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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 143

父に会いたい一心で(セイルとアルトリアの協力もあって)ここまで来たアルシャッドであったが、いとも呆気なく引き離されてしまったのだった。
ジェムは気を取り直して再び国王に話し掛ける。
「陛下、今のは集団幻覚でございます!」
「もう良いのよ」
ジャミーラが言った。
「今、息を引き取られたわ…」
「……」
国王は眠るように目を閉じていた。
「何という事だ…」
ジェムはガックリと肩を落とした。
結局最期まで国王に『次期国王はファード』と言わせる事は出来なかったのだ。
そんな彼にジャミーラは言う。
「ジェム、あなたの必死さは実に見苦しかったわよ。滑稽な程にね…」
「…そう言うあなたこそ何故そんなに平静で居られるのですか叔母上?これでファード王子を国王にする事は著しく困難になりましたよ」
「そうでもないでしょう…」
ジャミーラは医師や神官達の方に目をやった。
「なるほど、確かに…」
ジェムもすぐに納得する。
「あ…あなた方!まさか私達を買収するおつもりか!?」
「買収?笑わせるな。誰がそんな面倒な事をするものか…おーい!!衛兵ぇー!!」
そのジェムの言葉に銃を持った兵士達が再びドカドカと寝室に入って来た。
ジェムは医師達や神官達の方を指差して兵士達に命じる。
「殺れ」
「はっ!撃てぇー!」

ズダダダダダァーンッ!!!!

瞬時に寝室の一方の壁に無数の穴が開き、大量の血糊が飛び散った。
蜂の巣にされた医師と助手達、神官長と神官達は皆『信じられない!』という表情のまま全身に開いた風穴から血を噴き出させて倒れた。
「びえぇぇっ!!!!」
ジャミーラの腕の中のファード王子は泣き出した。
「ジェム!こういう荒っぽい事は私達の居ない所でやりなさい!ファードが怯えるじゃないの!」
怒るジャミーラにジェムは頭を下げ、ついで兵士達に命じた。
「申し訳ございません叔母上。…お前達、死体を片付けろ」
「はっ!…おい、片付けだ」
「「「はっ!」」」
兵士達はただちに作業にかかった。
ジェムはジャミーラに歩み寄る。
「しかし叔母上には恐れ入りました」
「あなたも切れ者かと思っていたけれど、まだまだ若いわね。これくらいの機転が利かないようでは宮廷では生き残れないわよ」
「いやぁ、叔母上には適いませんなぁ…ハッハッハッ!」
「オーッホッホッホッ!」
「ば〜ぶ〜♪」
「おぉ!ファード王子もお喜びのご様子だ…いや“ファード国王陛下”とお呼びすべきかな?」
「まだ少し気が早いわよ。ファードを即位させる前にやらなければならない事が山ほどあるわ。まずは重臣達の懐柔よ…」
そんな事を話ながら、ジェムとジャミーラは寝室を後にした。
国王の亡骸に見向きもしないまま…。

やがて兵士達も死体の片付けを終えると寝室から出て行った。
そして誰もいなくなった。


「…誰もいなくなりましたね…」
「う…うん…」
無人になった寝室に話し声。
アルシャッドが出て来た壁の穴から二人が姿を現した。
セイルとアルトリアだ。
実はずっと隠れて事の成り行きを見ていたのだ。
「ジェムとジャミーラ王妃…ファード王子を王にするために国王陛下の最期に立ち会った人を皆殺しにするなんて…信じられない!人間っていくら目的のためだからってこんなに簡単に人を殺す物なの!?」
「ええ、そうですね」
即答するアルトリア。
だがセイルもめげない。
「だいたい王太子殿下が取り押さえられた時、飛び出そうとした僕を君が押しとどめさえしなければ…!」
「セイル様が飛び出した所で多勢に無勢…すぐに捕らわれて終わりでしたよ」
「聖剣の力で肉体強化された状態なら…!」
「そんな事をしたら体中の筋肉が引き裂け、骨は砕け、内臓は破裂するでしょうね。セイル様は気付かないかも知れませんが、あなたの肉体は今こうして立っているだけでも奇跡と言って良いほどの状態なのですよ」
「え…………僕の体って今そんなに限界ギリギリなんですか?アルトリアさん…」
「痛みや疲労を感じないという事は実は恐ろしい事なのですよ」
さっきから二人の話を黙って聞いていた国王が不意に口を開いた。
「…君たち一体何なんだい?…やっとうるさい連中が出て行ってくれたと思った矢先に現れて…悪いんだけど話がしたいなら出て行ってもらえるかな…」
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
死んだと思っていた国王が喋ったのでセイルは仰天して叫んだ。
「何と!まだ生きておられたのですか王よ」
アルトリアの方が幾分か冷静だった。
「ジェム達がウザかったから死んだフリしてやったのさ。家族にも会わせてもらえないし、最期くらい静かに迎えたい…」
「へ…陛下、どうしてジェムなんかに国を任せたりしたんですか?おかげでヤツはやりたい放題じゃないですか…」
気を取り直したセイルが国王に尋ねる。
「…いや、余はジェムに国を任せた覚えなど無い。他の臣下達と協力して国を頼む…みたいな事は言ったがね」

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