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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 19

「ちょっと待てぃ!!」
「今の試合はインチキだ!」
喜びに湧くセイルと仲間達に待ったをかけた者達が居た。
ドルフとタルテバである。
パサンは言った。
「ふざけんな!セイルがいつインチキしたってんだよ!?お前らこそ、さっき砂投げ付けた犯人じゃねえのか!?」
「だったらどうだってんだ!?あぁん!?」
「まあまあドルフさん、落ち着いてください……パサン、変な言い掛かりを付けるのは止めてもらいたいね。そしてみんな、ちょっと冷静になって考えてもらいたい」
タルテバは皆に向かって言った。
「みんな考えてもみてくれ。今までのセイルの剣の腕前を…言っちゃ悪いがお世辞にも強いとは言えない…人並みにすら遠く及ばないレベルだったじゃないか。それがたった一週間かそこらの特訓で教官に勝てるレベルにまでなれると思うか?」
「…そう言われてみれば…」
「ちょっと有り得ないかも…」
生徒達の中にも疑惑の念が広がり始める。
それだけセイルの上達速度が異常だった訳だが…。

(よぉし…空気が変わって来たぞ…)
タルテバはニタァ…っとイヤらしい笑みを浮かべて言った。
「ほら!おかしいだろう!?きっとセイルは校則で禁じられている魔術を使っていたに違いない!でなければ短期間でこんなに強くなれる訳が無いじゃないか!目が見えなかったのに動けたのもそのためだ!」

「…魔術!?マジかよ…」
「そうだったのか…」
「な〜んだ、応援してやって損した」
「サイテーだな、セイル」
生徒達もタルテバの虚言を信じ始め、セイルへの失望を露わにする。
「そ…そんな!僕は魔術なんて使ってないよ!本当にアルトリアと特訓して…!」
必死に弁明するセイルにタルテバは勝ち誇ったように言った。
「フフン…セイルぅ、確かに気持ちは解らなくも無いけどなぁ…そりゃあ誰だって落第は嫌だもんなぁ、でも試験に受かりたいからってインチキまでしちゃうってのは剣士として…いや、人としてどうよ?そこまでして合格したかった訳?ん?俺だったらそんな薄汚い手を使うぐらいなら潔く運命を受け入れるけどねぇ…」
「嘘だ!!みんな信じてくれ!!僕は本当に…!!」
セイルは叫んだ。
ところが次の瞬間…
「貴様あぁぁーっ!!!!」

バキイィィッ

「へぶしっ!!?」
溜まりかねたアルトリアがタルテバを殴り倒したのだ。
「セイル様がそのような卑劣な真似をする訳があるか!!我が主を侮辱した罪、その命をもって償え!!」
アルトリアは右手を掲げた。
「ま…まさか…!」
セイルは彼女がしようとしている事に気付いた。
魔法で剣を出してタルテバを殺す気だ。
「ダメだ!!アルトリア!!止めろおぉぉ!!」
「ひ…ひいぃぃ〜っ!!?」
タルテバは腰を抜かして尻餅を付き、失禁しながら後ずさりした。
「おい!みんな見ろ!本当の事を言われたからキレたぜ!やっぱりアイツらインチキしてやがったんだ!」
今さら口を挟むドルフ。
だが今やそれどころではない。

ところが…
「…ん?どうした事だ?」
タルテバに迫っていたアルトリアが不思議そうな顔をし、首を傾げて自分の右手を見た。
「…剣が出せないんでしょう?アルトリアさん…」
ふと横から声がした。
「貴女は…」
サーラだ。
今まで黙って事の成り行きを見守っていた彼女であったが、ここに至ってついに口を開いた。
「皆さん、一つ忘れてはいませんか?この剣武場内は魔術が使用できないように各所に魔術封じの呪印が施されているのですよ?…つまり一切の魔術の使用は不可能です!」
「「「…あ…」」」
言われてみれば…一同ふと我に返る。
実はそうなのだ。
サーラは続ける。
「ついでに言わせてもらいますが、この追試は“ある特定の人達”によって仕組まれた茶番です。そこのセイル君を退学に追い込むためにね…」
「…へ?」
これにはセイル自身も驚く。
「ふ…ふざけんな!一体誰がそんな事するってんだよ!?」
よせば良いのにサーラに喰ってかかるドルフ。
「…それはこちらを聞いていただければ解ると思います…」
そう言うとサーラは懐から何かを取り出した。
それを見たギャラリー達がざわめく。
「あ!魔石結晶じゃないか」
「知ってる。声を留めておける石だろ?」
「あれ高いんだよね…さすが王族」
だがドルフは鼻で笑った。
「ヘンッ…一体何が入ってるってんだ?聞かせてもらおうじゃねえか!」
「ま…まさか…!!」
タルテバは嫌な予感がした。
魔石結晶が輝き始め、録音された音声が再生され始めた。

『へへへ…ドルフさん、上手くいきましたよ。セイルのヤツ、来週の追試に合格しなけりゃ退学だそうです』
『そうか!セイルの野郎、ザマー見やがれってんだ!ガハハハハ…ッ!!!』

「げえっ!?あの時の…止めろ!止めろおぉぉ〜!!」
「ぐわあぁ〜!!やっぱりいぃ〜!!」
二人は大慌てでサーラに飛びかかった。
しかしサーラはサッと身をかわす。
そして録音は問題の部分に至った。

『シィ〜ッ!!声が大きいです!誰に聞かれるか分かったもんじゃありません…』
『フフン…しかしタルテバ、お前も策士だなぁ。俺だったら考えも付かなかったぜ。先公に金を握らせてセイルを退学に追い込むなんてよぉ…』

「…あ…あぁ…」
「…終わりだ…何もかも…」
ドルフとタルテバは脱力してガックリとその場に崩れ落ちた。

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