PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 123
 125
の最後へ

剣の主 125

一人の名もなき青年に煽動され暴徒と化した民衆たちは一斉に王宮へ攻め込んでいった。

「アブ・シル先輩!やりましたよ〜効果覿面ですね!」
「ああ民衆は何もしないヤヴズ兄弟に不服を持ってたからな」
嘘の御触れを民衆たちに知らせ後、セイルとアルトリアたちは素早く広場から離れた所に逃れ怒れる民衆たちの姿をみて作戦成功を喜んでいた。
しかし、セイルだけは素直に喜べず険しい顔でいた。
(間違ってる…こんな嘘の御触れで騙すのも。それに真に受ける人々も可笑しいよ!もっと他に良い方法がある筈だよ!)
しかしそう思う一方で、理性では“これしか方法が無いんだから仕方無い”と納得もしている…そんな自分がちょっと嫌だった。

このような“芝居”が王都内の各所で同時多発的に行われた結果、怒り狂った民衆達が王宮に詰め掛ける事態となった。
民衆はバムとブムに社会変革の期待を抱いていた事もあり“裏切られた”という思いも強かった。

「バム!ブム!出て来ぉーい!!」
「俺達をナメるんじゃねえぇぇ!!」
宮殿の門扉は固く閉ざされている。

中のバムとブムは全く訳が解らなかった。
「い…一体どうなっているんだな!!?」
「ヤツラは一体何者なのかな!!?」
部下が答える。
「はっ!おそらく反体制派による煽動かと思われます!」
「このような文書が王都内に出回っている模様です!」
別の部下が現れて一枚の紙を差し出した。
アブ・シルも使っていた偽勅令だ。
「な…何なんだなコレは!!?僕らはこんな命令出した覚えは無いんだな!!」
「事実無根なんだな!!」
だがこういう文書という形で示されると妙に信憑性が増してくる不思議…。
良く見ると勅令に必要な玉璽の捺印も無く紙も粗末な物だから、王宮勤めの者が見ればすぐに偽物と気付くだろう。
だが平民さえ騙せればそれで良いのだ。
それに人々の不安を煽る事で冷静な判断力をも失わせている。
まったく見事なものであった。

「いかがいたしましょう!?」
「こうなったらバム様とブム様が民衆の前に姿を現し、自ら否定なさるしか方法は…」
「はぁっ!?僕らが!?嫌なんだな!そんな危険な真似出来るかってんだな!」
「そうなんだな!お前ら何とかするんだな!」
「何とか…と言われましても…!」
「銃を撃ち掛けてやるんだな!」
「む…無理です!向こうは数千…いや数万!500丁かそこらの銃では相手になりません!そもそも非武装の民衆を撃ち殺して良いのですか!?」
「構わないんだな!ヤツラ腰抜けなんだな!十人ほど見せしめに撃ち殺してやればビビって退散するんだな!」
「…解りました!おい!行くぞお前達!」
「「「はっ!!」」」

城壁の上に並んで配置に付いた部下達は民衆に向かって銃を構えた。
隊長と思われる男が剣を振りかざして叫ぶ。
「撃てえぇぇーいっ!!!!」

ズダダダダダアァァー―――ンッ!!!!

轟音と同時に銃口が一斉に火を噴き、続いて数十人の人間がバタバタバタバタと倒れた。
「ぎゃあぁぁ!!?」
「いでぇ!!いでぇよおぉ!!!」
「ぐあぁぁ…っ!!?」
「お母さん!!お母さあぁぁん!!!」
運悪く即死出来なかった者達が泣き叫びながら地面をのた打ち回っている。
この惨状に、さすがに怒りに燃える民衆達の意気も怯みかけた…その時であった。
「怯むな諸君!!ここで退いたらバムとブムの支配する地獄のような世の中が現実の物となってしまう!友のため…恋人のため…家族のため…愛する者のために命を捨てて戦うんだぁ!!進めえぇぇ!!!」
後ろの方で近衛隊の制服に身を包んだ男が剣を振りかざして叫んだ…ウルジュワンだ。
彼だけではない。
近衛隊・衛士隊の騎士達、約500余名が勢揃いしている。
その中にセイルもアブ・シルもアブラハムもいた。
もう身を隠す必要など無いのだ。
今や彼らの方が正義となったのだから。
「総員!!城門へ向かって突撃ぃーっ!!!」
「「「うおぉぉー――――っ!!!!」」」
近衛騎士、衛士、民衆が混在一体となって閉ざされた城門へと殺到した。
どこから持って来たのか、先の尖った丸太を十数人で抱えて鉄扉に向かって勢い良く打ち付ける。

ゴオォォンッ!!
ゴオォォンッ!!
ゴオォォンッ!!

「馬鹿め!鉄の扉だぞ!そんなに簡単に破壊出来る訳が…!」
「た…隊長!門扉が歪み始めています!このままでは時間の問題です!」
「なにぃ!?…クソッ!撃てぇ!!撃ち殺せえぇぇ!!!」
銃兵達は丸太を持った人達に狙いを定めて散発的に撃ち始めた。
 パァーンッ! パァーンッ!
「ぐあぁぁ!!?」
「あぎゃあぁぁ!!!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す