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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 18


当のセイルは目を開ける事すら困難な状態だ。
しかも木剣で叩かれた右手は真っ赤に腫れ上がりジンジン痛んでいる。
普通なら木剣を叩き落とすだけで良いものを、ダブウはセイルの剣技を封じようとワザと手を強く打ったのだ。
「ククク…さぁ!クルアーン!剣を取れ!早くかかって来い!」
「セイル様!そんな下衆の言葉を聞く事はありません!こんな不正がまかり通る訳が無い!学校に訴えましょう!」
「「「……っ!?」」」
そのアルトリアの言葉にダブウ、ドルフ、タルテバの三人はギクリとした。
そんな事をされたら自分達の企みがバレる。
だがセイルは言った。
「…ありがとう、アルトリア…でも僕、やるよ…」
そう言うと彼は殆ど見えない目で手探りで木剣を拾い上げると、左手だけでダブウに向けて構えた。
「セイル様…どうして…!?」
「ごめんよ…自分でも馬鹿だって事は解ってる…でも僕は確かめたいんだ!僕が本当に君に選ばれるに足る男なのかを…!」
不利な状況なのにダブウに立ち向かうセイルはアルトリアは止めようとするのだが、
気弱で臆病な自分がアルトリアの主である聖剣の勇者に相応しいのかを確かめたいセイルはアルトリアを制止する。
「セイル様…この短期間で私が思ってよりも心が強くなりましたね。今のセイル様ならば、あの男に勝てます」
「ありがとう、アルトリア」
セイルの覚悟と成長に気づいたアルトリアは今のセイルならば十分にダブウに勝てると確信して後ろへ下る。

ダブウはホッと安心すると同時に再びセイルを見下すような口調で言った。
「ククク…なかなか良い根性をしているではないか、クルアーン…だがその強がりが貴様の命取りになるという事を教えてやる!」
「あなたのような人に教えてもらう事など何もありません!」
セイルは目が見えないにも関わらず、木剣を真っ直ぐにダブウに向けて言い放った。
「ほざいたな!?小賢しいだけが取り柄の小童(こわっぱ)め!思い知らせてやる!覚悟おぉぉ〜っ!!」
ダブウは木剣を振りかぶってセイルに向かって突っ込んでいった。
誰の目にもセイルの敗北は明らかだ。
だが次の瞬間…!

 カアァァァンッ!

「「「…っ!?」」」
ダブウもギャラリー達も、その場に居た者たち全員が我が目を疑った。
セイルは真っ正面から打ち込まれたダブウの剣を受け止めたのだ。
目は見えず、使えるのは左手のみという状況にも関わらずである。

しかし、最も驚いていたのはセイル自身に他ならない。
(と…止めたあぁぁ〜っ!!!!)
彼は心の中で叫んだ。
打ち込んで来るタイミングなど分かるはずも無い。
直勘だ。

(でも不思議だ…目は見えないのに、先生の動きが何となく判ったような気がする…)
何と言えば良いのか、視覚以外の全身全霊の神経が一瞬だけ研ぎ澄まされたような気がした。
肌に感じる空気の動き、微かな衣擦れの音…全てが教えてくれている。
相手がどう動くのか、それに対して自分がどう動けば良いのかも…。
そして不思議な事に身体がその通りに動くのだ。
(考えるんじゃない…感じるんだ!)

一方、ダブウは戦々恐々。
目と利き手を封じ、余裕で勝てると思っていた相手に剣を受け止められたのだから無理も無い。
一体こいつは何者なのだ!?
目の前の劣等生が急に得体の知れない化け物に見えた。
「ひ…ひいぃ…っ!!?」
思わず及び腰になる。
その一瞬をセイルは見逃さなかった。
「これで終わりだあぁぁー――っ!!!!」
セイルは一気に斬り込んだ。

カアァァー――――ンッ……カランカランカラン…

ダブウの木剣が地面に転がる。
「「「ワアァァー―――ッ!!!!」」」
ギャラリーから喝采が上がった。
「…僕、勝った…?」
「セイル様ぁ!!」
呆然とするセイルにアルトリアが駆け寄り両手を取って言った。
「お見事でした!さすがです!」

「…こ…こんな…こんな事が…」
ダブウは床に両手を付いてガックリとくずおれている。
腐っても騎士学校の教師…ある程度は腕に覚えはあったつもりだった。
それがよりにもよって劣等生と言われていた生徒相手に敗れたのだ。
しかも卑劣な手を使って…。
そのショックは相当なものだろう。

「やったな!セイル!」
「すごいじゃないか!教官相手に勝つなんて!」
「パサン、アリー、ありがとう!」

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