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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 122

「おう!あの結婚式場の混乱を何とか切り抜けて、それから騒ぎが収まるまでずっと身分を隠してたんだ。平民達が貴族や士族を片っ端からリンチしてるって噂だったからね」
「本当ですか!?中隊の仲間達は!?」
「実際やられた不幸なヤツも少しは居たようだが、まぁ、流言飛語の類だよ。我が中隊の連中は今の段階で無事が確認出来てるのが半分くらいかな…。君は早々に王都から脱出したクチかい?」
「…すいません。家族と一緒に家財をまとめて逃げてました…」
「謝る事は無いさ。生きるためだったんだ。誰も責めやしないよ。以前聞いた住所を頼りに君ん家に行ってみたら焼け跡だったから心配してたんだ。生きててくれて良かったよ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると気が楽になります…」
「良いって事よ!それより俺達いま衛士隊や近衛隊の生き残り集めてレジスタンス(抵抗組織)作って地下で活動してるんだ。セイル君も加わらないかい?」
「えぇ!?本当ですか?いや、実は僕らも今、新政権を倒す話してた所だったんです!」
「おぉ!そいつぁ良いや!」
「僕達も連れて行ってください!そのレジスタンスのアジトへ!」
「よしきた!」

セイル、アルトリア、ミレル、アリーの四人はアブ・シルに連れられて衛士府の跡地にやって来た。
レジスタンスはそこを拠点にしているという。
衛士府も焼かれたらしく、石造りの建物の外郭だけが残っている状態で、しかも半分ほど崩れていた。
そこに衛士隊や近衛隊の騎士だと言う者が10人ほど集まっており、アブ・シルによると今いる者達の他にもメンバーはいて、全部合わせると500名前後になるという。
そこでセイルはまた知った顔に再会した。
「セイル!セイルじゃないかぁ!」
「アブラハム!君も無事だったんだね!」
アブラハムは哀れみを込めた目でセイルに言う。
「セイル…お前、落ちぶれたなぁ…」
「変装してるんだよ!君もそうだろ」
「あ、そっか」
アブラハムも今は衛士の制服ではなく目立たない地味な服装をしている。
アブ・シルは言った。
「リーダーの所へ案内しよう。付いて来てくれ」

リーダーは30代くらいの逞しい男だった。
「近衛剣士隊のウルジュワン・サラームだ」
「衛士隊第三中隊、クルアーン・セイルです」
「アルトリアと申します」
「ミレルです」
「僕は…えぇと…」
アリーが名を名乗る事を躊躇しているとアルトリアが言った。
「彼はパサンさん、王様の料理番で宮廷内部の事について詳しいですよ」
(ア…アルトリアさん!?)
(失礼、衛士や近衛の方々の前で今あなたの名を出すのは色々と好ましくないと判断させていただきましたのでね)
良い機転であったが、セイルは突っ込む。
(だからって何でパサンなんだよ)
(とっさに思い付いたんですから仕方ありません)

そんなやりとりを余所にウルジュワンは興奮した様子でアリーに尋ねる。
「料理番だって!?では君は宮殿がバムとブムに占拠された後の状況なんかについても知っているのかい!?」
「え…ええ、まぁ…ずっと居ましたから…」
「では彼らの武器や兵力や警備体制などに関しては…?」
「良〜く存じております」
当然だ。
アリーが部隊の指揮を任されていたのだから…。
ウルジュワンは言った。
「今の王宮内部の様子を知る人が味方に付いてくれた…これは我々レジスタンスにとって100人の味方を得たも同然だ!ついに反撃の時が来た!やつらに殺された仲間の仇を討ってやる!やられた分はきっちりやり返す!」
セイルは言った。
「倍返しですね!?」
アルトリアも言う。
「いえ、10倍返しでしょう!」
それに対してウルジュワンは答えた。
「いや、4倍返しだ!」
「な…何ですか、その4という中途半端な数は…?」
「現実的だろう?」
「どうでしょう…」

ウルジュワンは机の上に図面のような物を広げた。
何かと思ったら王宮の見取り図だ。
「さて、パサン君だったね。色々と教えてくれたまえ」
「は…はい!」
こうして王都内部からも反撃の準備が着々と進められていくのであった…。


一夜明け、再び王宮。
かつて王の寝室(複数ある)だった部屋…巨大な寝台の上で5、6人の裸の男女が寝息を立てている。
うち2人はバムとブム、残りは後宮の女達だ。
自分達が確実に追い込まれつつある事など知る由も無いバムとブムは、昨夜もベッドに選りすぐりの美女達を連れ込み、たっぷりと楽しんだのであった。
女はイルシャ人だけでなく、西方の金髪の女、南方の褐色肌の女など様々である。
なかなかグローバルだ。

「バム様、ブム様、お客様がお見えになっておられますが…」
寝室の扉が開き、女官が現れて双子に告げた。
二人は起き上がろうともせずに答える。
「うぅ〜ん…誰なんだなぁ?」
「こんな朝早くから非常識なやつなんだなぁ…」
「いえ、もう昼なんですけど…」
女官は言った。
「お客様はヤヴズ・セム様でございますよ」
「「お祖父様!!?」」
その名を聞いた双子は慌てて飛び起きた。

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