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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 171

「解らないけど…無事でよかったよ」
アルトリアとミレルに肩を貸してもらいセイルは父親の無事を安堵するが、何時になく苦い顔のミレルはオルハンと会うのを反対する。
今まで連絡をしなかったオルハンが戻って来た事はミレルは長年の勘でセイルにとってロクでもない事が起きる気がしたからである。
それに何かとセイルに当り散らし、ウマルを馬鹿にするオルハンがミレルは嫌いであった。
「坊ちゃま、あなたは一応怪我人ですから部屋でゆっくりしましょう。ここは大旦那様にお任せするのが一番です」
「なっ何をいうんだよ。父様が帰ってきたんだよ!出迎えなきゃ何をいわれるか!」
「出迎えなければ後で怒られるからですか?…ハァ…」
ミレルは溜め息を吐き、そしてセイルに向かって言い放った。
「いい加減になさい!!小さな子供じゃあるまいし、一体いつまで父親に怯えてるんですか!?あなたもう他人のご飯を食べて稼いでる立派な大人なんでしょう!?」
「ミ…ミレル…!?」
ミレルが声を荒げる事は滅多に無いのでセイルは驚いた。
だがすぐに言い返す。
「き…君に何が解るんだよ!僕だってこんな自分は嫌だよ!…でも…仕方ないじゃないか…父様を前にすると…駄目なんだ…僕は…どうしても萎縮してしまって…」
「そんな情け無い事でどうするんですか!あなたは…」
…と、そこへミレルの言葉を割って入ったアルトリアが遮った。
「はいはいはい!ミレル殿、そこまでですよ。セイル様を責めてもオルハン殿への恐怖心が無くなる訳ではありません。幼少期からの刷り込みですからね。この手の問題はゆっくりと時間を掛けて解消していくしかありませんよ」
言われて我に返ったミレルはセイルに謝った。
「ご…ごめんなさい、私…言い過ぎました…」
「いや、良いよ…事実だから…」
セイルは言う。
「だけど…父様に会いたいのは何も後で怒られるのが恐いからってだけじゃないんだ。知りたいんだよ。今までどこで何をしていたのかとか…どうして今日になるまで僕達の前に姿を現さなかったのか…とかさ。だって家族なんだもの。あんな人でも僕にとってはたった一人の父親だからさ」
「坊ちゃま…解りました。行きましょう」


セイルがミレルとアルトリアに支えられて階下に降りて行くと、辺りは重苦しい空気に包まれていた。
「オルハン…もう一度言ってみろ…」
「ハァ…父さん、これは俺とヤスミーンの問題なんだ。だいたい何であなたが王都に居るんだ…?」
そこではウマルとオルハンが対峙しており、ヤスミーンと召使い達がオロオロしながら見守っていた。
「父様…!」
そこに響くセイルの声に全員の視線が一瞬にしてセイルに集まる。
「…セイルか…」
しかしオルハンはすぐにセイルから目を逸らしてうつむく。
セイルは半ば叫ぶように尋ねた。
「父様!今まで一体どこにいらしたんですか!?生きていたなら何故すぐに戻って来てくれなかったんですか!?」
「戻ったさ…俺達が前に住んでいた家にな…だが何も無くなってた!ものの見事に焼け落ちてな!俺だってつい最近までお前達の生存を知らなかったんだ!俺はお前達が死んだと思って…」
「今はそんな話ではない!!」
ウマルはオルハンを一喝して黙らせると、事情を知らないセイルに説明した。
「…セイルや、この大馬鹿者はヤスミーンさんとお前を捨てて他の女と一緒になるそうじゃ…今日戻って来たのはその事をお前達に伝えるためだったのじゃよ…」
「……っ!?」
あまりに予想外な事態にセイルは絶句する。
その為、何も言えなくなった。
勝手な曲解をするウマルにオルハンは開き直り離婚する気は無くすれば世間体やセイルの将来にも響くと反論する。
「父さん!新しく就いた仕事が多忙だから当分は離れて暮すだけじゃないですか!話を曲解しないでください。ヤスミーンとは別れる気は無いですよ。別れたら世間体が悪くなりセイルの将来にも響きますよ!」
「そうやって、ヤスミーンさんやセイルを出汁にして言い逃れるつもりか!」
「はあ、何でそうなるんですか…私の財政再建策を閣下は評価したので出世したんですよ。それに愛人を持って何が悪いんですか!私のような上級士族には普通のことですよ」
自分が出世した理由や愛人を持っても問題ない事をオルハンは話す。

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