PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 152
 154
の最後へ

剣の主 154

バムと、その隣の牢に入っているブムは、鉄格子の前に腰を下ろして言った。
「…まあ、そんな事はもはやどうでもいいけどな…」
「そういう事、僕らに待っているのは死刑台なんだな。ジェムは邪魔者と見定めた者に対しては身内だろうが何だろうが容赦なく排除する。それは父上で証明済みだしな…」
アリーは言う。
「僕も恐らくあなた方と同じ運命を辿るでしょう」
「いいや、そうはならないんじゃないかな。ジェムはお前を気に入ってるようなんだな。お前のその頭脳をな…」
「ブヒヒヒ…気を付けた方が良いんだな。僕らは幼い頃からあいつを知ってるが、あいつは“ホンモノ”だからなぁ〜」
「本物?本物の大人物という事か?」
「ば〜か、本物の●チガイだって言ったんだな。あいつは冗談抜きでヤバイ…お前もあいつの下で働くなら、その事を良〜く覚えておく事だな」
「そうなのか…しかし僕はジェムの下で人殺しに関わるぐらいなら死を選ぶ。だからその忠告は無意味だよ」
「ブッヒッヒッヒッヒ〜」
「こいつやっぱ解ってないんだなぁ〜」
「な…何がおかしい!?」
笑う双子にアリーは少しムッとした。
「あのなぁ、ジェムは昔っから欲しいと思った物は必ず手に入れないと気が済まないヤツだったんだな。そのジェムにお前は目を付けられたんだな」
「ジェムは必ずお前を手に入れるんだな。どんな手を使ってもな…必ず、絶対、100%、断言する。お前は一週間後、ジェムの臣下になる事を誓うんだな」
「ば…馬鹿馬鹿しい!僕の決意は固いんだ」
「ブヒヒヒヒヒ!笑わせるな。お前ごときの決意なんて、ジェムの異常な執念の前にはゴミクズなんだな。あのクルアーン・セイルってやつ共々、いずれジェムの前に膝を屈するんだな〜」
なぜかセイルの名前が出た事にアリーは驚いた。
「セイルだって!?ジェムはセイルも自分の部下に引き入れようとしているのか?」
「ブヒヒ…牢獄にいるとな、色んな情報が耳に入って来るんだな」
「そうそう、獄卒のヤツラ、どうせ死刑だと思って僕らの前で気にせずベラベラ喋りやがるからな〜」
「……」
自分だけでなくジェムがセイルも狙ってるという事実にアリーは訳がわからず黙ってしまう。
今回のクーデター鎮圧でセイルは功績を上げたが、元々気が優しく嘘がつけない性格で人によっては愚鈍と思われるセイルをジェムが欲するとアリーは思えなかった。
双子たちはセイルを馬鹿にしつつも、ジェムが彼を欲する理由を話す。
「ブヒヒヒヒヒ!あのセイルって奴は凄い力を得てるらしいんだな〜」
「そうなんだな〜現にクーデター鎮圧時に城門を破壊したのはあいつだからな〜ジェムは何かを知ってるみたいなんだな〜」
双子たちの話でセイルに何か特殊な力がある事をアリーも気付く。
「確かに…あの頑丈な城門の門扉を破壊なんて、普通では不可能だ…」
そして、話しつかれた双子は横になった。
「ふう〜少し疲れたんだな〜」
「じゃあ、夕飯まで時間があるから昼寝するんだな〜」
アリーはつぶやく。
「セイル…お前は一体何者なんだ…?」



それから数日後、セイル達の元へ祖父ウマルと母ヤスミーンが戻って来た。
もちろんナシートも一緒だ。
「セイルちゃあぁ〜ん!!無事で良かったあぁ〜!!」
「セイル〜!!会いたかったよぉ〜!!」
ヤスミーンとナシートは出迎えたセイルの姿を見た途端に飛び付いた。
「か…母様もナシートも、元気そうで良かったよ」
ウマルも心なしか頬を紅潮させて嬉しそうに言う。
「セイル、お前の活躍は風の噂で聞いたぞ。大層な働きをしたそうじゃな」
「はい!…あ、そうだ。お祖父様、実はちょっとお聞きしたい事がありまして…」
「ほう、何じゃね?」
「いえ、この場ではちょっと話しづらい事です。出来れば二人きりで…」
「はて?…解った。話を聞こう」

…という訳でセイルは夕食後、ウマルの部屋を訪れた。
「実は…お祖父様はご存知ないと思いますが、国王陛下がお亡くなりになられました…」
「な…何じゃとぉ!?陛下が!?」
それを聞いたウマルは目を見開いて驚いた。
かつて仕えた君主が死んだと聞かされれば当然である。
「セイル!冗談も大概にせんか!田舎に居たワシらはおろか、王都の連中ですらそんな話いっさい聞いておらんぞ!」
そう、ジェムとジャミーラ王妃は国王の死を未だに公表していなかった。
宮廷内には厳しい箝口令が敷かれ、国王が既に死んでいるという事実を現時点で把握しているのは、宮臣達の中でもジェムの派閥に属するほんの一握りの者達のみである。
王族ですら国王は未だに生きていると信じている程だ。
セイルは言った。
「これは事実です!今、宮廷を牛耳っている大執政ヤヴズ・ジェムと第13王妃ジャミーラが陛下の死を世間に対して伏せているんです!二人は陛下の死に立ち会った人間を皆殺しにしてまで真実を隠そうとしているんですよ!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す