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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 146

「セイル坊ちゃま、おめでとうございます。大旦那様や旦那様や奥様が知ったら大喜びなさりますよ」
服の乱れを直したミレルはセイルの手柄を立て屋敷を貰ったと聞き自分の事の様に無邪気に喜ぶ。
しかし、セイルは浮かない顔であった。
新居を得たのはセイル個人も嬉しかったが、送り主はジェムであり、父オルハンや母ヤスミーンと再び一緒に暮らすと気が重くなる。
セイルとしては安宿でも、気の置けないアルトリアやミレルと暮らす方が気がセイルには楽しかった。
「ありがとうミレル・・・」
そう言うとセイルは一瞬フラついたかと思うとそのままぶっ倒れた。
「…おっと危ない!」
床に頭をぶつける前にアルトリアが彼の服を掴んで受け止める。
「ぼ…坊ちゃま!!?どうなさったんですか!?」
「心配いりません。眠っただけですよ」
慌てるミレルにアルトリアは言った。
セイルを見ると確かにスゥ…スゥ…と寝息を立てている。
彼がシャリーヤとの戦いで受けたダメージは、常人なら数週間はまともに動く事も出来ない程の物だった。
それを聖剣の力があったとはいえ直後から動き回っていたのだ。
その負荷は相当な物であった。
安全な宿まで戻って来た事で安心したのか、それとも聖剣の加護(というべきかどうかは判らないが…)が切れたのか、セイルはついに限界に達して意識を失ったのだ。
ミレルはアルトリアに尋ねた。
「あの…お二人は一体お城で何をなさっておいでだったのですか?良く見たらセイル様の服は所々破れてますし…」
「まあ、話せば長くなるのですがね…」
そう言って、アルトリアは城で王太子と出会った出来事等を話す。
ただし、ミレルがアフメト王の娘である事や自分の正体に関する事は伏せておいた。
この話は非常に難しく最悪ジェムの耳に届けばミレルは人質にされる可能性があるからである。

セイルがボロボロになって突然帰った理由をミレル知り驚く。
「それじゃあ、セイル様は王太子様をお助けする為にジェム様と戦ったのですね」
「ええ…ですが、奴等の方が一枚上手でしたよ。これでこの国はジェムの物になったような物です。ミレル殿、セイル様をこのような目にあわせて申し訳ありません!」
ジェムの狡猾さに悔しがるアルトリアはセイルを傷だらけにさせた事をミレルに謝罪する。
しかし、話を聞いた納得したミレルはアルトリアを責めず、寧ろセイルを無事に連れて帰ったアルトリアに礼を言う。
「アルトリアさん、礼を言うのは私です。坊ちゃまを無事に連れて帰って来てくれてありがとうございます。あんなにひ弱で泣き虫でいじめっ子に泣かされてた坊ちゃまが、今では立派に国のために働ける騎士になれたんですから、これも全てアルトリアさんのお陰です」
「いえいえ、全てはセイル様のご努力の賜物ですよ…私は少し手伝ったに過ぎません」
ミレルに礼を言われ謙遜するアルトリアは内心ホッとしていた。
理由はどうあれセイルをボロボロにさせたから、ミレルに責められると思ったからである。
基本的にミレルは穏和な性格であるが、人一倍セイルの事を心配してるからアルトリアは覚悟していた。

「所で、坊ちゃまは何時目覚めるのでしょうか?」
「この分だと恐らく。朝までは起きませんね」


その頃…
「なに?地下通路を通ってアルシャッドを寝室まで連れて来たのはセイル君達だったのか…」
「はい、ジェム様…」
ジェムはシャリーヤからの報告を受けていた。
「…私はセイル殿を倒した時点で引き返しました。申し訳ありません。まさか王太子とアルトリア殿がゴーレム兵を突破するとは思っておりませんでしたので…」
「フッ…まったく、いきなり壁から王太子が現れた時は驚いた。まあ良い。結果オーライだ。それにしても…ククク…まさか今度もまたセイル君が絡んでいたとはねぇ…フフ…フフフ…フハハハハハハハハハハハ…ッ!!!」
突然おかしそうに笑い出したジェムにシャリーヤは尋ねる。
「ジェム様、よもや怒りで気でも違われましたか?」
「いやいやいや…そんな事は無いよ。むしろ僕はね、嬉しいんだ。クルアーン・セイル…彼は実に予想外な事ばかりやらかしてくれる。何もかも思い通りになる僕の退屈な人生の中で、彼は唯一僕をゾクゾクさせてくれる存在なんだ。あぁ…僕はますます彼を手に入れたくなったぞ…どんな事をしてでもね…ウフフフフフ…」
そう言ってほくそ笑むジェムの瞳には、異常な光が宿っていた…。

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