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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 17

次の瞬間…

カアァァー――――ンッ…カランカランカラン…

…小気味良い音が剣武場内に響き渡った。
「……え?」
ダブウは一瞬、状況が把握出来なかった。
自分の手の中にあったはずの木剣が宙を舞い、床に落ちて転がったのだ…。
「お見事です、セイル様!」
静寂の中、アルトリアが朗々とした口調で言った。
「「「…ウ…ウワアァァ〜〜〜ッ!!!」」」
一瞬遅れて場内のギャラリーが湧き上がる。
セイルは自分にかかって来たダブウの木剣を逆に叩き落としたのだ。
彼はホッと溜め息を吐いて言った。
「フゥ…まずは一本…」
一方、一本取られたダブウは青い顔をして信じられないような物を見る目で目の前のセイルを見つめていた。
(う…嘘だ!!いくら油断していたとは言え、この俺が生徒に遅れを取るだなんて…しかも相手はあの劣等生のクルアーンだぞ!?)
彼は全身から冷や汗が流れ出し、木剣を拾い上げる手も心なしか震えている。

一方、ドルフとタルテバも予想外の展開に驚きを隠す事が出来ない。
「おいおいおい…タルテバよ、ありゃ一体どうなってんだ?ダブウ、セイルのヤロウに負けちまってるじゃねえかよ…」
「わ…解りません。まさかセイルのヤツ、本当にこの一週間で成長したって言うのか…」
「えぇ!?それじゃあセイルを退学に出来ねえ!」
「シッ!だから声デカいですって!…まあ、ご安心ください。俺が何とかしますよ…」
そう言うとタルテバはニヤリと笑った。

セイルとダブウは再び向かい合って木剣を構えた。
「…どうしました先生?顔色が良くないようですが…?」
「…へ!?あぁ…い…いや、な…何でも無いぞ!?うん!いや、い…いい…今のはな…ワザとだ!そう!ワザと負けてやったのだ!落第生の貴様が教官に勝てる訳が無い!俺から一本取れたからって調子に乗るなよ!?」
「はあ…別に調子になんて乗ってないんですが…」
「う…うるさい!…うるさい!うるさい!うるさぁ〜い!!」
ダブウは今度は初めからセイルに飛びかかっていった。

 カァンッ

予告無しの急な攻撃にも関わらず、セイルはダブウの剣を受け止めた。
「…くっ!(やはり偶然ではなかった…こやつ、この短期間で飛躍的に剣の腕を上げやがった!どうする?どうする!?)」
ダブウの表情に絶望の色が広がり始める。
セイルは思った。
(先生は気後れしている…いける!)
彼は今度は自分から攻め込もうと、一旦ダブウの剣を払って距離を取った。
だがその時!

 バフッ

「…うわぁっ!!?」
突然、横から何かが飛んで来てセイルの顔面に命中した。
砂の塊だ。
「くっ…目が…!」
「セイル様ぁ!!おのれ…誰だぁ!?」
アルトリアはギャラリーの方を睨み付けた。
「ニヤリ…チャンス!はあぁぁ〜っ!!」
普通なら試合を中断する所…しかしこれを勝機と見たダブウはセイルに打ち込み、木剣で彼の右手を思いっきり叩き付けた。

 バシィッ

「…うっ!!」

 カラン カラ〜ン…

セイルは木剣を取り落としてしまった。
「ぶわぁ〜っはっはっは…っ!!!どうだ!?見たか!?学生の分際で教官に勝てるなどと思い上がって調子に乗っておるから罰が当たったのだ!」
ダブウは両目を押さえて痛そうにしているセイルを気遣う素振りも見せないどころか、居丈高に高笑いしている。
「ふざけるな!!明らかに何者かによる妨害だ!この試合は無効だ!!」
アルトリアはダブウに詰め寄る。
「そうだ!俺も見てたぜ!見物人に紛れて誰かがセイルの顔に砂をぶつけたんだ!」
「ぼ…僕にも見えたぞ!」
ギャラリーの中からパサンとアリーも歩み出て来てセイルの弁護をした。
「…そうだ!」
「こんなのって無いよ!」
「仕切り直し!仕切り直し!」
他の生徒達もこれに賛同する。
「み…みんな…」
セイルは思わず目頭が熱くなった。
それは砂が目に入った痛みだけではないだろう。
「黙れ黙れ黙れぇーっ!!!一本は一本だ!これで1対1だぞ!さぁ!!クルアーン!早く剣を拾え!それとも降参するか!?あぁん!?」
しかしダブウは皆の言い分に耳も貸さず、木剣をセイルに突き付けて唾を飛ばしながら怒鳴った。
「ふざけんな!!」
「インチキじゃねえか!」
「こんな試合ありかよ!?」
いきり立つ観衆の中、砂を投げ付けた張本人…タルテバはいそいそとドルフの隣に戻って来て彼に囁いた。
「…上手く行きましたよ。ドルフさん…」
「へへ…やるじゃねえか、お前…。さぁて、セイルのヤツどうするかな…?」

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