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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 126

人々が次々に撃ち倒されていく。
だが後から後から丸太の回りの空いた場所へ新たな人が駆け付けて門扉への攻撃を続けるのだ。
その人達すら銃兵達は次々と撃ち殺していく。
セイルは聖剣の柄を固く握り締めて叫んだ。
「くそぉっ!!あいつらあんな高い所から狙い撃ちしやがってぇ…っ!!これじゃあ城門を突破するまでに何十…いや何百人死ぬか…!!」
その時だった。
聖剣の刀身が、まるで彼の思いに応えるかのように、僅かに輝きを増したような気がした。
「…っ!?」
驚いて不思議に思ったセイルは咄嗟に自らの手の中の聖剣を見た。
そして彼は悟った。
気のせいなどではない。
聖剣は確かに淡い光を放っていたのだ。
まるで自分の心の高ぶりに呼応するかのように…。
その時、アルトリアの声が聞こえた。
『セイル様…おやりなさい!さぁ!!』
ドクン…と鼓動が高鳴るのが解る。
周囲の喧騒が急に遠ざかったような気がした。
セイルは落ち着き払った動作で聖剣を鞘に収めると目を閉じて「フウゥゥ〜〜〜…」と長い溜め息を吐いた。
「…セイル?どうした?」
隣にいたアブラハムが不思議そうな顔で尋ねる。

次の瞬間、彼はカッと目を見開き、何を思ったか城門へ向かって矢のように駆け出した。
「セ…セイル!!」
「セイル君!?」
アブラハムやアブ・シルの制止も耳に入らない。
セイルは丸太の上に飛び乗り、城門に向かって何の躊躇いも無く突っ込んだ。

バアァァー――――ンッ!!!!

「「「…っ!!!?」」」
敵も味方も一瞬我が目を疑った。
何が起きているのか解らなかった。
鉄の門扉が城内の方に向けて勢い良く吹っ飛ばされたのだから。
大量の粉塵が舞い上がる中にセイルが立っていた。
物凄い勢いで城門に突っ込んだ彼は普通なら鉄扉に全身を叩き付けて死ぬはずだった。
だがそうはならなかった。
見れば地面に落ちた鉄扉の破片は物の見事に切断されていた。
つまり有り得ない事だがセイルは一瞬で分厚い鋼鉄の扉を切り裂いたのだ。

これには城壁の上の銃兵達も恐れおののいた。
「あ…有り得ねぇ…!!」
「化け物かアイツ!?」

一方、いち早く我に返ったウルジュワンは剣を振りかざして叫んだ。
「み…皆!!城門が破られたぞぉ!!城内に突入せよおぉぉ!!!」
「「「お…おぉぉー―――っ!!!!」」」
民衆と騎士達が一気になだれ込んで来た。

「く…くそぉ!!退却!退却だぁ〜!!」
形成悪しと見た銃兵隊長は撤退命令を出した。
だが…
「逃がさない…」
セイルは信じられない程の駿足で城壁の上へと駆け上がった。
「ひいぃぃ!!?」
「お…お助けぇ〜!!」
銃兵達は銃を放り出して逃走を始めた。
セイルは彼らの一人に駆け寄ると、何の躊躇いも無く背中からバッサリと斬り捨てた。
「ぎゃあぁぁぁっ!!?」
セイルは初めて人を斬った…はずなのだが、特に表情を変える事も無く…いや、それどころかセイルは眉一つ動かさずに城壁の上を逃げ惑う銃兵達を次々と斬り殺していくではないか。
「ガハァッ!!!」
「ぐおぉぉ!!?」
「ギャッ!!?」
無表情で、淡々と…その様子は普段の温和なセイルの人柄からはまるで想像も出来ないものであった。
「あわわわ…た…助けてぇ…い…命だけは…!」
隊長は尻餅を付いて後退りながら命乞いをした。
「お前…今さら何言ってるんだ…今まで散々殺しておいて…」
そう言うとセイルは何の躊躇いも無く彼の心臓を貫いたのだった。
「がはぁ…っ!!?」

一方、セイル程ではないにせよアブ・シルやアブラハムも奮戦していた。
城壁を駆け上がり、驚き惑う銃兵達を次々と斬り倒していく。
彼らもまたこの戦いで初めて人を斬った。
殺人に対する罪悪感は薄かった。
何せ結婚式場襲撃と衛士府襲撃の際に仲間を殺された恨みがある。
近衛隊の連中も同様だった。
今度は立場が逆転し、黒覆面の男達の方が逃げ惑い殺される番となったのである。
それは戦いではなかった。
一方的な殺戮であった。

一方、宮殿内ではバムとブムが逃走の支度に奔走していた。
バムは金貨や宝石をありったけ袋に詰めて持って行こうとしているが重すぎて移動も困難である。
「ふひぃ〜!!ふひぃ〜!!お…重いんだなぁ〜!!」
「ぶひいぃぃ!!?バムよぉ!そんな金なんか置いて早く逃げるんだなぁ!」
「し…しかしブムよ!金さえあればまた再起可能なんだなぁ!持てるだけ持って行くんだなぁ〜!」
「仕方ねえ!手伝うんだな!…で、どうやって逃げるのかな!?」
「北門に馬車を待たせてあるんだな!」

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