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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 180

「ガァーッハッハッハァ…ッ!!!俺を馬鹿にしたヤツがどうなるか思い知るが良い!!」
見かねたアルトリアはセイルに尋ねる。
「…セイル様、お許しいただければ全員即座に斬り捨ててご覧に入れますが…」
「い…いや、それはマズいよ。彼は位の高い貴族で、しかも物凄く遠いとはいえジェムの親類だ。殺せば後で確実に問題になる…」
「…私が行きます!あんな横暴、我慢出来ません!」
そう言ったのはミレルだった。
「わっ…!よせミレル、関わるな…!」
彼女はセイルが止めるのも聞かずに暴れる白衛隊とゲムの方へ近付いて行った。
そして道端に落ちていた馬糞を板切れですくい取り、それを思いっきりゲムの顔面に投げつけた。
 ベシャッ!!!!
「うぼあぁぁっ!!!?こ…このアマ!何しやがる!?く…臭いぃ!!臭いぞおぉ〜っ!!?」
「あ〜ら失礼、ヤヴズ・ゲム内務大臣閣下様は庶民の事を臭いだの汚いだのと仰る割には民情視察にはご熱心なようですので、本当は我々庶民の事がお好きなツンデレなのかと思いまして、あなた様が仰る庶民と同じように臭く汚くして差し上げましたが…お気に召しませんでしたか?」
「き…きき…貴っ様ぁ〜、よくも……お前ら!この女を斬れ!この場で殺して良い!俺が許可する!」
「「「ははぁっ!!」」」
白衛隊の隊員達が一斉に剣を抜いた。
「死ねえぇぇぇっ!!!!」
先頭の一人が剣を振りかざしてミレルに斬りかかった…が…
 ザシュッ!!ボトッ…
「アギャアァァァッ!!!?」
次の瞬間、彼の右腕は断ち切られ、地面に転がった。
斬ったのはアルトリアであった。
「情け無い…貴様らの剣は民に向けるための物なのか!?民を守るのが騎士ではないのか!?イルシャ騎士はここまで堕ちたのか!?…かかって来い!真の騎士の剣の味、とくと味わうが良い!」
「「「…っ!!!」」」
アルトリアの凄みに白衛隊の面々は既に及び腰となっている。
「なぁ〜にが真の騎士だぁ!!?お前達!!その女も殺せ!!俺を馬鹿にするヤツはどいつもこいつも生かしてはおかん!!早く殺せえぇ!!」
ヤヴズ・ゲム一人だけが大声を張り上げて怒鳴り散らしていた。
「ま…待ってください!!」
その時、ゲムの前にセイルが飛び出した。
「何だテメェは!!?騎士か!?」
セイルはゲムに頭を下げて言った。
「この者達は自分の従者です。大臣閣下には大変なご迷惑をおかけいたしました。謝罪いたします。この通りです…」
「はあ!?謝罪だあ!?今更そんな事で許されると思って…」
「もし謝罪を受け入れてくださらないと仰るのなら…!!」
セイルはアルトリアを指して言った。
「…どうぞ閣下のお気の済むようになさってください。自分は何も言いません。…ただしこの女剣士、ご覧の通り剣の腕前は達人級でして、黙って斬られはいたしませんよ?少なくともこの場が血の海に沈む事はお覚悟ください…」
「は…はあ!?お…お…脅そうってのか!?ふ…ふざけやがってぇ…!」
「閣下、閣下…!」
一人の白衛隊員が小声でゲムに告げた。
「この者の言、脅しなどではございません。あの女剣士の動き、全く見えませんでした。もし斬り合えば我々全員斬られるかも知れません…」
「うぐうぅぅ…っ!!!!」
ゲムは悔しがるが、セイルの提案を飲んだ。
「わ…解った!貴様の謝罪を受け入れてやる!そう…俺は寛大だからな!貴様らを許してやろう!ところで貴様、名前と所属部署は!?」
「有り難く存じます、閣下。自分はヤヴズ・ジェム閣下直属の騎士で名をクルアーン・セイルと申します」
「ヤ…ヤヴズ・ジェム閣下直属…っ!!?」
名前を聞き出して後で復讐してやろうと考えていたゲムは驚愕した。
「何か…?」
「い…いや、その…何でもない。だ…だがクルアーン・セイル、調子に乗るなよ…この屈辱は必ず晴らしてやるからな…覚えていろ…」
ゲムは去って行った…。

「セイル様、何故あんなヤツに頭を下げたんです?」
「そうですよ〜!腹は立たないんですかぁ!?」
「いや、確かに腹は立ったよ…でも君達が僕の分まで怒ってくれたから、僕は逆に君達の分まで頭を下げたんだよ」
「はぁ〜…ほんっと、お人好しなんだからぁ…」
「…全員斬り捨てるという選択肢もありましたよ?あのような人間のクズ共、斬っても構わないと存じますが…」
「アルトリア…“斬っても良い人間”なんて、この世に一人も居ないよ。それに市場を血の海にしたら皆に迷惑がかかるだろう」
「それはごもっとも…」
「でもミレルがヤツの顔面に馬糞を投げつけた時には胸がスッとしたよ。ミレルは勇気があるね」
「そ…そんな…!私は何も…結局アルトリアさんに助けてもらったし…」
「いいえ、あの状況で最初に動いたミレル殿は偉いですよ。なかなか出来る事ではありません」
ミレルは恥ずかしそうに照れながら言った。
「やだなぁ…私、とにかく必死で…ほとんど考え無しに動いてましたよ…」
そこへ、先程の店主が来て三人に礼を言った。
「あの、ありがとうございました。これ、ほんのお礼です…」
そう言って店主は無事だった商品の野菜や果物を差し出した。
「そんな…いただけませんよ!」
「そんな事言わず、もらってください」
「ミレル殿、ここは有り難くいただきましょう」
「でも…」
ミレルはチラッとセイルの方に目をやると、セイルも笑顔で頷いた。

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