは息を飲んだ。
隣で見ていた彼だけが知っていた。
アブ・シルが赤くペイントされた特殊弾…確実に相手を殺す弾を装填していた事を…。

そしてアブ・シルは引き金を引いた…。



「特殊弾?」
「そう、僕が発明した新しい銃弾だ」
同時刻、セイルは王宮のアリーのラボ(研究室)で茶を飲みながら会話に興じていた。
「どんな弾なんだい?アリー」
「普通の銃弾は敵の肉体にめり込み、あわよくば貫いて損傷を与える。だがこの弾は敵の肉体にめり込んだ瞬間に小さくだが弾ける」
「…それはどの程度の威力なの?」
「まぁ、被弾箇所を中心に半径10cm程度が吹っ飛ぶぐらいだよ。身体のどこかに当てれば相手は死ぬか一生障害が残る。もし眉間に撃ち込まれたりしたら顔が無くなるな」
「うぅ、えげつねぇ…お前兵器作るの嫌だったんじゃないのかよ?」
「それがなぁ…嫌々ながらも始めてみると、逆に楽しくなってしまって仕方無いんだ。もちろん自分の作った兵器が実際に人間に向けられる所なんて想像したくも無い。でもその事と研究は別問題なんだ。今ではいかに効率的により多くの人間を殺戮出来る兵器を作れるかを考えるのがライフワークだよ。解るかい?」
「解る…解るなぁ…」
セイルはしみじみ頷く。
男子というのは概ね兵器が好きな生き物なので仕方が無い。
「アリー、君は実に技術者だね」
「どうもそうらしい…あ、ところで今考案中の新型攻城兵器の模型があるんだが見て意見を聞かせてくれないか?」
「是非!」



ミレルは市場に今晩の食材を買いに来ていた。
「えーと…人参、玉葱、芋は買ったから、あとはお肉ね…」
人々が集まって話していた。
「おい!聞いたか?」
「どうした?」
「王宮前大通りで男が剣を振り回して20人以上が斬られたらしい!」
「やだ!怖いわ〜」
「それで犯人はどうした?」
「駆け付けた衛士隊に殺されたそうだ」
「そうか、そいつぁ安心だ…しかし衛士隊も対応が遅いなあ。もっと早く出動してりゃあ20人も殺される前に犯人を殺せたのによお」
(ふ〜ん…世の中には怖い事があるなぁ…)
そんな程度に思いながら、ミレルは肉屋へと向かっていた。
そんな彼女の前に複数の男が立ちふさがる。
「フフン…」
「あ…あなた達は…!」
それはヤヴズ・ゲムと白衛兵達だった。
「よぉ、クルアーン・セイルの侍女…今日はクルアーン・セイルとあの女剣士は一緒じゃねえのかぁ…?」
「わ…私一人ですが、それが何か…?」
ゲムはニタァ…と笑って言った。
「そいつぁ好都合だ…お前達!捕らえろ!」
「「「はっ!!」」」
白衛兵達はあっと言う間にミレルを取り押さえた。
「な…何すんのよ!?離してぇ!!」
「ククク…嫌だね。テメェはクルアーン・セイルを誘き出すためのエサなんだよぉ…連れて行け!」
「「「はっ!!」」」
「ふ…ふざけんじゃないわよぉ!!嫌!!イヤアァァーッ!!!!」
「フフン…クルアーン・セイルめぇ、この俺を敵に回した事をタップリと後悔させてやるからなぁ…ガァーッハッハッハッハァッ!!!!」

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