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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 124

「…なるほど」
「なかなか面白い作戦だな」
「うむ、やってみる価値は充分にある」
皆も乗り気だ。
だがある一人は難色を示した。
「し…しかし、それをやると一般市民に多数の犠牲者が出る可能性が…」
ウルジュワンはその騎士に言った。
「ならば他に何か良い案があるか?」
「いや、それは無いが…」
「…ならばやるしか無いだろう。さっそく皆に指示を出してくれ。…あぁ、黒い布が必要だな」

衛士府跡に居た騎士達は真っ先にその作戦に駆り出される事となった。
セイル、アルトリア、ミレル、アリー、アブ・シル、アブラハムもその中に居た。
作戦内容を伝えられた騎士達は5、6人ごとに組になり、任務の遂行のため王都各所へと向かった。

歩きながらセイルは疑問を口にする。
「しかし、こんなの本当に上手くいくのかなぁ…?」
それにアリーが答えた。
「それは個々人の演技力次第じゃないかな」
ミレルもクスクスと笑いながら言う。
「坊ちゃまは昔っから嘘つくとすぐ顔に出るタイプでしたからねぇ〜」
「そ…そんな事無いだろう!?」
否定するセイルにアブ・シルは笑いながら言った。
「ハハハ…確かにセイル君は嘘をついてもすぐに判るもんなぁ〜」
「先輩まで…」
アブラハムがフォローを入れる。
「気にするなって。悪い事じゃない。少なくとも嘘が上手いってよりは好感持てるだろ?」
「それはそうかもだけどさ…」
アブ・シルは言った。
「まぁ“喋り”は俺が引き受けるから、君達は俺の後ろで偉そうに並んで突っ立ててくれればそれで良いよ」

この作戦について簡潔に言えば、つまり民衆を煽動して、その混乱に乗じて王宮を攻め落とそうという物であった。

六人は町の広場にやって来た。
全員とも黒い覆面で顔を隠している。
アブ・シルは何やら書かれた一枚の紙を掲げて高らかに宣言した。
「みんな聞けぇーぃ!!この国の新たな王、バム様とブム様の御勅令であるぞ!!」
それを聞いた人々が集まって来る。
「何だ何だ?」
「おぉ!バム様とブム様がついに新しい国の形をお示しになられたか」
「前とは何がどう変わるんだ?」
「私達の暮らしは良くなるの?」
アブ・シルは紙を読むフリをしながら声を張り上げて喋り出した。
「えぇ〜、まず第一条!バム様とブム様に逆らう者は如何なる理由があろうとも死罪とする!意見具申も認めない!次に第二条!税を今までの10倍とする!納税の義務を怠る者は監獄へブチ込む!さらに第三条!貴族および士族はムカつく平民および奴隷をブチ殺しても良い権利を与えられる!」

…もちろん嘘八百。
いかにバムとブムでも、そんな無茶苦茶な命令を出す訳が無い。
ただ、彼らは政権を取ったクセに今まで何の政策も打ち出さなかった。
そこを逆手に取られて利用されたのだ。

アブ・シルは調子に乗って更に続ける。
「そして第四条!平民および奴隷の美女は貴族および士族に求められたら、いつ如何なる場合においても拒んではならない!」
「それは先輩の願望でしょう…」
「ククク…確かに」
小声で突っ込むセイルに思わず笑いを漏らすアブラハム。
「……」
その隣に立ったアルトリアは渋い顔をしたまま黙っている。
セイルは尋ねた。
「どうしたのアルトリア?さっきから黙ってるよね」
「あ…いえ、この作戦を考案したウルジュワンという男、実に見事だなと思いましてね。新政権の欠陥を上手く突いた良い作戦です」
アブラハムは言う。
「近衛剣士隊のエリートらしいですよ。さっすが頭も良いですね」
「しかしこういうやり方は気に入りませんね。民衆を欺くというのは…」
イルシャ・ルーナ女王ならそういうやり方は絶対にしなかったのだろうな…と思いながらもセイルは言った。
「確かにあの人は正しくないよ。でもこれが上手くいけば僕達本当に王宮を取り戻せるかも知れない」

案の定、聴衆は偽の勅令に大激怒。
「ふ…ふざけるなぁ!!」
「何よそれ!?」
「前より悪くなってるじゃねえか!!」
「やっぱり、あのキモ豚兄弟たちも貴族だったのね!なあ〜に何が革命よ!嘘つき!」
「結局、王族や貴族たちは自分たちの都合しか考えてないんだよ!」
聴衆たちの怒りの声はヒートアップしていった。
そこへ、一人の男が聴衆たちの前に現れ演説を初める。
「おい、みんな!これ以上ヤヴズ兄弟の好きにさせたら危険だ!王宮に攻め込んで奴等と残った王族や貴族たちを皆殺しにするんだぁ!!」
「「「「「そうだぁ!!!王宮に攻め込んで!!ヤヴズ兄弟と王族とと貴族を血祭りにあげろ!!」」」」」

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