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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 163

「だよな〜甥たちが旦那を殺したら恨むのは当然だよな〜」
八方塞がりな状況にドルフは何も言えず途方にくれると側近のアフサンが進言する。
「坊っちゃま、ここにいても長居は無用引き揚げましょう」
「ああ、ジェムの野郎に見付かったらヤバいからな」
「待たぬか!お前たち、わしの孫たちを見殺しにする気かぁぁ!!」
打つ手無しと諦めるドルフとアフサンは引き揚げようとするが、セムは待てと引き留め怒鳴りだす。
「王が死んだと解ったら、助かる手はねえよ。諦めな爺。いくぞアフサン!」
「御意でございます」
しかし、セムを無視してドルフはアフサンと共に王の寝室を後にする。
ドルフにも見捨てられセムは転んでしまい『誰か孫たちを救ってくれ』と泣き叫ぶ。
「待ってくれー行くなーお主等がいなければ!わしはバムとブムをどうやって救えば良いのじゃ!誰か!助けてくれ!わしの孫を救ってくれ!」
だが、涙ながらのその訴えに手を差し伸べる者は、もう現れる事は無かった…。


このような“ごく一部の”ゴタゴタを除けば宮廷…そして王都は着実に落ち着きを取り戻しつつあった。
ヤヴズ・ジェムを中心とした新たな支配秩序は王都…更には国全体に徐々に認知され定着していった。
ジェムの呼び掛けに応じてクーデター政権打倒のために挙兵した王国各地の諸侯は“イルシャ王国百余州”と言われる内の6割強程度に過ぎなかった。
彼らは王都近郊に各々幕営地を設け、その軍と共に未だ王都に滞在していたが、政情もだいぶ落ち着いた今「そろそろ自分の領地に帰りたい」と申し出る者達がぼつぼつ現れ始めた。
いくら平和な時代とはいえ、大軍を率いて領地を長く留守にしておく事は避けたい。
特に北部や南部の国境に隣接している州はイルシャ王国と敵対関係にある異民族に攻められる危険性があった。
それに各州の軍は単なる軍事力としてのみならず領内の治安維持も担っている。
さらに滞在が一日長引く毎に、兵士達の食事代や軍馬の餌代など莫大な金が掛かる。
これは小さな州の太守などにとっては非常に手痛い出費であった…。



そして、新たな支配者が誰であるのかを完全に知らしめるべく、1つのセレモニーが行われようとしていた。


「あの双子は明日だ。公開でやる。」
「はい。」
ジェムは配下の者たちに指示を下す。その意味を理解した部下達はすぐに動き出した。



その日のうちに街内各所や城門に、ヤヴズ・バムとヤヴズ・ブムの公開死刑執行を予告する掲示が出された。


夜。
「今日の夕飯はまだか?」
「どうやら僕たちの命運は尽きたみたいだね。」
いつまでたっても飯が来ないことに気付いた双子は、いよいよその時が来たことを悟った。

「どうやら今日でお別れなんだな。アリー。」
「ジェムには面従腹背でいいから従っておくんだな。出奔と言う手もあるし、生き延びた奴が勝ちなんだな。」

栄養不足でともすれば混濁しそうな意識の中で、アリーは双子達の遺した言葉を反芻していた。

翌朝。

王立闘技場には数万名の群衆が詰めかけていた。
だが今日の出し物は剣士や戦士や奴隷や動物の戦いではない。

ヤヴズ・バムとヤヴズ・ブムの公開処刑がこの日の唯一の出し物だった。

貴賓席にはジェムや彼にすり寄る貴族たちの姿があって。
司法大臣による双子の罪状読み上げが行われた。

罪状を言い渡された双子は両手と首を木枠で拘束され、腰縄で二人ずつの兵士によって捕えられて処刑台の前に立たされていた。

観衆からはヤジが飛んでいる。
曰く、「簒奪者をやっちまえ!」「国を乗っ取るクーデター犯人に死を!」といったものである。

演壇にジェムが立つと、次第に観衆は鎮まっていった。これも彼のカリスマだろう。
静かになったのを見計らって、決定的な言葉を発す。

「では、反逆者に死を与えよ!」
「はっ!」

処刑台は石造りで、シングルベッドサイズの石材が2つ、間隔を置いて並べられていた。
覚悟を決めていた双子も、いよいよ顔から血の気が引いてきた。なぜなら・・・・


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