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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 162


…その瞬間!

ブウゥゥー――――ンッ!!!!

妙な音と共に大量の“何か”が部屋から飛び出して来た。
「蝿(はえ)だぁ!!」
それが何十何百という蝿とその羽音であるという事は三人にもすぐに判った。
続いてムワッと鼻を突くような匂いが襲って来た。
寝室の中を見ると異常なまでに大量のお香が焚かれている。
まるで“何かの匂い”を誤魔化そうとしているかのようだ。
お香の匂いに僅かに混じる別な“臭い”がその正体を教えてくれていた。
ドルフはそれに似た臭いを嗅いだ事があった。
肉が腐った臭いだ。
「あ…あぁぁ…あぁ…」
先程までの威勢はどこへやら、セムは入口に立ち尽くしガタガタと震えている。
「く…っ!」
ドルフは意を決して部屋の中に足を踏み入れた。
飛び回る蝿の嵐の中を中央に置かれた寝台へと向かって歩いていく。
…そこに“国王だった物”は横たわっていた。
「…何てこった…」
王が既に亡くなってたと知りドルフは驚くが、アフサンは冷静に観察する。
「ジェムめ考えましたな。王の死を臥して従弟のファード様の擁立を確固たる物にする腹でしょうな」
「あの腹黒野郎がやりそうな事だ。しかし、気に入らねえ!」
王の死を隠し、専横を欲しいままにするジェムにドルフは怒りと同時に吐き気を覚える。
「何をのん気にしておる場合か!このままではバムとブムが助からないではないか!」
冷静なアフサンとドルフの態度に震えていたセムは二人を怒鳴り付ける。

「おいおい、爺さん落ち着けよ。まだ、処刑されたわけじゃねえんだ。対策を立てようぜ」
「何が対策じゃ!既に陛下が亡くなってたんだぞ!誰にバムとブムを救うのを頼めばいいのじゃ!」
セムを宥めるドルフであったが、セムは一向に言う事を聞かずヒステリーになる。
せっかく手を差し伸べたのに自分勝手なセムにドルフはムッとするが、抑えてアフサンに相談する。
(ああ、この爺に協力したのは失敗だったかもな)
(そんな事はありませんぞ。王の死を知ったのですから、ヤヴズ・ジェムをけん制するのに使えますぞ!)
「何をひそひそ話をしておるんじゃ!策を考えぬか!」
当り散らすセムに呆れ顔のアフサンは進言する。
「セム殿、落ち着きなされ。それでは貴殿のご息女であるジャミーラ第十三王妃に頼んではどうでしょう。次の王大后になられる御方です。ジェムも悪いようにしない筈ですぞ!」
「おお、流石はアフサン。どうだいセム爺さん、悪い手じゃねえだろう!」
アフサンの進言でドルフは強気になりセムに言い返すが、既に娘のジャミーラに頼んだが駄目だった事をセムは話す。
「じ・・・実は既にジャミーラに助けを求めたんじゃが・・・例え甥でも陛下を死に追いやった者たちを助ける気は無いときっぱりと断られた」


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