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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 137

「ありがとう。まさか、こんな所で味方を得るなんて心から礼を言うよ」
国の未来を憂い自分に対して親身に接してくれるセイルに王太子アルシャッドは心から礼を言う。
まさか、時期国王で雲の上の人である王太子アルシャッドから礼を言われセイルは恐縮する。
自分は一臣下として当然の事をしてるのにここまで感謝されるなんてセイルには予想外の事であった。
「王太子殿下、顔を御上げください。私は臣下として当然の事をするだけです。」
「いやいや、まだ君達のような国を憂う者たちがいるだけでも心強い。所で君たちの名前は聞いてなかったね」
アルシャッドに名前を尋ねられ緊張しつつ、セイルは自己紹介する。
「そっそうでした!申し訳ありません。僕はクルアーン・オルハンの一子。クルアーン・セイルです!」
「私は、セイル様の剣のアルトリアです!以後お見知りおきを」
三人は行動を開始した。

話によるとアルシャッドは国王の寝室の場所は把握しているという。
「…ただ、その部屋に至るまでの廊下は全て衛兵達によって厳重に警備されていて、ジェムの許可の無い者は蟻の子一匹通さぬそうだ。勝手知ったる王宮ゆえ、私もここまでは見つからずに来られたのだが…」
「…となれば強行突破しかありませんね!」
意気込むセイルにアルトリアは冷静に一言。
「まあ無理でしょう」
「そ…そんな事言うなよ、お前…」
「まあまあ…寝室に行く方法なら他にもあるかも知れないのですよ」
「本当!?」
アルトリアはアルシャッドに向き直って尋ねた。
「王太子殿、国王のおられる寝室というのは、イルシャ・ルーナ様がお使いになっておられた寝室と同じ部屋ですか?」
「はあ…?」
いきなり建国の女王の名を出されて一瞬訳が解らず首を傾げるアルシャッドであったが、少し考えて答えた。
「…うむ、おそらく…王の寝所はこの王宮が建てられた当時からずっと変わっていないはずだが…それが何か?」
「…ならばいけます!ルーナ様は非常時に備え、寝室から脱出するための隠し通路を用意していましたからね」
「「隠し通路!!?」」
セイルとアルシャッドがハモる。
「そ…そんな物があるだなんて…私は一度も聞いた事が無いが…」
「伝えられていないのですか?埋められていなければ良いのですが…」
そう言ってアルトリアは中庭の一角を目指した。

「ありました」
角の方の目立たない所に平たい石が無造作に置かれている。
良く見なければ見逃してしまうような何の変哲も無い石であった。
だがアルトリアがそれを手に取り少し力を込めると、石は割と簡単に外れた。
中には人一人が通り抜けられる程の通路が続いている。
「本当にあった!凄いよアルトリア!」
「き…君は一体何者なんだ!?なぜ王族も知らないこんな抜け道を知っている!?」
「いやなに、ちょっと昔ここに住んでいたものですから…」
「…???」
アルトリアの答えにアルシャッドは益々不思議そうな顔をするばかりであった。
「殿下、じっ実は彼女は・・・・・」
セイルはアルトリアの正体をアルシャッドに言おうとするが、アルトリアに止められ注意される。
(セイル様、今は一刻を争いますので余計な事を言わないでください)
(ごっごめん。でっでも、)
そして、セイルに代わりアルトリアがアルシャッドに説明をする。
「王太子殿下、今は陛下とお会いしてジェムの野望を挫くのが先決です。疑問は後で答えます」
「うむ、それが先決だな。君の正体は後で聞くよ」
「ありがとうございます。それでは私が先導しますので、お二人は後に続いてください」
そう言うと、アルトリアはアルシャッドとセイルを先導して隠し通路に入る。

「真っ暗で何も見えないなぁ…」
「お待ちください。いま明かりを出しますから…」
アルトリアは短い魔法の詠唱をするとポワァ…っと彼女の手の平から出現した光源が辺りを照らし出す。
アルシャッドは感心した。
「おぉ!素晴らしい。…しかし意外と広い通路だな。石造りでしっかりしているし…」
「でも所々崩れてますよ。もう何百年も手入れされてないみたいですね…」
一部崩落した壁や天井を見てそう判断したセイルであったが、アルトリアは床に目を落として言った。
「…いえ、確かに長らく放置されていたようですが、最近になって人間が通った形跡がありますね。足跡が複数あります。おそらくジェムの部下達でしょう。大方、王宮を押さえた後、昔の見取り図などを引っ張り出して来て徹底的に調査したのでしょう」
「何とも手の早い事だ…」
「それだけヤツが暗殺や反乱に怯えているという事ですよ。自分に敵が多い事を自覚しているんでしょうね。…さあ、では行きましょうか」
「途中でジェムの部下に出くわさなきゃ良いけど…」
「その時は戦うまでですよ」
三人は通路を進んで行った…。

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