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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 182

せっかく心配して来たのにいきなり怒鳴られ、訳が解らないまま部屋を後にするセイルであった。
「…そうじゃ、セイル!」
部屋を出ようとした時、ウマルはふと何かに思い至ったようにその背に声を掛けた。
「何ですか?お祖父様」
「お前、アルトリアさんとはいつ結婚するんじゃ?」
「ブフウゥゥゥーッ!!!!?」
虚を突いた突然の質問に、セイルは何も口に入れていないのに盛大に噴き出してしまった。
これが食事中なら食卓は大惨事である。
「け…け…け…結婚とか!!僕にはまだ早いですから!!てゆーか!!え!?アルトリアと!!?無いです!!!無いですから!!!」
「何じゃと!?お前達は“そういう仲”ではなかったのか?」
「はい…(そう言えば騎士学校時代の最後の長期休暇中にお祖父様の家でそんなような話になったんだっけ…)」
「いやぁ…わしはてっきりお前達が相思相愛で将来を誓い合った仲なのかと……うぅ〜む…つまり体だけの関係という訳か…いや、最近の若者は随分と割り切った付き合い方をするのう…」
「そ…そんなもんですよ…」
「そうかぁ…はあぁぁ〜…」
ウマルは深い溜め息を吐いて言った。
「…どうやら、わしは生きておる間に曾孫の顔を見る事は適わなさそうじゃのう…」
「はあ、曾孫ですか…(急にそんな事言われてもなぁ…)」
「あぁ…いや、済まん。考えてみればお前はまだ嫁を迎えるような歳ではないか…。急におかしな話をして悪かったのう、もう行って良いぞ」
「はい、それじゃあお祖父様、おやすみなさい」
セイルは今度こそ部屋を後にしようとした。
「ああ、そうじゃ…セイルや」
「何です?」
「アルトリアさんと結婚する可能性というのは全く無いのかのう?」
「話を巻き返さないでください。考えた事もありませんでしたよ」
「そうか…ではミレルあたりはどうじゃろうかのう?」
「…おやすみなさい」
「あ!待てセイル!」
これ以上話し続けても繰り返しになると思ったセイルは部屋を出た。


「ほほう…ウマル殿がそのような事を…」
「そうなんだ。どうもお祖父様の様子が変なんだよ。何かあったのかなぁ…?」
セイルはアルトリアとミレルにウマルとのやり取りをかいつまんで話した。
「わ…私と坊ちゃまが…け…け…結婚だなんて…!そんな…!」
ミレルは顔を真っ赤にしている。
「私は?私とセイルっていうペアリングは言ってなかった?」
「ナシート…残念だけど君の名前は出て来なかったよ」
「そんなぁ〜、私達けっこう良い夫婦になれると思うんだけどぉ…」
「君の身長がせめてあと1mあったら対象に含まれたかも知れないね」
「むぅ〜…」
セイルは指先でナシートの頭を撫でながらミレルに言った。
「どうも心配だよ。ミレル、お祖父様からそれとなく何があったのか聞き出してくれないかい?」
「解りました!お任せください坊ちゃま」
ドンと胸を叩き快く引き受けるミレルにセイルは頼もしく感じると同時に自分の力不足を嘆いていた。
「ミレルありがとう。本当は孫の僕が何とかすべきなんだけど。僕だと何か言いにくそうではぐらかしそうな雰囲気なんだよ。母さまに相談してたら慌てて大騒ぎになるからね…」
「セイル様、自分を責めてはいけません。ウマル殿にも悩みはありますし、こういう時は皆で助け合う時です」
「坊ちゃまは独りで悩みを抱えすぎるんです」
「セイルは独りじゃないよ」
自分を励ましてくれるアルトリア、ミレル、ナシートにセイルは感謝する。
「ありがとう。ありがとう。皆がいてくれて本当に嬉しいよ」
父オルハンが家を出てから半ば一家の主なってしまい。
様々な重圧に押しつぶされそうなセイルにとってアルトリアたちの支えは非常に大きく感謝しきれなかった。

セイルがアルトリアたちの支えに感謝していた頃、ジェムは側近のシャリーヤからセイルとヤヴズ・ゲムのやり取りを楽しく聞いていた。

「へえ〜ゲムの奴、市場でセイルくんと揉めたんだ」
「はい…正確にはセイルの従者たちが揉めて、セイルはゲムに謝罪しました。ゲムはセイルが閣下直属の騎士と解り素直に引き下がったようです」
セイルとゲムのやり取りをジェムはシャリーヤから聞き、ジェムはセイルの人の良さに感心すると同時に素直に引き下がったゲムに安堵する。
ゲムは無能な下衆であったが、任務に忠実すぎる男であるため己の政権を強固にするためにもゲムはジェムにとって必要であった。
「セイルくんらしいよ。僕の手駒を成敗しなかったのは感心だ。しかし、ゲムの馬鹿が素直に引き下がったのは意外だったな。まあ〜そうでないと僕の手駒をやれないからね」

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