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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 168

アルトリアに図星をさされて顔を真っ赤にしたセイルはムキになる。
『だ…だから!そうやって勝手に決めないでよ!』
『はいはい、そういう事にしておきますよ』
そう言うとアルトリアは大人しくなり茶化すアルトリアにセイルは返事しろと文句を言う。
『てっ勝手に解釈しないでよ!おい!アルトリア!返事しろ』
アルトリアとのやり取りが独り言にみえるセイルは一人の怖そうな武官は怒鳴られ注意される。
「おい!そこの剣士!王宮で独り何をくちゃべっておるのだ!」
「す…すいません。王宮は初めてなので迷いました」
とりあえずそういう事にしておくセイル。
「なにぃ!?迷っただとぉ!?ふざけたヤツめ!たるんどる!貴様の所属部署と姓名を名乗れ!」
「は…はい!自分はヤヴズ・ジェム閣下直属の騎士で、名をクルアーン・セイルと申します!」
「ヤ…ヤヴズ・ジェム大執政閣下の直属!?し…失礼いたしましたぁ〜!!」
「……」
武官は逃げるように去って行った。
セイルは思う。
(ジェムの名を出しただけで態度が一変した…それだけ今の宮廷内でのジェムの力が絶大だって事か…やべ、なんか胃ぃ痛くなってきた…)

そんな事を考えていると、また後ろから呼ばれた。
「セイル!セイルじゃないか!」
「へ…?」
セイルは振り向いた。
今日は良く知り合いに会う日だ。
そもそも自分は宮廷内に知人など居なかったはずだが…。

そこに居たのはここ(王宮)で最も出会うはずの無い男だった。
「ど…どうして君がこんな所に居るんだ!?アリー!」
アリーは慌てて声を潜めてセイルに言った。
(その名で呼ばないでくれ!王宮には僕を殺したいほど憎んでいる連中が大勢いるんだ)
(ご…ごめん!軽率だったよ…)
セイルは慌てて周囲を見渡した。
幸い近くに人はいなかったようだ。
「でも驚いたよ。君がお城に居るなんて…。一体どういう経緯で…?」
「あのジェムのヤロウ…じゃない、ヤヴズ・ジェム閣下が僕を保護して新しい地位と名前を与えてくださったんだ。今は王宮に一室をいただいて新兵器の開発をしている…」
「そうか…それで僕は今の君を何て呼べば良いんだい?」
「王立学士院卒、博士、ハイヤーム・ウマル…それが今の僕だ。そういう事になってる。表向きはね…」
「ウマル…?」
いきなり祖父の名が出て来て、セイルは思わずキョトンとしてしまう。
「ああ、僕の最も尊敬する騎士の名を貰った…気を悪くしないでくれ」
「とんでもない!嬉しいよ。きっとお祖父様も喜ぶよ」
「僕の研究室、すぐそこなんだ。良かったら今度遊びに来いよ」
「是非お邪魔させて貰うよ。じゃあ、また…!」
セイルはアリーと別れ、ジェムの元へと向かった。


「ヤヴズ・ジェム閣下、クルアーン・セイルです。着任のご挨拶に伺いました」
「セイル君、来たね。入りたまえ」
「失礼いたします…」

ジェムの執務室は素晴らしかった。
内装、調度品…全て最高級の物である事が見て判る。
だが、それらは非常に権威主義的で、部屋中が威圧感に満ち満ちていた。
セイルは思う。
(こんな部屋で毎日仕事をしていて息が詰まらないのかなぁ?僕だったら壁は明るい色にして窓も大きく開放的なのが良い。この部屋は高級感と重厚感に溢れているけど何だか押し潰されそうで好きじゃないや…)
そんなセイルの内心を知る由もないジェムは得意げに言った。
「どうだい、良い部屋だろう?この部屋のインテリアは僕が自らコーディネートしたんだ。やはり毎日仕事をする部屋は自分の趣味に合わせたいと思ってね」
「……とても素敵ですね…」
「ふふふ…君が僕の元に来てくれて嬉しいよ」
ジェムは不敵な笑いを浮かべてそう言うと、さっきから傍らに立っていたシャリーヤに目配せする。
シャリーヤは無言で頷くとセイルに告げた。
「失礼ですが、物騒なお腰の物をお預かりいたします」
「え…っ!?」
セイルは思わず聖剣を押さえる。
ジェムは笑って言った。
「ハハハ…安心したまえ。別に君の“相棒”を取り上げたりはしないよ。ま、いわば宮中の儀礼じみた伝統でね…」
話しながら彼は棚から一本の高級そうな酒瓶を手に取ってセイルに見せた。
「…酒を酌み交わす時は帯剣しない。もちろん君が酔って剣を振り回すような男でない事は良く良く知っているつもりだよ」
「はあ…あの、つまり、その…何ですか?」
「なあに、僕と君との再会を祝して一杯だけ付き合ってくれって事さ♪」
そう言ってジェムは人懐っこい笑顔を浮かべた。
(へぇ…この人もこんな風に笑う事があるんだ…)
セイルは今まで良い印象の皆無だったジェムをほんの少しだけ見直した。

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