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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 152

「おっしゃる通りです、ジェム様。我がイルシャ王国こそが、世界に唯一絶対にして神聖なる国家…」
「そうだ!その通りなのだ!いや、そうでなくてはならんのだ!…ゼノン帝国など、西大陸で最大と言っても所詮は未開地の小国に過ぎない。いずれ我が国を侮った報いを受けさせてやらねばな…」
この時からジェムはゼノン帝国に対して絶対的な不信感を抱くようになる。
イルシャ人の西大陸諸国への蔑視は既存の価値観だが(彼らは決して傲慢な気性ではないのだが、多文化・他民族に対しては概ね軽視する傾向にあり、一方、自国・自民族に対しては異常な肯定観・全能観を有していた。まあイルシャ王国の文化の高さと周辺国との落差から考えれば、そういう価値観を持つに至るのも無理は無かった。さらに言えば、国内のみで成立可能な巨大な経済圏と複雑な社会を有し、良くも悪くも自己完結してしまっているイルシャ王国は、自分達のテリトリーの外側に対して、あまり関心が無かったのである)この事が原因でイルシャ王国は後々大変な事態に見舞われるのだが、それはもう少し先の話…。




アリーはクーデター以降、少しの間セイル達と行動を共にしていたが、今は身分を偽って王都内の安下宿に一室を得て寝起きしていた。
(はぁ…ジェムの新政権は今は地盤固めに必死で、僕みたいな一犯罪者に構っている余裕は無いと見える…これは好都合だ。とりあえず平民のフリをして日雇いの仕事でもしながらほとぼりが冷めるのを待つとするか…)
“騎士の魂”である剣は質に入れ、当面の生活費に変えた。
彼はそういう物質的な物に精神性を見出すという事はあまりしなかったし、とりあえずは今後どうやって生きていくかを考える事で精一杯だった。
そこへ、ノックの音がした。
「失礼、王宮で料理番をしていたパサンさんのお宅はこちらですか?」
「は…はい!」
アリーはまだ惰性で“パサン”と名乗り続けていた(パサン本人には少し悪い気がしたが…)。
しかし今の自分に来客など滅多に無いはずだが…アリーは少し嫌な予感がしたが、応じなければ怪しまれると考え、扉を開けた…。

…予感は的中した。
そこにいたのは武装した兵士達だった。
「ザッバーフ・アリー!国家反逆罪で逮捕する!」
「しまったぁ…!!」


捕らわれたアリーは両手と首に縄を掛けられ、王宮へと引き立てられた。
本殿に連れて来られ、一体どういうつもりかと思っているとジェムが現れた。
「フフン…“王様の料理番・パサン”か…あまり笑えない冗談だ。久し振りだね、アリー君。元気だったかな?」
「ヤヴズ・ジェム…僕達はあなたにすっかり踊らされてしまったようですね。あなたは計画通り、この国の頂点に立ち、あとは僕を始末して全てが終わりという訳だ…」
「おいおい、勘違いしてくれるな。僕は君を殺すつもりなんて無いよ」
「え…?」
「僕はこの国を新しく生まれ変わらせる…その手伝いを君にして欲しいと思ってるんだ。イルシャ王国の現状を正しく認識し、銃という新兵器に目を付けた…君は失うには惜しい人材だ。ぜひ力を貸してもらいたい」
「具体的には…?」
「単刀直入に言うと、兵器開発だ。王宮の一角に君のための研究室を設けてやる。必要ならば助手も何人でも付ける。そこで君は兵器の研究をしてもらいたい。より効率的により多くの人間を殺す兵器をね」
銃火器の開発に協力しろと言うジェムの申し出に罪人として裁かれると思っていたアリーは少し呆気に取られたが、直ぐ我に返ったアリーはジェムの意図や目的にを気付く。
「・・・・・・・つまり、銃火器を大量生産させてイルシャ王国軍の軍備を増強させ、国内の反乱分子や外敵。特に西の大国ゼノン帝国への備えを行う為だな。あわよくばゼノンを攻め込む・・・」
自分の目的を見事に言い当てたアリーをジェムはパチパチと拍手する。
そして、さり気無くセイルを愚鈍な小心者と嫌味にディスっていた。
「実に見事だ。アリーくん、エクセレントだよ。流石は王立学士院を首席で入学しただけの事はあるね〜あの愚鈍で小心者のセイルくんの親友とは思えないね〜」
「セイルを悪く言わないで貰いたい。確かにあいつはへたれで鈍感で気弱で情けない奴ですが、根は真っ直ぐで良い奴だ」
親友を侮辱され思わずアリーはカッとなる。
失言だったとジェムは言うが、どう見ても反省の色は全くなくアリーの勧誘を勧める。
「すまない、少し軽率だったよ。因みに勿論僕に従うよね〜この話は君にとって悪くない。何しろ晴れて無罪放免で官職も得られて、ご実家の兄上夫妻も喜ぶよ」

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