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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 119

「貴様ぁ!!一体何が言いたいのかなぁ!!?」
「ハッキリと申し上げます!!この国をどうにかしたいと思う気持ちが無いのなら、今すぐ家にお帰りください!!理由や経過はどうあれ我々はもう政権を取ってしまったんだ!!一日も早く新しい国の形を示さないと国民は付いて来ないんだよ!!ただでさえ政情不安なんだ!!そんな時に新政権の幹部が明確なビジョンも打ち出さず酒池肉林に明け暮れている…そんな政権すぐに引っくり返されてしまうぞ!!もう一度言う!!国を変える気が無いなら出て行ってくれ!!新しい国作りの邪魔をするなぁ!!!」
「……」
「……」
アリーの言葉にバムとブムは黙って顔を見合わせる。
そしてバムが口を開いた。
「なるほどな…で、言いたい事はそれだけかな?」
「そ…それだけって…」
自分がここまで必死になって訴えたのに、こいつらにはまったく伝わっていないのかとアリーは愕然とする。
「まったく…人がせっかく楽しく飲んでるのにゴチャゴチャゴチャゴチャと屁理屈ばっかりコネやがって…お前達!この頭でっかちの馬鹿を連れて行くんだな!」
ブムがそう言うと黒覆面の銃兵達がゾロゾロと大広間に入って来た。
「バム様とブム様のご命令だ…来い!アリー!」
黒覆面達はアリーに銃を向けて退室を促す。
「お前達はどう思っているんだ!?」
アリーは黒覆面達に向かって訴えた。
「僕の言っている事が間違っていると思うか!?彼らが正しいと思うか!?」
黒覆面達はアリーを無視してバムとブムに向き直って尋ねる。
「いかがいたしましょう?殺りますか?」
「うーん、そうだなぁ…こいつの力が無ければ僕ら王都を制圧できなかった訳だしなぁ…どうするブム?」
「…よし!城のお堀に放り込んでやるんだな!」
「お!それ良いなぁ〜♪…つー訳でバイバイなんだな、アリー」
「サヨナラなんだな。お前には髪の毛一本分ぐらいは感謝してるんだなぁ〜」
「……」
アリーはもう返す言葉も無かった。
彼は銃で小突かれながら力無く大広間を後にしたのであった。

「ブヘヘヘヘッ!うるせえヤロウがいなくなって清々したんだなぁ〜」
アリーが出て行くとブムはゲラゲラと笑いながら言った。
一方、バムは指を折りながら何か計算している。
「…どうしたのかなバム?」
ブムの問い掛けにバムは半ば独り言のようにつぶやく。
「一晩で三人なんだな…」
「何が?」
「いやぁ、この城の後宮には国中から集められた美女が1000人いるって言うだろう?だから一年で全員抱こうと思ったら一晩に三人とヤらなきゃいけない計算になるんだなぁ…身が持つかなぁ?」
「おいおいバムよ!半分の500人は僕の物だって事を忘れてもらっては困るんだなぁ〜♪」
「あ!いっけねぇ〜なんだな♪」
「「ぶっひっひっひっひぃ〜っ!!!」」

一連のやり取りを見ていたオルハンは思った。
(だ…大丈夫なのか、こいつら?あの青年の言った通り、またすぐ政権転覆させられるんじゃあ…?)
まぁ、そうなったらそうなったで彼はまた新しいボスに賄賂を送って取り入ろうとするだろう。
そういう生き方をしてきた男なのだ彼は…。


だっぼおおおおおぉぉぉぉぉぉんっ!!!!!


物凄い音がして、お堀に大きな水柱が立った。
城壁の上から突き落とされたのだから仕方ない。
王宮の堀に充分な深さがあって良かった。
もし浅かったら水底に激突して死んでいた所だ。
そして波も収まり水面が静寂を取り戻した頃…
「…ぶっはあぁぁっ!!!!」
水柱の立った地点より少し離れた所にアリーは勢い良く浮上した。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
ほうほうの体でバシャバシャと水をかいて何とか王宮とは反対側の岸辺に泳ぎ着く。
だが岸壁をよじ登る体力がもう無い。
いや、無いのは体力というより気力か…。
全ては無駄だったのだ。
けっきょく自分は流れた血に見合うだけの物を新たに築く事が出来なかった。
もうこのまま沈んでしまおうか…とアリーは思う。

その時だった。

「つかまれ!!!」
誰かがアリーに向かって手を差し伸べる。
反射的にそっちに向かって手を伸ばした。
そいつはガシッとアリーの手を力強く掴んだ。
そのまま岸辺に引っ張り上げられる。
こいつ、こんなに力があったんだなぁ…と思う。
彼はその名を口にした。
「セイル…」
「アリー!!!」
なぜか汚い野良着に身を包んだセイルは目からボロボロと大粒の涙をこぼして…
「この大バカヤローッ!!!!」
…アリーを思いっきりブン殴った。
「グハァ…ッ!!?」
そしてセイルはアリーを固く抱きしめたのであった。
「アリー!!生きてたんだね!良かった!本当に良かったぁ!」
「セイル…お前…けっこう容赦ないよな…」
それを見ていたミレルとアルトリアは話し合う。
「ステキです!拳で語る…男の友情!」
「いやぁ、実際どうなんですかねぇ…」

四人はひとまず王宮前の広場に置かれた腰掛けに揃って腰を下ろした。
「…で、どうして君はお堀にダイブなんてしてたんだいアリー?」
「少なくとも僕の趣味ではないという事だけは解ってもらえるよな?…ハハ…情けない話さ。早い話、捨てられたんだよ。あいつらも結局は自分達さえ良ければそれで良いヤツラだったんだ…ちくしょう…僕はバカだったよ…ヤツラの甘い言葉に乗せられて取り返しのつかない過ちを犯した…」

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