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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 149

「う…おえぇぇ〜っ!!!?」
案の定、セイルは胃痙攣を起こして“リバース”してしまった。
「ぼ…坊ちゃま!?大丈夫ですかぁ!?」
「うぅ…ご…ごめん…」

そんな事もあったが、食事を終えると、なんだか体に力が戻って来たような気がしたセイルであった。

そして三人は荷物をまとめ、長らく滞在した宿を出て与えられた屋敷へと向かった。
途中、セイルは溜め息を吐いた。
「はぁ…」
アルトリアは尋ねる。
「どうなさいました、セイル様?浮かない顔をして…」
「新居は嬉しいけど、あのジェムに貰った家だと思うと複雑でね…しかも曰く付きの旧ヤヴズ邸だよ」
「気にする事はありませんよ。あなたは功績を上げた。その恩賞の一つとして屋敷を得たのです」
「そうです!誰に気兼ねする事も無く堂々と住めば良いじゃないですか!」
ミレルも言った。
「僕の憂鬱の原因はそこじゃないよ。このままじゃ僕はジェムにどんどん恩を売られて、なし崩し的に彼の臣下になってしまうんじゃないか…なんて思ってね…」
ジェムの部下になることを恐れ憂鬱なセイルだが、アルトリアはジェムの操られないように自分がしっかりと補佐する事をセイルに誓う。
ミレルもアルトリアの補佐ならば、セイルは大丈夫だろうと納得する。
「なるほど、ありえますね〜でも、そうならない様に私がしっかりとセイル様の手綱を持って補佐しますよ!」
「アルトリアさんの補佐なら坊ちゃまでも、何とかなりますね」
アルトリアの言いなりにされる気がしたセイルであったが、アルトリアがいなければ非力な自分を理解してるので何もいえず礼を言った。
「(何か…アルトリアに調教されるような気がする・・・)ありがとうアルトリア…」
本当にこんな小心で勇者としてジェムの野望を挫き国を救えるのであろうか?


「で…でか……」
旧ヤヴズ・ワム邸を見たセイルの最初の感想はそれであった。
屋敷は王宮(本殿)に匹敵する大きさと豪華さだ。
隣でミレルとアルトリアも話し合っている。
「わぁ…すっごい維持費かかりそう…」
「ええ、庭園も相当な物です。これはセイル様とオルハン殿の俸給を合わせても厳しそうですね」
「ね〜、これは早いとこ新しいお屋敷を見付けるか建てるかしないとクルアーン家は破産ですよ」
「お…お前ら!これを見た感想がそれかよ!もうちょっと何か無いのぉ!?」
あまりに現実的な会話にセイルは思わず突っ込む。
ミレルは言った。
「いやあ、やっぱり家格に応じた敷地面積という物があるんですよ…それはそうと私、坊ちゃまが昏睡中に大旦那様にお手紙を書いておきましたから、そろそろ王都に戻って来るはずですよ。奥様とナシートちゃんも一緒に…」
「本当かいミレル!」
「良かったですねセイル様。ヤスミーン殿やあの羽虫、セイル様の手柄を知ったらきっと喜びますよ」
「うん!てゆーかアルトリア、ナシートの事を“羽虫”って言うなって…」
「これであと連絡が取れていないのはオルハン殿だけですが…」
「ほ〜んと旦那様どこで何してるのかしら…もしかしたら革命騒ぎのドサクサで死…」
「ミレル殿!…セイル様の前です。不穏当な発言は謹んだ方がよろしいかと…」
「ハッ!…ご…ごめんなさい…でも今回の一連の騒動では王宮務めの方々に数多くの犠牲が…」
「…いや…良いんだよ…僕らも積極的に探した訳じゃないけど、今日に至るまで全く消息不明という事は…父様は…もしかしたら…もう…」
「セイル様…なんか無意識の内に“そういう方向”に持って行こうとしてません?」
「え!!?そ…そんな事無いよ!!?」
誤解を与えないために言っておくがセイルは決して薄情な人間ではない…が、彼にとって父オルハンは恐怖と支配の対象であり、さらに家庭にとって“居てくれないと困る”という存在でもなかった。
自然、消極的になる訳だ。


さて、そのオルハンだが、もちろん生きていた。
ここは王都の一角、平民居住区。
その家はイルシャ王国の(さらに言うと王都イルシャ=マディーナの)一般的な平民の家屋にしては大きめで造りも良かった。
そこにオルハンはいた。
「…グビ…グビ…グビ…プハァ!もう一杯」
「もう…あなた、飲み過ぎよぉ…」
まるで注ぎ込むように酒を飲み干すオルハンの傍らには、酒の入った水差しを持った美女が寄り添っている。
「これが飲まずにいられるか。まぁ〜たこの国のボスが変わったんだ。取り入るにはまた賄賂をたっぷり贈らねばならん。まったく、政情不安のせいでえらい出費だよ。デブ双子に貢いだ金も無駄になったしな」
「大変ねぇ…でもあなたが私に貢いでくれたお金は決して無駄にはならないわよ。私はあなた一筋なんだから…」
「ウズマ…くうぅ〜、嬉しい事を言う。俺の事を想ってくれるのはやはりお前だけだ。あのバカ妻子の元になんて帰りたくない。俺はお前とずっと一緒にいたいよ」
「聞いたわよ。死んだと思ってた息子、生きてたんですって?」
「ああ、妻もだ。セイルのやつは王宮奪還の際に手柄を上げて、後日あのヤヴズの小倅(ジェム)に呼び出されて褒美を与えられたそうだ。それで俺もヤツラが生きてた事を知ったんだ」

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