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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 186

毎月タダで貰える金が増えようが減ろうが大した問題ではないのだ。
その事に気付いた時から博打への興味は急激に薄れ、ついでに酒も女もどうでも良くなってしまった。

こうなれば後は死ぬのみであり、実際死んでくれた方が確実に社会にとって益である。
だが彼は死ぬのは嫌だった。
生への未練はバリバリであり、死は怖いのであった。
という訳で、彼は惰性で“飲む・打つ・買う”の生活を続けたが、内心ではつまらない毎日を呪っていた。

すると彼の思いが天に通じたのか、バムとブムがクーデターを起こした。
彼はこのクーデター騒ぎに、平民や奴隷の側に立って参加した。
本来であれば彼は打倒されるべき士族である…が、平服を着て大衆に混ざれば誰も彼が騎士だなんて判らない。
彼は別に最前線で命を掛けて戦った訳ではない。
騒ぎに乗じて王都から逃げ遅れた貴族・士族達に掠奪暴行の乱暴狼藉を働いたクチだ。
大貴族はだいたい自前の私兵団を持っており手が出せなかったから、狙いは専ら中級〜下級の貴族・士族だった。
“狩り”と称して目星を付けた邸宅を徒党を組んで襲い、金品を掠奪し、女を輪姦した。
徒党は別に示し合わせなくても自然に組織された。
共に“狩り”をした仲間達が普段は普通の善良な市民なのか、それとも普段からチンピラのような連中なのかは判らなかった。
どうでも良かった。
未婚・既婚また士族・貴族を問わず数多くの女達を犯した。
普段であれば触れる事も許されない高貴な女達を征服していると思うとたまらなく興奮し、彼は生きているという事を実感した。

やがて情勢が落ち着いて来ると彼は“狩り”への参加を控えるようになった。
というか彼同様に“狩り”をしていた者達は概ね事態の鎮静化と共に息を潜め、再び“善良なる市民の皮”を被り日常の生活に戻っていった。
だが中にはしつこく“狩り”を続け、逮捕されたり殺されたりした者もいた。
馬鹿なヤツラだ…と彼は思った。

やがて彼の中に不安が生じ始めた。
このクーデターで社会が大きく変わり、今までのような生活が出来なくなるのではないだろうか…。
だがその心配は杞憂に終わった。
政権を取ったバムとブムは権力者の地位に満足し、社会変革には興味が無かった。

ところが、今度はその事に怒った民衆と影で糸を引いていた衛士隊・近衛隊が再クーデターを決行し、ジェム率いる各州の太守の連合軍が漁夫の利を得る形で王都を制圧してしまった。

まあ保守派貴族の筆頭であるヤヴズ家のジェムならば社会変革など望まないはず…したがって自分の生活も今まで通り安泰だろうと楽観視していたら、労災手当と恩給の支給額を大幅カットするという通知が来た。
深刻な財政難に悩んでいたジェムは、銅貨一枚でも無駄な支出を抑えるべく、かなり無茶な財政改革を断行していたのであった。
彼の生活は一気に最貧困へと転落した。
こうなると過去の豪遊で消費した金が悔やまれた。
どうせ毎月貰える金だ…と、博打の時など気前よく大金を賭けて盛大にスった物であった。
悔やんでも悔やみきれないが、今さら後悔しても後の祭り…。
彼に待つ運命は新たな働き口を探すか餓死するかであった。

 ………

けれども、働く気はなく飢え死にもしたくない腐った性根のアブ・ギルは考え抜いた結果が剣を持ち市街地で暴れまわる事であった。
しかし、この通り魔犯行は大執政ヤヴズ・ジェムに自分の要求を認めさせる手段であった。
尤も人質にされた少女や殺された人々には迷惑でしかない。
「てめえらぁ!!雑魚衛士共じゃ話にならねえ!大執政ヤヴズ・ジェムを出しやがれぇぇ!俺の要求に従えぇぇぇ!!!」
「大執政閣下を出せだと…無理を言うな!我々でもお会い出来ないんだぞ。人質を解放して素直に投降しろ」
投降を呼びかける小隊長にアブ・ギルは喚き散らし人質の少女に刃を突きつけ殺すと脅す。
「うるさい!うるさい!人質がどうなっても良いのか!」
「うわあぁぁんっ!!!こわいよぉぉっ!!!」
泣き叫ぶ少女を人質にするアブ・ギルを前に衛士たちはただ手を拱いているだけであった。

「ちきしょう何とかならないのか!」
「人質に何かあれば小隊全員の責任になりますからね」
打つ手がなく動けないアブ・シルとアブラハムに小隊長は二人を叱りつける。
この事件の犯人が自分のところに所属したアブ・ギルだから小隊長は余計にナーバスになっていた。
「関心してる場合か!かつて我々の部隊にいた者が犯罪を起したんだぞ。下手すれば我々も連座になるかも知れんぞ」

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