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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 174



「なるほどねぇ…そりゃお前も色々大変だったなぁ…」
「うん…何かここ数日でどっと疲れたよ。今までは僕も巻き込まれてはいたけど、何となく“僕の身の回りで起きていた出来事”だった…でもこの二件に関しては“僕が当事者そのもの”だものね…正直、精神的にかなり来る物があったよ…」
あれから数日後…セイルはアリーの研究室を訪れて話し込んでいた。
ジェムに掘られた事や父オルハンとの離別など、彼も色々こぼしたかったのだ。
アリーもアイーシャを人質に取られ、泣く泣くジェムに膝を屈した事を語り、お互い傷の舐め合いである。
そこへ…
「さぁさぁ、お二人とも暗い話はその辺にして…お茶が入りましたよ〜♪」
お茶の入った陶製のポットとカップの乗った盆を持って現れたのはアイーシャであった。
彼女は自ら望んでアリーの助手という立場に収まっていた。
その首には禍々しい紅色の宝石がハメ込まれた首輪が光っている。
セイルは小声でアリーに尋ねた。
(アリー、彼女は首輪の事は…?)
(言える訳無いだろう。自分のせいで僕が嫌々ジェムに仕えている事を知ったら彼女はきっと責任を感じる。それに自分の命がジェムに握られている事をわざわざ知らせる事も無いと思ってね…知った所でどうにか出来る事じゃなし…)
「お二人とも、何をコソコソ話してるんですか?」
「い…いや、何でも無いよ。アイーシャさん…」
「…あ!お茶、いただきますね…」
セイルはアイーシャが淹れてくれたお茶を受け取って飲んだ。
「…いやしかしアレだねぇ。考え様によってはさぁ…天下の王宮の一角に専用の研究室を与えられて、研究資金は青天井、オマケにこんな綺麗で気立ての良い助手さんまで付いて…アリーは本当、幸せ者だよね」
「あらぁ、綺麗で気立てが良いだなんて、そんな…セイルさんったらお上手なんだからぁ…♪」
「セイル、褒めても何も出ないぞ。だいたいお前だってアルトリアさんやミレルさんみたいな綺麗どころに囲まれて…しかもあのライラ先生が同僚なんだろう?」
「う…うん…」
ライラの名が出た途端にセイルは顔を赤らめてうつむく。
分かりやす過ぎである。
アイーシャがからかうように言った。
「アリーさんから聞きましたよ。セイルさん、幼年科の時、そのライラさんって先生に結婚を申し込んだんですってねぇ〜」
「ちょ…っ!!?ア…アリー!お前!何話してんだよ!?」
「事実だろ」
「〜〜〜〜っ!!!!」
セイルは真っ赤になって身悶えし始めた。
『なるほどねぇ〜…』
姿を隠して三人の会話を聞いていたアルトリアも興味深げに相槌を打つ。
『セイル様、幼い頃は現在と違って異性に対して積極的だったのですね。いや、意外や意外…』
「幼年科の頃の話だ!ほんの子供だったの!結婚の意味とかも良く解ってなかったのぉ〜!」
反論するセイル。
アルトリアに対してなのか、アリーとアイーシャに対してなのか、それは本人も良く判っていない。
「落ち着けセイル、喋るならば人の顔をみてから言え」
「ごめん。アリーちょっとパニくったね…」
アリーに注意され我を取り戻したセイルは苦笑しながら顔を真っ赤にする。

「少しは落ち着きを身に着けたほうが良いぞ。今のお前は理由はどうあれイルシャ王国の騎士たちの花形スターである近衛騎士。無様な振る舞いは王家や国の恥になり。イルシャ王国は諸外国から侮られるぞ!」
近衛騎士としての自覚を持てとアリーの忠告をセイルは真摯に受け止める。
「うっうん。理由はどうあれ僕は近衛騎士なんだ。肝にめいじるよ」
「その意気だ。そうそう、セイルは旋風のエルティアの大ファンたったな。風の噂で聞いたんだが、彼は現在ゼノン帝国を相手に戦ってるそうだ」
「そっそれは本当かい?アリー!!奴隷から解放されたエルティアは国相手に戦ってるのかい!」
「ああ、詳しくは解らないが…ゼノン帝国の圧制に立ち上がったそうだ」
「やっぱり、エルティアは凄いな〜僕の手柄なんて小さく感じるよ…」
“旋風のエルティア”が西大陸最大の国家ゼノン帝国と戦ってると聞きセイルは驚き関心する。
騎士学校時代、ドルフやタルテバや一部の生徒たちに何かと苛められ馬鹿にされてたセイルにとって、自分とたいして歳が違わないのに華々しく活躍する剣奴上がりのエルティアはセイルにとってヒーローであった。
自分も国を守護する騎士として手柄を立てたが、ジェムという悪党の言いなりの現状を考えると自由民になっても一国相手に戦うエルティアの姿はセイルにとって非常に眩しかった。

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