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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 159

「アイーシャさん…」
アリーは目を閉じてアイーシャの面影を思い出す。
だが、どことなく引っ掛かる部分があった。
(…何だろうか?さっき会った時の彼女、何か違和感があったような…)
その原因にはすぐに思い至った。
(そうだ…彼女が首に付けていた、あの首飾りだ…)
服装は一般的な貴族の娘のそれであった。
彼女好みの装飾の少ないシンプルなデザインだ。
しかしその首回りには大きな首飾りが掛けられていた。
いや、首飾りというより“首輪”と言った方が正しいかも知れない。
前面に大きな宝石が埋め込まれた装飾的な金の輪がぐるりと巻かれていた。
宝石は血のような、どす黒い紅色であり、禍々しい印象を受けた。
(アイーシャさんはあんな趣味の悪い装飾品は好まなかったはずだ…)
アリーは何となく嫌な感じがした。

翌日、アリーの前に再びジェムが現れた。
「さて…今日が約束の一週間目だ」
アリーはジェムを睨み付けながら訊いた。
「昨日…僕にアイーシャさんを引き会わせたの…あんたなんだろう…?」
「フン…さぁて、どうだろうねぇ…」
ジェムは口元に笑みを浮かべながらはぐらかす。
「…ただ、もうお気付きかとも思うが、彼女が着けていたあの首飾り…あれは僕がプレゼントした物だよ。なかなか良い趣味だろう?…あぁ、もちろん彼女に気があるとかじゃないから、別に心配しなくて良い…」
「…やはりそうか…あれは一体何なんだ…おおかた呪いの首飾りか何かといった所か…?」
「お察しの通り…あれはね、僕の意思で自由に緩めたり締めたり出来る魔法の首輪さ…もちろん強く締めれば彼女の命を奪う事だって容易く出来る…」
「あぁ…」
アリーは目の前が真っ暗になった。
「まさか彼女を人質に取るなんて…チクショウ…やるなら僕自身にやれ…彼女は関係無い…巻き込むな…」
「フッ…愛する人の命を握られた気分はどうだい?僕に従う気になったかい?」
「あぁ…嫌だ…僕はもう…これ以上…罪を重ねたくないのに…」
両手で頭を抱え込み嘆き悲しむアリー。
ジェムは牢の前に片膝を付き、格子越しに彼の顔を覗き込むように言った。
「いいや…そうはいかないんだよ、アリー君…さもないと彼女の命は無いよ…君はあの首輪で絞め殺された人間がどうなるか知っているかい?…首輪がジワジワと絞まり始めると、大抵の者は激しく暴れ、のたうち回る…眼球と舌が飛び出し…顔は鬱血して赤黒く変色して腫れ上がる…あの美しい顔が地獄の魔物のように見る影も無く醜く変貌してしまうんだ…涎、鼻水、涙…そして下からは糞尿を垂れ流し、最後にボキリと首の骨が砕ける鈍い音がし、死ぬ…彼女がそうなっても、君は良いのかい…?」
「……」
アリーは言葉も無い。
ジェムは目を細めてアリーを見つめ、最後にこう言い放った。
「…これでも、僕は“愚物”か…?」
「…あ…あぁぁ…」
「フッ…もう一週間“断食”して考えろ」
そして、ジェムは踵を返し、去って行った。

牢からジェムがいなくなると絶望に打ちのめされたアリーは突然狂ったように泣き叫び拳が血まみれになるまで石畳を殴り出す。
「うわあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ちきしょぉぉぉ!!!!!!!!!!」
「止めんか!ザッバーフ・アリー!」
「大人しくしろ!」
バギ!ボカ!バギ!ボカ!
獄卒たちは暴れ出したアリーを棒で殴り縛り猿轡で捕縛され気を失っていた。
「・・・・・・・・・」
「今日はその格好で大人しくしてろ!」
獄卒たちに殴られ身体を拘束され痛ましいアリーの姿にバムとブムは同情するが、ジェムの恐ろしさを思い知ったアリーが屈服する日は遠くないと考えていた。
「ジェムのえげつなさを理解したようなんだな。でも、アリーが少し可哀想なんだな。愛しい恋人を人質に取られたら泣き叫びたくなるんだな」
「でも、こいつもジェムに屈服するのが一番だと解ったと思うんだな。死刑確実の僕たちよりはマシなんだな」
「うん、生きてれば良い事はあるんだな。自分の命を大事にするんだな」
既に自分たちの最期が近いのを悟っている双子はアリーに希望を託しているようである。
自分たちは遅かれ早かれジェムによって処刑台に連れてかれ首を切られる定めを双子は受け入れていた。
しかし、一向に自分たちを処刑しようとしないジェムにの行動にバムは疑問を持つ。
「ジェムの奴。僕たちを何時になったら処刑するんだな。牢にいれられ随分たつのに何の音沙汰もないなんて可笑しいんだな?」
「恐らく、アリーが屈服するまでの間はこのままだと思うんだな。ジェムのことだから僕たちを反逆者として見世物にして処刑するはずなんだな」
「あいつらしいやり方なんだな。悔しいんだな!」
ジェムの狙いに悔しがるバムにブムも同意する。
「ジェムの一矢報いたいんだな!それまで時間はあるんだな考えよう」
「そうだな。それが僕らの最期の足掻き何だな!」
絶望に陥っても双子は残された命を使いジェムに一矢報いる策を考える。

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