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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 164

兵士たちに引き立てられて、2つの石の台上にバムとブムが仰向けに横たえられ、その身を固定された。

死刑執行人がそれぞれの石の台のそばに、斧を持って立っている。

「何か言い残すことはあるかね?」
問われてヤヴズ・バムとヤヴズ・ブムはそれぞれこう言った。
「僕たちを殺しても、それはヤヴズ家の終わりの始まりなんだな。」
「ここに来ている貴族達、もうヤヴズ家は滅びるよ。身の振り方を考えるんだね。」
『わはははははは!!!』


青い顔のまま昂然と双子が大笑いしたのを見て、ジェムは青筋を浮かべて「やれ!」と叫んだ。

処刑人たちの斧が、双子の腹へと振り下ろされ、腰まで深々と両断し、血がだくだくと流れ出す。

「ぉぉぁ・・・」
「ぉぁぁ・・・」

双子達が受けたのは腰斬刑。意図的に強い苦痛を与えてから殺す死刑の一種である。

数万人の観衆が見守る中で二人は激痛に呻き苦しんでいた・・・・・

静かに人々が見守る中、やがて彼らは失血して、息絶えた。

「さあ、いよいよ新たな時代の幕開けだ!!」

ジェムは高らかに宣言したのだった…。


それから数日。

この日も五人の太守達がジェムの元に暇乞(いとまごい)に現れた。
「第13王妃イルシャ・ジャミーラ殿下、第29王子イルシャ・ファード殿下、ならびに大執政ヤヴズ・ジェム閣下。我らもそろそろ自らの領地へ帰ろうと思い、その前に一言ご挨拶に参りました…」
ここは大広間、五人の太守達が揃って玉座の前で臣下の礼を取っている。
だが玉座には誰も座っていない。
しかしその斜め手前にはファード王子を抱いたジャミーラ、反対側にはジェムが立っていた。
ジャミーラが口を開く。
「ご苦労でした。あなた方のイルシャ王家に対する忠節、王妃として心よりお礼を申します。ご病気で今はこの場に居られぬ国王陛下も大層お喜びですよ」
「「「ははぁ!もったい無きお言葉!」」」
五人は頭を下げる。
続いてジェムが言った。
「お前達の忠誠に報い、褒美を取らす。この度の出兵の費用の足しにすると良い」
それを合図に五人の侍従が金塊の詰まれた供物台を持って現れた。
「「「ははぁ〜!!有り難き幸せ!!」」」
五人は金を受け取って帰って行った…。

「ハァ…何が『この度の出兵の足しにすると良い』だ…全っ然足りんじゃないか」
王宮を後にした五人は褒美の少なさについてグチっていた。
「まったくだ。大赤字だ…」
「仕方ないさ。噂によると国の財政も相当に厳しいらしい…ま、無償奉仕よりはマシと割り切って諦めよう」
「それにしてもあのヤヴズの若僧(ジェム)め…我々に対してまるで主君のような振る舞いだったな」
「まったくだ。そもそもヤヴズ家など領地も持たぬ王家の一家臣に過ぎぬというのに…ここ数代で急速に宮廷内での地位を上げて来たな」
「今やヤツラは王家…いや、この国を私物化しつつある。逆らえる者もおらんだろう」
「なに、ヤヴズ家がいかに権勢を誇ろうと、しょせん王都でのみ…まだ地方にはイシュマエル家がいる」
「しかし今回の出兵で最も多くの兵を出しているは他ならぬイシュマエル家だ。両家は既に手を結んでいるのではないのか?」
「いや、出兵に応じたのはイシュマエル家の中でも分家筋…マシャラフ殿のご子息ドルフ殿だ。彼はヤヴズ・ジェムとは騎士学校で同期だったらしいからな。ヤヴズ家に対して良い印象を持っておらぬ本家のアクバル殿は挙兵の要請には応じなかったぞ」
「すると今後、ヤヴズ家とイシュマエル家が対立するという事は有り得るのかね?」
「分からん。しかしもしそうなった場合、我らも身の振り方を考えておく必要がありそうだ」
「う〜む…これは国が割れるな」
「まあまあ諸君、あまり先ばかり憂いても仕方あるまいよ」
「その通りだ。ではまた会おう」
「達者でな」
「次に会うのが戦場でない事を願うよ」
「ハハハ…笑えん冗談だ。では、さらばだ」
太守達は互いに別れを告げ合うと、各々の軍の幕営地へと戻って行った…。


「ハァ…恐らく太守達はあの褒美の量に対して不満を抱いた事だろうな…」
一方、太守達を送り出したジェムの方も彼らの内心を察して溜め息を吐いて独りごちていた。
ここは彼の執務室。
…あの程度の報酬では太守達が今回の挙兵に要した出費を補う事は不可能。
王家に尽くしたにも関わらず不利益を被ったとあれば、当然王家への忠誠心も薄れる…それはジェムの最も恐れる所であった。
そう、反乱である。
「そもそも国庫が貧しすぎるのだ…クーデターで荒れた王宮の修復すらままならん。かと言って今増税して民の支持を失う事も避けたいし…」
頭を抱えるジェムにシャリーヤが言った。
「王都の商人達から金を借りてはいかがでしょう?」
「残念ながら過去、王家が権力に物を言わせて借金を踏み倒した事例が何度となくある。今や商人共は王家に金を貸す事を極端に嫌がるようになってしまった…」

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