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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 177

自分にジェムを暗殺させるんじゃないかとセイルはアルトリアを疑うが、アルトリアはきっぱりと正直はなしてイルシャの厳しい状態を説明する。
「ええ、セイル様そのまさかです。今この国の現状は最悪に等しいから暗殺は手っ取り早い手段です。それにジェム如きに手間取っては近いうちに国は滅びます。現にこの国は手遅れに近い状態な上に周辺諸国は狙ってますから綺麗事を言ってる場合じゃありません」
「・・・・・・・・」
国に厳しい現状をセイルなりに理解してたが、ジェムを暗殺しろというアルトリアの言葉にセイルは絶句する。
アルトリアの言ってることは正しいかもしれない。しかし、いくらジェムは悪人だからって暗殺という非合法の手段をセイルはやりたくなかった。
同時にジェムを病巣と評して暗殺を進言するアルトリアの苛烈さと冷たさにセイルは言わずに言られなくなった。
「だっ駄目だよ!アルトリア。そんな手は騎士のする事じゃない。確かにジェムは国家を巣食う病巣で君の言ってる事は正論かもしれない。でも、だからって暗殺という卑怯な手や力でねじ伏せても人は付いてこないよ。一度、ジェムと話してみよう」
セイルも心の中ではアルトリアの言ってる事は正論だと解っていたが、彼女の進言は今まで自分が過ごした平和な日常を完全に破壊するようでセイルは怖かった。
口下手で気が利かないながらも必死でセイルはアルトリアは間違ってると諭す。
「甘いですね。あの男はセイル様の説得を聞くような甘い男じゃありません。セイル様のお言葉は所詮平和の恩恵を受けた甘ちゃんの言葉です!もうそんな悠長な事をいってる場合じゃありません。血で血を洗う動乱はもう目の前なのを気付かないんですか!」
自分なりの考えとジェムの説得をセイルはアルトリアに話すが、アルトリアは甘いと毅然とした態度できっぱりと否定する。
「そもそも奴はセイル様を強姦した卑劣漢で下劣暴慢の輩ですよ!憎くないんですか!尻の穴を犯された屈辱を晴らしたいとは思わないのですか!あの痛みを忘れたのですか!」
歯がゆく感じたアルトリアはセイルの怨念を呼び起こそうと焚き付ける。
「アハハハハ…」
だが、それに対してセイルは何故かおかしそうに笑うのだった。
「な…何がおかしいのですか…!?」
「いや…僕がああ言えば君は絶対そう来ると思ってた。それがあまりにも予想通りに行ったんで、ついおかしくなっちゃってね。僕もだいぶ君の行動パターンが読めるようになったよ〜」
「な…っ!?……はあぁぁ〜…何なんですか、もう…あなたという人は…」
アルトリアは目を覆って深い溜め息を吐いた。
怒りも憤りも一瞬で冷めるという物だ。
セイルは一転して真面目な顔になり、言った。
「…カマを掘られたぐらい何だ。命を失う事に比べれば何て事ない。憎い敵だからと言って即、殺してしまうなんて…少し短慮が過ぎるよ」
「そうは申しますがセイル様、これが500年前…ルーナ様の御世ならばジェムのような小悪党など、とうの昔に排除されていました。あの程度の小者をここまでのさばらせてしまったのは、ひとえに今の時代の人間達の甘さの為せる結果ではないのですか?」
「それこそ時代が違うってもんだよ。確かに君が長い年月を過ごした500年前の時代なら“悪即斬”がまかり通ったろうよ。でも今は500年も平和が続いた…その果ての時代なんだよ?戦乱が終結したばかりの荒っぽい世の中とは話が違う」
「やれやれ…参りましたね。私のやり方は野蛮ですか?」
「野蛮というか野暮だ。やり方が直接的すぎる。だいたいジェム暗殺なんてのが、そもそも無理な話なんだよ。確かに僕は今や彼の最も近しい人間の一人だけど、彼の半径5m以内に刃物を持って近付く事さえ不可能だ。そんな事したらお付きのシャリーヤに喉笛を掻き切られてお終いさ。僕も以前に比べれば相当剣の腕は上達したつもりだけど、彼女は僕より格段に強い。もし向こうが本気になったら瞬殺される自信あるよ」
「そんな事に自信を持たないでください!…で、あなたは結局どうしたいんです?ジェムと腹を割っての対話をお望みですか?」
「それにしても今は様子見だね。何事にもタイミングって物があるからさ…」
「それは待つ物ではなく自らの力で引き寄せる物でしょう」
「だから、そういう発想を捨てろって言ってんの。ほんと能動的だよねぇ…君…」

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