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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 139

サーラの母だけではない。この私の王太子という地位は、数え切れぬ程の人々の血と犠牲の上に維持されて来た物だ。私は大勢の命の上に胡座(あぐら)をかいて座っているんだよ。私が君の立場でも、やはり嫌悪感を抱いただろう…」
「いいえ、殿下…違うんです」
ようやくセイルは口を開いた。
「確かに今の話を聞いても、あなたに対して全く嫌悪感を感じない…と言ったら嘘になるかも知れませんが、僕はあなたに協力します。その代わり約束してください。あなたは何が何でも国王になってください。あなたはサーラさんの騎士学校時代の話を聞いて“本当に良かった”と心から嬉しそうに言っていた。あなたは心の優しい人です。イルシャ王国のような大国の君主には不向きなぐらいに…。でも、だからこそ、あなたのような人にこそ王になってもらいたいんですよ」
「君…」
アルトリアも言う。
「あなたは肉親同士が憎み合い殺し合う事の虚しさも愚かさも知っているのでしょう。ならばそんな馬鹿げた事はあなたの代で終わりにすれば良いのですよ。あなたになら出来るはずです…いや、あなたでなければダメです」
「そうか…今までずっと母上や側近達から『あなたは弱すぎる』とか『もっともっと冷酷にならなければ国王として不適格』と言われ続けて来て、自分でもダメなのだと思い込んでいた。私はこのままで良いんだね?」
アルトリアは答えて言う。
「むしろそのままの心で国をお治めください。…あぁ、ただし軍事と外交だけは専門家に任せた方がよろしいかと…。あなたは決して弱い訳ではありません。むしろ人の心の痛みを知る強いお方だ。今の腐った宮廷には貴重な存在です。その自分を大切になさってください」
「アルトリアの言う通りです!殿下のような優しいお方が国王になってくれたら、この国に暮らす人々の心は今より穏やかになるかも知れません。世の中から争いや憎しみを完全に無くす事なんて不可能です。でも減らす事は出来ると思うし…少なくともそのために努力する事は無駄じゃあないでしょう?」
「そうか…そうだな…解った!約束しよう。私は…優しい王様になるのだ!」
アルシャッドが力強く宣言した…その時、通路の先の光の届かない暗闇の中から声がした。
「残念ですが王太子殿下…あなたの出る幕はもうありません…」
「「「…っ!!?」」」
三人は声の方へ目をやる。
そこに居たのは…
「あっ!いっつもジェムの脇に居る女の子…!」
「シャリーヤです。名前、覚えてください…」
言いながらシャリーヤは腰に下げていた長短二本の三日月刀を抜き、三人に向かって構えた。
「…ここから先は、通しません」
アルトリアは問う。
「…なぜ私達が地下道を通っていると判ったのです?まさかずっとここで門番していた訳でもないでしょう…」
「この地下道には探知魔法が張り巡らされています。ネズミが侵入してもすぐに判るように…」
「く…っ!私とした事が、抜かった…」
「そこをどいてください!でないと…」
セイルは聖剣を抜いて構えた。
「セイル様!戦うのですか?」
「ああ!」
彼は力強く頷いて言う。
「…僕は最近ずっと悩んでいたんだ。自分が剣を振るう理由…命を奪う理由…でもその答えは未だに見つかっていない…でも僕はもうウジウジ悩む事は止めにしたんだ!僕は自分の心が正しいと思う事に素直に従って戦う!そして自分が戦う理由の…その本当の意味は戦いの中で見つけ…」
「フンッ!!!」
セイルの決意表明は最後まで言い切る事が出来なかった。
シャリーヤが二本の曲刀を振りかざして斬りかかって来たからである。

 ガキイィィンッ!!!!

刃と刃が激しく衝突し、火花が飛び散る。
「セリフ最後まで言わせてよぉ!!」
「失礼、長くなりそうだったので…」
三本の剣がカチカチと音を立てる。
「セイル様、私の手助け必要ですか?」
アルトリアに尋ねられ、セイルはシャリーヤと鍔迫り合い(つばぜりあい)しつつ答えた。
「僕は大丈夫!アルトリアは殿下を連れて先へ行ってくれ!」
「解りました。ここはお任せいたします。…では参りましょう、王太子殿」
「う…うん!てゆうか君、彼は“様”付けなのに私は“殿”だよね…」
「そんな瑣末な事を気にする場合ですか!行きますよ!」
自分とセイルの扱いの差に思わず王太子アルシャッドは思わず愚痴をこぼしてしまうが、アルトリアにびしっとどやされる。
「すまん。うぐぅっ!!まっまで。くっ首を引っ張らないでくれえぇぇ!!!!」
アルトリアに首根っこを引っ張られアルシャッド王太子は悲鳴と悶絶を上げながらも、何とか逃げ出した。

一方、シャリーヤと戦っているセイルはというと。

ガキイィィンッ!!!! ガキイィィンッ!!!! ガキイィィンッ!!!!

何とかシャリーヤに喰らい付いてたセイルだが、実際は防戦一方で苦戦していた。

「はあ、はあ、なんて強さ何だ。女の子なのに・・・」
「強さに男も女も関係ありません。しかし、弱いですね。何で貴方みたいなへタレな雑魚が聖剣の勇者に選ばれたのですかね。はっきり言って訳がわかりませんわ?」

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