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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 117

「黙れ黙れ黙れえぇーいっ!!!どんな大義名分があろうとワシはヤヴズの旗の下で戦う事は嫌だ!!」
「お…伯父上…」
「やりたければお前たち分家だけでやるが良い!!我が本家は“絶対に”協力しないからな!!帰ってヤヴズのジェムにそう伝えるが良い!!」
「……」
物凄い剣幕で怒鳴り散らす叔父にドルフはすごすごと引き上げるしかなかった。


一方、ジェムはというと…
「ふぅ〜ん…案外大した事は無いなぁ。太守の椅子という物も…」
彼はドルフの弱味を握っているのを良い事に、彼の領地ナハルシャットで好き勝手に振る舞っていた。
今もドルフだけが座る事を許された太守の椅子にドッカリと腰を下ろして、ふてぶてしくほざいている。
「ジェム殿!!いくらなんでも太守の留守中に勝手に太守の椅子に座るとは…身勝手が過ぎるのではございませんかな!?」
ドルフの元教育係で側近のアフサンはジェムに物申した。
「えっと…君は確かアブサム君とか言ったかな?僕は君の主人から“対等な客人”としての扱いを受けている身だ。つまり僕は君達にとって君の主人と同等なんだよ。解る?」
「いやその理屈はおかしい!それと私はアフサンです!お間違えなきよう…!」
「あ、そう…でも僕は君の主人から好きにして良いと言われてるんでね。そこんとこよろしく」
「うぅ〜む…それは心得ておりますが…しかしくれぐれも過ぎた振る舞いはお控えくださいよ…?」
アフサンは渋々といった様子で部屋を出ていった。

「まったく…どうして坊ちゃまはあんなヤツを…?」
アフサンがブツブツ言いながら廊下を歩いていると、ジェムの側近の少女シャリーヤが妙な男を連れて向こうから歩いて来た。
明るい色の頭髪に青色の目玉…その男は西大陸の人間だった。
「シャ…シャリーヤ殿、そちらのお方は…?」
「ジェム様のお客様です…」
シャリーヤは相変わらず抑揚の無い口調で淡々と告げる。
男はやや大袈裟とも思える動作でアフサンに頭を下げて自己紹介した。
「お初にお目にかかります。私、西大陸はゼノン帝国から参りました武器商人のフランシスコ・カストールと申します。この度はヤヴズ・ジェム様が西大陸の最新鋭兵器をお求めで…」
「カストール殿…ジェム様以外のお方に商談の内容についてお話しにならぬようお願いいたします」
「おっと…これは失礼、シャリーヤ殿。では我々はこれで…」
そう言うとカストールと名乗った武器商人はシャリーヤに伴われ、ジェムの居る部屋へと入っていった。
一人残ったアフサンはつぶやく。
「西大陸の武器商人と繋がっているなんて…あのヤヴズ・ジェムという男、何か怪しいなぁ…」

部屋の中ではジェムとカストールが話していた。
「久しぶりだな、カストール」
「ジェム様もお変わり無いようで何よりです…と言っても先月お会いしたばかりですがね」
「うむ…で、例の武器は用意出来たんだろうな?」
「それはもう!我がゼノン帝国でも開発されたばかりの最新式ライフル銃1000丁、お約束通りご用意させていただきました」
それを聞いたジェムは「そうか…」と満足げに頷いた。
そして彼は信じられない言葉を口にした。
「…で、当然その銃はお前がバムとブムに売った銃よりも高性能なんだろうな?」
「もちろんでございます。まだゼノン軍にも充分に行き渡っていない物を特別な伝手を使って横流ししてもらいましたから…」
バムとブムに銃を売ったのはこのカストールだったのだ。
しかもそれはジェムも承知の上での事であった。
種明かしするとこうだ。
バムとブムが(アリーの指示で)密かに銃を求めている事を知ったジェムは、先回りして西大陸の武器商人カストールと交渉し、バムとブムに接触してわざと旧式の銃を売るように指示した。
そしてバムとブムがクーデターを起こして政権を奪取した後、より高性能の銃を装備した自分の軍が王都を奪還する…それがジェムのシナリオだった。

「バム殿とブム殿に売らせていただいたのは十年前の旧式です。それに対して今回ご用意させていただいたのは最新式で装填作業は簡単かつ短時間、銃身にも改良が加えられ火薬も新型、弾の飛距離、命中精度、共に各段に上がっております」
「素晴らしい!さっそく州軍の兵士達を集めて訓練を施そう。シャリーヤ、州軍の指揮官を集めてくれ」
「よろしいのですか?太守であるドルフ殿の許可無くそのような事をして…」
「なあに、構やしないさ。彼には戻って来てから事後承諾してもらえれば良い」
まったく我が物顔のジェムであった。
「畏まりました…ジェム様」
「シャリーヤどうしたんだい。何か言いたそうな顔だね?」
何時ものように命令に従うシャリーヤであったが、何か言いたそうな彼女の表情に気付いたジェムは如何したのか優しく訊こうとする。
他の側近ならば脅して実行させるが、最も使えて信頼できる彼女にはジェムは甘かったのである。
そして、カストールが信用できない事やジェムを利用して良からぬ事を企てている気がするのをシャリーヤはジェムに話す。
「あのカストールとやらジェム様を利用して、良からぬ事を目論んでいる気がします」
「フッ、シャリーヤ。君も心配性だね〜そんな事は解っているよ。でも、バムとブムを倒して僕がこの国の頂点に立てば如何とでもなるさ!」
「そっそうですわね。では、州軍の指揮官たちを集めに行きます」
そう言うとシャリーヤはジェムに命じられた仕事を実行するために部屋を出た。

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