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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 144

「それですね。その言葉をジェムは自分に最大限都合良く、自分は国王から直々に国を任されたと解釈したのでしょう」
「酷い!!何でも有りか!?」
叫ぶセイルに国王は尋ねた。
「…さっきから話を聞いていると、君は宮廷人にしては珍しく純粋な心の持ち主のようだ。最期に聞かせてくれないか?君の名を…」
「あぁ…僕は宮仕えじゃありません。衛士第三中隊のクルアーン・セイルと申します」
アルトリアが補足する。
「王よ、セイル様は国祖イルシャ・ルーナ女王に次ぐ二人目の聖剣の勇者であらせられます。そして私は聖剣の精霊アルトリアです」
「なに…!?」
それを聞いた国王は目を見開いてセイルを見た。
セイルはアルトリアにツッコむ。
「お前!なに普通に正体バラしてんだよ!?」
「この人はもうすぐ死ぬから大丈夫ですよ」
「バカ!もうすぐ死ぬ人の前でもうすぐ死ぬとか言うなよ〜!」
もうすぐ死ぬ国王はセイルに尋ねた。
「クルアーン…という事は、君はもしや、あのクルアーン・ウマルの孫か…!?」
「は…はい、そうですが…」
(てゆうか前にも一回会ってるんですけど…)
セイルは心の中でツッコむが、それについては言及しないでおく事にした。
「それで…その、君が…二代目の聖剣の勇者なの?」
「ええ、どうもそうらしいです…」
セイルは頷く。
「そうか…そういう事なのか…」
国王は何かに納得したように頷くと、アルトリアに向かって厳かな口調で言った。
「アルトリア様…」
(アルトリア…様!?)
セイルは驚く。
(なに!?聖剣の精霊って王様から“様”付けで呼ばれるような存在なの!?)
「…アルトリア様、国祖イルシャ・ルーナ女王陛下の聖廟を盗掘され、あなた様の依り代(よりしろ)である聖剣を紛失した事…我がイルシャ王家史上最大の失態でした。歴代国王を代表して深くお詫び申し上げます…」
アルトリアは答えた。
「いや、構わぬ…」
(構わぬ!?)← ※セイル
「…あの時代は国内が乱れ、聖廟の警備にまで兵を回す余裕が無かったからな。それよりも良く戦乱を乗り切って王家と国を存続させてくれた。ルーナ様もそれを喜んでおられる。それに、盗難という形であれ外に持ち出されたからこそ、私はこうしてセイル様と出会う事が出来たのだ」
「そうでしたか、それは良かった…。それで、あなた様が今こうして復活され、二代目の聖剣の勇者をお選びになったという事は、もしやあの伝説の邪神が蘇る時が近付いているという事ですか?」
「そうだ…」
(伝説の邪神?何だそれ?そんな話聞いた事無いぞ?)
セイルは首を傾げる。
イルシャ・ルーナの伝説は絵本や芝居などで幼い頃から慣れ親しんで来たが“邪神”なる物が出て来る話は聞いた事が無かった。
国王は言う。
「そうでしたか…。あの邪神に関する伝説も他の説話同様、単なるお伽話かと思っておりましたが、まさか真実だったとは…。そう言えば、西方ではダモクレスの聖剣の勇者が現れたと聞きましたが…」
「うむ、その話は私も聞いた。カシウスの聖剣の勇者だけはまだ見つかっていないようだが、それも時間の問題だろうな…」
「…このような非常時に我がイルシャ王国はこのような有り様で…実に情け無い事です。責任は現王である私にあります。本当に申し訳ありません…」
「気にするな。国の助けは端から宛てにはしていなかった。西の方も戦乱続きだという。そもそも世の乱れその物があの邪神の復活が近い証拠なのだ。お前一人の責任ではない」
「しかし…それでも…私は己が情け無い…私がもう少ししっかりしてさえいれば…」
「……」
「……」
アルトリアもセイルも何も言う事が出来なかった。
「あぁ…もう目が霞んで来た。いよいよ最期のようだ…そうだ、君…確かセイルと言ったか…」
不意に国王はセイルの方を見て言った。
「は…はい!何でしょう陛下?(てゆうか僕は呼び捨てなんだなぁ…)」
「思い出したのだ。頼みがある。ウマルの家に、君と同年代の娘が居るはずだ…」
「同年代の娘?…ミレルの事ですか?」
「そうか…ミレルというのだな…」
「ど…どうして国王陛下が彼女の事を知ってるんですか…?」
だが国王はその質問に答える事無く言った。
「頼みというのはね…この部屋の隅にタンスがあるだろう…その一番下の引き出しの中にある物をミレルに渡して欲しい…」
「わ…解りました!事情が全く解りませんが、必ず渡します!」
「頼んだよ…この遺言を託しておいた神官はジェムに殺されてしまったから…だが君達が来てくれて良かった…」
そして国王は右手を差し出し、セイルの目を真っ直ぐに見据えて言った。
「セイルよ…この国を……頼ん…だ…………」
「陛下!国王陛下!!」
セイルは王の手を握り返し、何度も王を呼んだ。
しかし、その呼び掛けに対する王の答えは、もう無かった。

こうして、イルシャ王国国王アフメト4世はその生涯に幕を下ろしたのであった…。


「さてセイル様、さっそくタンスの中身をいただいてずらかりましょう。こんな所に長居は無用です」
「あ…うん…(こいつドライだよなぁ…)」
王に言われた通り、タンスの引き出しを開けてみると、中から一枚の手鏡が出て来た。
「凄い!純金製で宝石が散りばめられてる…これは値打ち物だよ」
「セイル様、ネコババしようなんて考えちゃダメですよ」
「そんな事する度胸ねーよ!…でもどうして陛下はミレルにこれを…?」
ミレルはセイルの乳母の娘…もちろん平民である。
二人の間に接点があるとは到底思えないのだが…。
「まぁ、普通に考えて一番可能性が高いのは、ミレル殿が王の庶子…つまり隠し子という事ですね」
「ええぇぇ〜っ!!?ミ…ミ…ミレルが…お姫様ぁ!?」

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