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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 132

「おやおや、全て母上のせいですか?まったく…これは陛下が失望なさるのも頷けますなぁ…次代のイルシャを背負って立つ新王がこれでは…」
小馬鹿にしたように吐き捨てるジェムにアルシャッドは尚も真剣に頼み込んだ。
「ジェム、頼む!お前から父上に頼んでくれぬか?アルシャッドが一目で良いから会いたいと言っていたと…!」
「……分かりました。どうせ無駄だと思いますがね…」
そう言うとジェムはいったん引っ込み、しばらくして再び二人の前に姿を現した。
「国王陛下はこう仰せでした。“お前のような者は顔も見たくない。二度と余の前に姿を現すな”とね」
「そ…そんな…っ!!」
アルシャッドはショックでその場に崩れ落ちた。
そして地面に両手両膝を付いてさめざめと泣き出したのであった。
一方、シェヘラザードは憎悪に満ちた悪鬼のような表情でジェムを見上げていた。
(これはジェムの謀(はかりごと)に違いないわ!おのれ若造めがぁ!!ついに本性を表したわね!どうするか今に見ていなさい!)
そして、今ここにいても時間の無駄だと悟ったシェヘラザードは泣いてるアルシャッド王太子を叱り付ける。
「アルシャッド!次期王が泣くでありません!」
「はっ母上、申し訳ありません」
「よろしい。それでは、一旦退きますよ。ここにいても時間の無駄よ!」
「左様で御座いますか、しばらくは御実家でごゆるりと寛いで下さい」
王宮を出る事にしたシェヘラザードにジェムは嫌味たっらしい労いの言葉をかけるが、王妃は怒りを抑え軽く受け流す。
「ええ、そうするわ!でも、不始末を仕出かせないようにね」
「肝に命じます・・・王妃様」
「行きますわよ!アルシャッド!」
「はっ母上、お待ちください」
そのまま、シェヘラザードはアルシャッドと従者たちを引き連れ王宮を後にした。

厄介な天敵が一時引き下がりジェムはホッとする。
(ふう〜最初の難関は何とかなったな。さてと僕も仕事に戻るかなぁ〜)
そう呟くと王宮にある自分の部屋にジェムは戻った。


こうして、ジェムが着々とイルシャ王国の実権を握りつつあった頃。

その夜、アルトリアはこっそりセイルの元を離れ王都郊外の星が見える丘にいた。
星々の流れに大きな異変を感じとったからである。
(うむ!あのクーデターは大乱の予兆だったか…しかも、西の空が妖しく輝いてる。これは正しく、あの醜悪で禍々しき邪神が、この世界を滅ぼすために甦るのが近い証だ。これは気を引き締めなければ!)
聖剣の聖霊の使命にアルトリアは燃えている時。

「綺麗な星空ですねぇ…地上の喧騒なんてまるで関わり無く楽しそうに輝いてる…」
ふと背後から声がしたので振り向いてみると、侍女のミレルが立っていた。
アルトリアは言う。
「…まったく無関係という事はありませんよ。天上と地上は互いを写す鏡のような物です。月日や星々の運行を見る事で、地上で起きる出来事を予測する事も出来るのですよ」
「あ!それなら聞いた事ありすよ。昔の王様は星の動きを見て政治をしてたんですよね。星だけは何千年も何万年も変わらないんですよねぇ…この世界が出来た時からずっと…」
「そうでもありませんよ」
またまた背後から声がしたので二人が振り向くと、アリーが立っていた。
「星は移動しています。星座とかだって、例えば千年ぐらい前には結構違う形だったんですよ」
「アリーさん、女子の会話に入って来て夢の無い事言わないでくださいよ〜」
「す…すいません」
「前から聞きたかったのですが、アリー殿って“つまんないヤツ”って良く言われませんか?」
「大きなお世話です!…それよりセイルの事なんですが…」
「セイル様がどうかなさいましたか?」
「ほら、アイツあの日以来ずっと鬱ぎ込んだままじゃないですか…悪人とはいえ人を斬った事がショックだったんでしょうね。なんとか元気付けてやれないもんかなぁ…」
アルトリアは言った。
「こういうメンタル的な問題を解決するのは“時間”です。なあに、セイル様も1週間か1年すれば立ち直るでしょう」
「範囲、広っ!どんなタイムスケールで物を見てるんだアンタは!?」
二人の問答を聞いていたミレルが口を挟む。
「私も坊ちゃまには早く元気になってもらわないと困ります!」
「おぉ!ミレルさんもそう思いますか」
「はい!私は大旦那様(ウマル)から坊ちゃまを守ってやれと言われてるんです!あんな状態の坊ちゃまを大旦那様に見られたら怒られるのは私…」
「そこかよ!?」
「アリー殿はセイル様よりご自分の心配をなさった方がよろしいのでは?」
「どういう事ですか?」
アルトリアは急に声を潜めた。
「…ここ数日、王宮の衛兵らしき者達があなたの身辺を探っています…」
「ほ…本当ですか!?今はパサンだなんて名乗っているが、僕の正体に気付いたか…」
「いま王宮を牛耳っているのはあのヤヴズ・ジェムですからねぇ…お気を付けください」

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