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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 184

「………(しかし、あの男(ゲム)を起用したのは間違いだったかもしれないな。この件はシャリーヤとセイルくんに任せよう今の僕は政権固めが重要だからね。何しろ今の僕は敵が多い。その為の対処が今は重要だからね)………」
どうやらジェムはまた何か良からぬ事を考えているようである。
そう自分の覇権を確固たる物にして邪魔な者を巧みに容赦なく排除するこれはジェムの十八番であった。

そして、一人の文官がジェムに呼ばれた。
「大執政閣下、失礼します」
「早速、この書簡をアル・ディーン太守へ渡してくれたまえ」
「はい、畏まりました」
ジェムから書簡を受け取った文官は速やかに退出するとアル・ディーンの領地へ向かった。
文官がいなくなるとジェムは狼狽えるアル・ディーンを想像してドス黒い笑顔になる。
未だ自分に服従する気配のなく用心深いアル・ディーンの動向が気になるジェムは気が気でなかった。
「ふっふっふ〜(あの男は油断出来ない。ここらで屈服させて僕の手駒として働かせないとな。まあ、もしも僕に逆らったら粛清すれば良い。卒業試験での恨みが晴らせるからね)」
そして、卒業試験で優勝を漁夫の利で奪われたことも根に持っていた。
結果的に騎士学校卒業式で卒業生代表として答辞を行えたが、それでも不快であった。



かつてセイルが所属していた衛士府では中隊長・小隊長が衛士達を集めて何やら話していた。
「えぇー…という訳で、ヤヴズ・ジェム大執政の治安強化策の一環として、我々王都衛士隊にも銃が標準装備として支給される事となった」
「ついては市内巡視の際には必ず携帯するようにとの上からの通達である。皆、遵守するように」
 ザワザワ… ザワザワ…
衛士達はざわめいた。
“飛び道具は卑怯”というイルシャ騎士の矜持に反する事柄を強要されたからだ。
一人の衛士が果敢に声を上げた。
「自分はお断りいたします!それは騎士の成すべき道ではありません!」
「あ、じゃあ君もう明日から来なくて良いから…」
「必ず規則を遵守いたします!!」
彼は一瞬で意見を変えた。
騎士にも日々の暮らしがあるのだ。
やり取りを見ていたアブラハムはアブ・シルに言う。
「それにしても驚きましたね。ついこの間まで“飛び道具を使う事は卑怯”と言われていて、僕達もそれを当然と認識していたのに…」
「価値観なんて時代々々であっさり変わるもんさ…」
バムとブムのクーデターの際、銃を持ったテロリストが近衛騎士や衛士をバタバタ撃ち倒した事が今回の装備改変の直接的な理由であった。
小隊長は咳払い一つして続ける。
「ゴホン…さらに、使用する銃弾について説明しておく。我々には二種類の弾が支給される。一つは通常の鉛弾、そしてもう一つはヤヴズ・ジェム大執政お抱えの学者であるハイヤーム博士が発明した特殊な弾だ」
「特殊な弾?」
「どういう弾ですか?」
幾つかの質問が飛び、小隊長は中隊長と顔を見合わせ、それから言った。
「…その仕組みに関しては機密であり、我々も知らされていない。ただこの弾を使用すれば相手は必ず死ぬ…という事だ。ゆえにこの特殊弾を使用する際には必ず小隊長以上の者の許可が必要である。見分け方は…特殊弾は赤くペイントがなされている。間違える事も無いだろう」
中隊長が続ける。
「…まあ銃自体、使用する機会は無いに等しいと思う。確かに近ごろ治安の悪化が甚だしい事は事実だが、余程の凶悪犯でも出現しない限りはね…」
「それはちょっと悠長過ぎまっ!!!」
中隊長の曖昧な説明にアブラハムは文句言おうとしたら、隣にいたアブ・シルに耳をつねられ小声でたしなめられる。
「滅多な事を言うんじゃない。この中にヤヴズ・ジェムのスパイがいるかもしれない。現にこの間、閣下の悪口をいった騎士は問答無用で処刑されたからな!」
「悪口だけで・・・・・先輩・・・それ本当なんですか・・・」
「嘘を言ってどうするんだ。君も気を付けた方が良いよ」
「はい・・・先輩・・・」
先輩アブ・シルの忠告をアブラハムはブルブル震えながら聞くが、中隊長に気付かれ注意される。
「そこの二人!私語は慎みたまえ!査定に響くよ!」
「「すっすいません!!!」」

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