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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 136

「そうか…やはりそうだろうな。セイル、俺はお前に対して償いをしなければならないと感じている。お前の望みを聞かせてくれ。出来る限りの事を誠意を持ってやらせてもらうぜ」
「望み…うぅ〜ん…」
セイルは少し考えて、そして言った。
「…じゃあ“貸し”で…」
「か…貸しぃ!?」
「そう、いつか僕が困って、君に助けを求めた時には無条件で僕の味方をしてもらいたい」
「解ったよ…やれやれ、また“借り”か…もう他人に借りを作るのは嫌なんだがなぁ…」
「安心してくれ。僕はあのジェムのように脅迫したり臣従を強いたりはしない」
「確かにその点は安心だな。よし、約束しよう。セイル、俺はお前が助けを求めて来た時、何を置いてもお前を助ける。この剣に誓ってな」
そう言ってドルフは剣の鞘を握り締めた。

「やれやれ…あの男も相変わらずですねぇ」
去って行くドルフの背中を見送りながらアルトリアはつぶやく。
「そうかい?僕はあいつは変わったと思うな。学生時代は手の付けられない札付きのワルだったあのドルフが…ほんと、人ってのは変われば変わるもんだよ」
「しかしあの男、反省しているような口振りでしたが“ごめんなさい”の一言は始終口にしませんでした。表面上大人びたように見えるだけで本質は変わっていない」
「…いや、それこそ彼が大人になったからこそ、その一言を口にするのが更に困難になってしまったんじゃないかな。僕からしてみれば、あいつがああして反省の意を示してきた…それだけで随分な成長だと思うよ」
そう言ってからセイルは「まぁ、もし率直に“悪かった”と言って頭を下げて来たら、僕も“貸し”だなんて言えなかっただろうけどね…」と付け加えた。

「さて、帰ろうか…」と言ってセイルとアルトリアが歩き出そうとしたその時、中庭の低い植木がガサガサ…と音を立てて揺れた。
「だ…誰だ!!?」
セイルは咄嗟に腰の聖剣に手を掛ける。
「王宮の中庭なんぞにコソコソ隠れているとは…侵入者に違い無い!」
そう言うが早いかアルトリアは植木の影に隠れている人影に飛びかかって捕まえた。
「あいたたたたた!は…離さぬかぁ!」
アルトリアに腕を掴まれて引っ張り出されたのは白い顔をした人の良さそうな青年だった。
「あぁ!!?あ…あなたは…!!」
それを見たセイルは真っ青になる。
一方、アルトリアは青年に向かって怒鳴った。
「こいつめ!一体何を企んでいた!?」
「企むだなどと人聞きの悪い…!わ…私はただ今生のお別れに一目父上にお会いしたい一心で…!」
「はあ?何を言ってるのだ、この青ビョウタンは…」
「ア…アルトリア!馬鹿!今すぐ手を離せ!そ…そのお方は…!!」
セイルは叫んだ。
「…アルシャッド王太子殿下だ!!!!」
「しぃ〜っ!君も声がデカい!私は今、身分を隠して潜入してるんだから…」
「も…申し訳ありません殿下…!」
「王太子ですと?…それは失礼、知りませんでした」
アルトリアはパッと手を離した。
「ふべし…っ!!?」
アルシャッドは顔から地面に倒れ込む。
「だ…大丈夫ですか殿下!?」
「う…うむ、おでこが痛いよ…」
「それにしてもなぜ王太子であるあなたが国王に会うのに、そんなにコソコソしなければならないのです?」
「私はバムとブムの軍が王宮に攻めてきた時、我が身を最優先に考えて真っ先に脱出した。その事に父上がお怒りになり“もうお前の顔など見たくもない”と言われてしまったのだ。でも父上がご危篤と聞いて…最期に一目お会いしたくて…」
「それで決死の覚悟でこうして立ち入りを禁じられた王宮へ衛兵達の目を盗んで潜入したという訳ですね?」
「いや、門衛に泣きついて同情を誘って入れてもらったんだ」
「…なんか情けないなぁ…」
アルトリアは呆れるがセイルは言った。
「なんだか他人とは思えない…殿下!僕も協力します!」
「ほ…本当か!?」
「まったく…我が主はつくづく騒動に首を突っ込みたがる…仕方ありません。私も協力しましょう」
「あ…ありがとう君達!ありがとう!」
アルシャッドは涙ぐみながら、セイルとアルトリアの手を交互に握って礼を言った。
「お礼の言葉を口にするのはまだ早いですよ。ちなみに一つお聞きしたい事があるのですが、“もう顔も見たくない”という言葉は国王に直接言われた訳ではありませんよね?」
「うむ、取り次いでくれたジェムが“父上がそう言っていた”と…」
「「ジェムが…っ!!?」」
セイルとアルトリアは同時に叫んだ。
「セイル様、どう見ます…?」
「うん、国王陛下が王太子殿下に対してそんな冷たい事を言うなんて、どうも変だと思ったけど、アイツが絡んでいるとなると納得がいくよ。殿下を陛下から遠ざけて何か企んでるんだ!」
「まあ普通に考えられるのは次期国王の人選でしょうね。自分の息の掛かった人物を国王に据えればヤツの政権は安泰です。そのためには国王と王太子が直接顔を合わせられては困る…」
「間違い無いよ!そうはさせるか…臣下が主家を思いのままに支配するなんて絶対におかしい!ジェムの野望を阻止しよう!」

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