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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 181

「それじゃあ…あの、ありがとうございます」
ミレルが品物の入った袋を受け取ると、周囲からパチパチと拍手が起こった。
「あはははは…どうも…どうも…」

一方…
「うぎぎいぃぃっ!!!クルアーン・セイルとその従者共めぇ!!よくも俺の顔に泥を…いや糞を付けてくれたなぁ!!この屈辱は絶対に忘れん!!必ず復讐してやるから覚えていろよぉ!!!」
ヤヴズ・ゲムは井戸で顔に付いた糞を洗い落としながら復讐心に燃えていた…。


「ここじゃな…」
ウマルは王都の一角にある一軒の家を訪ねていた。
「失礼、ナスレッディン殿の家はこちらかな?」
若い男が出て来て言う。
「診察をご希望ですか?誠に申し訳ございませんが本日は先生はお休みでございます」
「君は?」
「助手でございます」
「そうか…なら仕方無いのう。また明日、出直すとしよう…」
ウマルが帰ろうとすると奥から人の良さそうな小太りの年配の男が現れて言った。
「あ〜、構わんよ。せっかく来てくだすったんだ。診てしんぜよう。お入りなさい」
「…あの、あなたがイルシャ一の名医と名高いナスレッディン・ハジャ殿で…?」
「いかにも…ま、イルシャ一というのは周囲が勝手に言い始めた事で、私も少々困っとるんだがね…」
そう言ってハジャ医師は人懐っこく笑った。
「ハハハ…私も先生と同じです」
「…あなたは?」
「申し遅れました。私、クルアーン・ウマルと申します」
「…あ!イルシャ一の剣士と名高い、あの…。数年前に老齢を理由に隠居して第一線を退いたと伺っておりましたが…」
「はい、ですがこのたび是非とも先生の診断をお受けしたく、はるばる田舎から都へ出て来て参りました…が、運悪く王都入りしたその日にバムとブムのクーデターが起き、その後も公私共にゴタゴタが続き…ようやく今日、こうしてお目にかかる事が出来ました」
「それは大変でしたなぁ…さあ、お上がりなさい。それで、一体どこの調子がお悪いのです…?」
「それが……」
ウマルは近頃どうも体の調子がおかしい旨をハジャに伝えた。
家族には一切話していない事も…。
「…なるほど、お話は解りました。では脈と熱を計ってみましょう。そこの寝台に横になって…」
「はい」
脈と熱を診た後、ハジャはウマルを上半身裸にして身体のあちこちに手をかざした。
彼は魔法医でもあり、掌をかざす事で患者の体内の様子が多少は解るのだ。

「…どうですか、先生?」
「ふむ…」
診察を終え、ハジャは一呼吸置いて告げた。
「…末期です」
「あぁ…先生、どうか隠さずに本当の事を仰ってくだされ。自分の身体の事は自分が一番良く解って……って、エェェェッ!!!?」
かなり悪いのではないかと一応覚悟してはいたが、さすがに予想以上の答えにウマルも驚く。
「末期って先生!?だって私まだ元気ですよ!?」
「あなたは元が凄く元気だから今でも普通に活動出来てるんです。普通の人なら寝込んでるレベルだよ…。悪性の腫瘍がね、もう全身のあっちこっちに転移してる。既に手術をして取り除ける段階ではありません」
「そんな……すると先生、私に残された時間はあとどれぐらいなんですか…?」
悪性の腫瘍が全身に転移してると聞きウマルはショックで一瞬倒れそうになるが、取り乱しても何も変わらないので必死で我慢した。
自分の寿命は持って後どれ位なのかウマルは必死の形相でハジャに訊ねる。
「い…今のままだと一年が限度です。でも、田舎で静かに養生すれば二年は確実に生き延びれます」
「よ…養生しても二年。先生何とかならないのですか!まだ、私にはやらねばならぬ事があるのですよ。孫息子は騎士に成り立てですし、最近国には不穏な動きがちらほら動いてるんですよ!死ねるに死ねません!」
厳しくも残酷な余命告知をウマルは聞かされ愕然とする。
そして、孫のセイルの行く末と国の未来を案じるウマルはハジャの胸倉を掴み何とかしてくれと懇願する。
「落ち着きなさい!…余命一年と言ったのは、あくまでも何事も無く過ごした場合です。少しでも無理をしたり心身に負担を掛けるような事をすると命が危いですよ」
「そ…そんな……」
まさか自分の身体がそこまで病魔に蝕まれていたとは…ウマルは目の前が真っ暗になり言葉を失った。


家に戻ってからもウマルは落ち込んだままで、食事の時間になっても顔を出さなかった。
心配したセイルは食後、ウマルの部屋を訪れた。
「失礼します、お祖父様」
「セイルか…何か用かね?」
「いえ、特に何か用事があった訳ではないんですが…夕食の時にいらっしゃらなかったので、ちょっと気になって…お体の調子はいかがですか?」
「最悪じゃ!!!」
「えぇぇっ!!?す…すいませんでしたぁ!!」
今一番触れてはならない話題に踏み込んで来た(悪気は無い)セイルにウマルは思わず声を荒げてしまう。
「で…でも…そんな、いきなりキレなくても良いじゃないですか…」
「す…済まん…ちょっと今は一人にしてくれんか…色々考えたい事があってのう…」
「はあ、解りました…」

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