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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 167

「とっ所で腹の子は男か女どっちなんだ?」
腹の子が男か女のどっちかと聞き出す気の早いオルハンにウズマはお腹を軽くさすって苦笑する。
「もう〜あなたもせっかちさんね〜そんなのは七ヵ月後に産まれないと解らないわよ」
「ははは、そうだった。すまん、すまん。しかし、我が子が出来るなんて久々の吉報だよ。最近はろくな事が起きなかったからな」
最近の目まぐるしい出来事をオルハンは苦笑で思い出しながら振り返る。
そして、ウズマは自分の勘だと腹の子供は娘な気がすると話す。
「あなた、お父さんと奥さんと息子さんで苦労してたからね。でも、私の勘だけど多分女の子だと思うわ!何かそんな気がするのよ」
腹の子は自分の勘では娘だとウズマは言うとオルハンは愛娘が生まれる日を一層楽しみにする。
「娘か…それは何よりだ産まれてくるのが非常に楽しみだ!この娘には精一杯の愛情を注がないとな」
「あなた、嬉しいわ!それでこそあなたよ」
「ありがとう。そうそう、女房との離婚の件は今は無理だが、別居しようと思う。新しい役職に就いたから、それに専念する為にしばらく借家を借りて生活するとか女房たちにいっておくよ」
そう語るオルハンの表情は、とても輝いていた…。
彼は新しい人生を…生きる希望を見出したのだった…。



王都は未だ火種を孕みながらも、少しずつ日常に戻りつつあった…。

「王宮…ここが今日から僕の職場か…!」
セイルはまるで戦場へ向かうような表情で王宮の正門前に立ち、城門とその奥に建つ本殿を見上げていた。
もちろん腰には聖剣を下げている。
『セイル様、そんなに気負う事はありませんよ。何もいきなり敵が襲いかかって来る訳でなし…』
アルトリアが精神感応で話し掛けて来た。
セイルは応える。
『…いや、そりゃあ確かにそうだけどさ…だいたい僕はここに良い思い出が無いんだもの…』
そんな事を話していると後ろから声を掛けられた。
「おや?そこに居るのは…ひょっとしてクルアーン・セイル君ではないか!?」
「はい…?」
セイルは振り向いた。
そこに居たのは年の頃20代末〜30代始めといった所の一人の女性騎士だった。
「あぁ!!先生!ライラ先生じゃないですか!」
「おぉ!やはりそうだったか。元気にしていたか?私の事を覚えていてくれるとは嬉しいな」
「当たり前じゃないですかぁ!…でもどうして先生がここに?」
セイルは何故か妙にテンションが上がっている。
彼が“先生”と呼ぶ女性は鎧の上からでも判る大きな胸を揺らしながら笑って言った。
「ハッハッハッ…私も君と同じだ。剣の腕を買われてな、近衛府に配置転換になったのだ」
「そうだったんですかぁ〜…」
セイルは心なしか頬を紅潮させ、オマケに鼻の下を伸ばしている。
(何なんだこりゃ…)
アルトリアは事情は良く解らないながらも、そんなセイルを半ば呆れ顔で眺めていた。

『…してセイル様、先程の美しい御仁は一体…?』
女性と別れた後、さっそくアルトリアはセイルに尋ねた。
『あぁ、あの人はアルムルク・ライラ先生…僕の騎士学校初等科時代の担任の先生だったんだ』
『なるほど、セイル様の恩師であらせられましたか…(どうせそんな事だろうと思った)』
『いやぁ〜、まさかこんな所で先生に再会できるなんて思ってもみなかったなぁ〜♪先生はね、美人で、優しくて…それに生徒達に対して公正だった。しかも剣の腕も立つんだ。本来なら近衛隊に抜擢されても不思議じゃないぐらいだったんだけど、子供が好きだったからって自ら騎士学校の教官の職を希望したんだって。僕ら初等科の生徒…特に男子生徒達はみんな先生に憧れてたんだ。あのパサンなんて「俺は大きくなったら絶対ライラ先生と結婚する!」な〜んて言ってさぁ〜…♪』
ライラについて語るセイルは完全に舞い上がっているようだった。
アルトリアは言った。
『なるほど…セイル様の初恋のお相手という訳ですか』
「は…初恋とか…!!いきなり何言ってんだよ、お前!?」
思わず実際に声を上げてしまうセイル。
ちょうど王宮の廊下を歩いていたので辺りに響いた。
向こうから来た文官に変な視線を向けられてしまう。
セイルは文官に向かって苦笑を浮かべつつアルトリアに言った。
『いきなり変な事言うなよ〜!』
『図星だったようですね…』

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