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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 155

「未だに信じられんのう…。じゃがアルシャッド殿下が宮廷から追放された事と照らし合わせて考えてみると、その話も納得がいくぞ。おそらくヤヴズ・ジェムとジャミーラ妃はファード王子を次期国王として即位させる前に準備期間が欲しいのじゃろう。そのためにはまだ陛下に生きていて貰わねば困るという訳じゃ…」
「僕もそう思っています…」
「しかしセイルよ、お前は何故こんな重要な事を知っておる?言っちゃ悪いがお前のような一介のヒラ衛士が知れるような事ではないじゃろう…」
「それは…僕が国王陛下の最期を看取ったからです」
「な…何じゃとぉ!!?」
それを聞いたウマルは先程にも増して驚く。
セイルは起こった事の全てをウマルに話した。
王宮内で偶然アルシャッドに出逢い、地下通路を通って彼を国王の寝室まで連れて行った事、ジェムとジャミーラ妃の信じられない蛮行、そして国王の最期の頼み…。
「そうか…そうか…陛下は最期に、そうおっしゃられたのじゃな…」
ウマルは何度も何度もうなずき、時おり涙を流しながらセイルの話を聞いていた。

全てを語り終えたセイルはウマルに尋ねる。
「お祖父様、教えてください。ミレルは国王陛下の庶子なんですか?」
「うむ…どうやらその事について話さねばならぬ時が来たようじゃのう。ミレルを呼んで来なさい。それとアルトリアさんにも、手鏡を持って来るようにと…」
「わ…分かりました!」
やはりウマルは事情を知っていたのだ。
セイルは部屋を出て二人を呼びに行った。

そして…
「もぉ〜、坊ちゃまぁ、一体どうしたって言うんですか?そんなに血相を変えて…私、食器洗いの途中だったので用事なら出来るだけ早くお願いしますよ」
「そ…そんなの他の召使いに任せて!とにかく大切な話だから!」
「はあ…?」
仕事があるというミレルをセイルが無理矢理ひっぱって来ると、既に部屋にはウマルとアルトリアがいて、机の上にはあの手鏡が置かれていた。
「来たな、ミレルや。まあ、座りなさい」
「は…はい…」
ウマルの表情や口調から、いつもとは違う雰囲気を感じ取ったミレルは、言われた通りウマルの正面に座った。
ウマルは言う。
「ミレルや、これからお前に一つの事実を知らせねばならん。それはお前にとっては大変な衝撃を与えるかも知れんし、またそれによってお前は酷く狼狽するかも知れん…。しかしお前はその事実を知らねばならんし、また知る義務がある」
「な…何なんですか?大旦那様まで、そんな勿体ぶって…何か怖いです。早く言ってください」
本題に入りそうだったのでアルトリアとセイルは気を利かせて退室を申し出た。
「では私は席を外していますね」
「あ、じゃ…じゃあ僕も…」
だがウマルは言った。
「いや…それには及ばんぞ、セイル。これはお前にも関係のある話じゃ。それにアルトリアさんにも、出来れば知っておいてもらいたいんじゃよ…」
「僕にも…?」
「…解りました、ウマル殿。それでは同席させていただきましょう」
「うむ…それでは話すとしようかのう。今から十数年も昔の話じゃ…」
そう言って、ウマルは語り始めた…。



十数年前、その頃、後宮に王の寵愛を一身に受けていた一人の側室がいた。
名をシャハーンと言い、父は下級貴族と身分は低かったが、美しく、それでいて気取った所の無い心の優しい女性で、女官達からも好かれていた。
王も彼女の飾らない素直な気性が気に入り、足繁く彼女の寝室へ通い、その甲斐あって彼女はめでたく王の子を身ごもった。
しかし、これが面白くない者達がいた。
シャハーンに嫉妬心を抱いた正室シェヘラザードと、シャハーンの実家が宮廷内で力を持つ事を恐れたヤヴズ・セム宰相である。
そして二人は共謀してシャハーンを暗殺した。
出産時に自分達の息のかかった御典医を送り込み、薬と称して毒を与えて殺すという卑劣な手段であった。
王は王妃と宰相が犯人ではないかと大方の目星は付けていたが、取り調べて罰を与えるだけの力は彼には無かった。
だが、ここで一つの奇跡が起きた。
シャハーンのお腹の中の子は生きていたのだ。
幸いにして王妃と宰相には気付かれる事無く、母親の死後、その腹を切り裂いて取り上げられたこの子を、王は何とかして助けたいと考えた。
そこで当時もっとも信頼していた側仕えの武官であり、イルシャ王国一の剣士として名を馳せていたウマルに託す事にした。
ちょうど彼の孫セイルの乳母をしていた女性の実子が幼くして病で命を落としてしまったばかりだった事もあり、ウマルは託された子をその乳母の子という事にして育てようと考えた…それがミレルである。



「そ…そんな……私が…国王様の庶子だったなんて…そんな…」
話を聞いたミレルは、戸惑いを隠せないといった様子で、見るからに狼狽えていた。
いきなり「お前は王の子だ」と言われただけでなく、実の母親が毒殺されたという…本人的にも相当なショックに違いない。
「ミレル…」
セイルは彼女に何か言葉を掛けようと思うが、何と言えば良いのか解らなかった。
ウマルは言う。
「“庶子”という言い方は少し違う…。国王陛下とシャハーン様の子としてのお前は、産まれる前に母親もろとも死んだ…という事になっていて、存在すらしていないのじゃからのう…」

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