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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 153

しかし、ジェムの甘い言葉をアリーはきっぱりと断る。
「あなたみたいな悪党に使われる何て真っ平ごめんです。それに銃火器は東大陸の平和を破壊する悪魔の兵器、今回の事件で僕はそれを知りました」
更に銃火器の破壊力による危険性をアリーはジェムに説明する。

「フッ…やはりな。君はそう言うと思っていた」
ジェムは兵士達に命じた。
「暫く地下牢へ入れて頭を冷やさせてやれ!」
「はっ!来い」
兵士達はアリーの縄を引いて連行していく。
去り際、アリーはジェムに向かって叫んだ。
「クソォ!!!ひと思いに殺せぇ!!!これ以上人を殺す事に加担する事になるなら僕は死んだ方がマシだぁ!!!」
「フフフ…一週間後にまた話を聞こう。その時、君はきっと僕の誘いを受けてくれるはずだよ…」
引き立てられていくアリーに、ジェムは意味深な言葉を残した…。

そしてアリーは地下牢へと放り込まれた。
兵士達の隊長が説明する。
「今日から一週間、ここが貴様の塒(ねぐら)だ。食事は一日二回。一週間後、ジェム様と再び相対した時、忠誠と服従を誓えばお前は釈放、逆に拒めばそのまま死刑台行きだ」
「望む所だ!僕は多くの人の命を奪った…今さら死を恐れたりするものか」
「その強がり…いつまで持つか見物だな」
兵士達は去って行った。

「ジェムといい、一体何だって言うんだ…たった一週間かそこら牢に入れられたぐらいで心変わりするかよ…」
アリーが独り言を言っていると、隣の牢から声が聞こえて来た。
「ブッヒッヒッヒッヒ…こいつぁ驚きなんだな…」
「…っ!!?」
「まったくなんだな…一体今までどこに隠れていたのか知らないが、とうとうお前も捕まっちまったみたいだな…」
「あ…あんた達は…!!」
聞き覚えのある声…その豚のような笑い方と語尾…忘れるはずが無い。
アリーは驚いて格子に駆け寄って叫んだ。
「ヤヴズ・バム!!!ヤヴズ・ブム!!!」
「「ブッヒッヒッヒッヒ〜♪」」
「驚いたな…捕らわれたとは聞いていたが、まだ生きていたとは…」
「ほれ、この通り足もあるんだな〜」
「久しぶりなんだな。我らが同志ザッバーフ・アリーよ」
「同志だと…!?ふざけるな!あんた達がもっと真剣にこの国の未来を見据えて行動してさえいれば…………いや、もうよそう。済んだ事だ。言うだけ虚しくなる…」
「ブヒヒ…ま、そう熱くなるなよ。僕らもこんな事になって色々と考えさせられたんだな」
「うんうん…今ではお前が言ってた事も理解できるんだな」
憑き物が取れた様に話すバムとブムの落ち着いた態度にアリーは別人をみてるように驚く。
「俗物と愚物の象徴であった貴方達から…そんな殊勝な言葉が出るとは意外ですね」
「まあ、ジェムに完膚なきまでに敗れ牢屋にいれられたら考えも少しは変わる物なんだな」
「それに今更だが、無実の罪で陥れられた父上の仇討ちが成功してからはやる気が起きず。後は権力を握って贅沢三昧だけなんだな」
自分たちの失敗を冷静に分析するバムとブムにアリーは権力を維持することの難しさを語る。
そして、イルシャ王国建国者であるルーナの
「権力を握ったら。王はそれを維持するには内外に成果をみせないと駄目なんですよ。そうでないと臣下や民は王を見捨てます。あの国祖イルシャ・ルーナ様も卑賎な娼婦の身でありながら。聖剣の勇者として立ち上がり腐敗しきった旧王国と幾多の戦いを制して、イルシャ王国を建国したのが良い例です」
「正論なんだな。そういえば、ルーナ様の素性は元々卑賎の身だったんだな…おっとルーナ様の素性は最大のタブーなんだな」

イルシャ王国建国の母イルシャ・ルーナ女王は、聖剣の勇者となる前は“踊り子”であった。
踊り子とは、即ち売春婦である。
イルシャ王国ではこの話題に公然と触れる事は一種の禁忌とされている。
イルシャ人全ての誇りであり、心の拠り所であるイルシャ・ルーナ女王が、よりにもよってこの世で最も卑しいとされる職業であったという事実は、彼女の子孫である王族はもちろん、イルシャ人である事を誇りとする貴族や士族にとっても、受け入れがたい事なのであった。
一方、庶民達は真逆で、元娼婦の女傑に対して、忌避する所か親しみの情すら抱いていた。
男達など酒場に集まれば「俺があの時代(イルシャ建国期)に生きてたらルーナ様を買っていたのに!」という不敬罪モノの常套句を楽しげに口にする始末。
その形は真逆なれど、イルシャ人は身分を問わず、皆イルシャ・ルーナを誇りに思い、親しみ、愛している事だけは確かであった。

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